私の思いと技術的覚え書き

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書評 官邸ポリス

2020-05-22 | コラム
 この本は初版が2018年12月で、著者が幕蓮(まくれん)と示される明かな仮名で、経歴に「東京大学法学部卒業。警察庁入庁。その後、退職」なんて記されている。

 内容は、ほとんど近年現実に起きた事件を題材に、誰が見ても判る仮名に当事者を置き換えた形で、幾つかの事件を描いているものだ。それは、文科省局長の収賄や事務次官のスキャンダル、近畿財務局による国有地の不当売却、財務省の公文書改竄とセクハラ地獄、野党幹事長候補のセックス・スキャンダルなどだ。そして、これら事件の影で首相(政権)を守るという命題の元、内閣情報調査室の中に特設された秘密の特別組織が暗躍していくというものだ。とういうことで、現実の各事件の解説論としてのエンターティメント的な面白さはあった。

 日本は予てから、情報機関として、例えば米国のNSA、CIA、ロシアのFSB、SBVR(旧KGB、GRU)にまで匹敵する情報機関がなく、その面で劣るとの論評に接する機会は多い。但し、この本の組織は、対外的な情報収集や分析という面はなく、あくまで内政的な諸問題として現行政権を守ると云うものだ。本の中にも出てくるが、戦前まであった内務省(敗戦でGHQ命令で廃止)的な指向が強い組織を前提としている様だ。

 この本の作者(もしくは組織)は、いったい何を訴求したいのかと云うことだが、この組織が現行政権をガードし国の行く末を守っているのだとのプロパガンダを強く感じる。しかし、本の表紙にもある「総理を支配する・・・」なんて、思い上がりも著しいという思いが込み上げる。これが行き過ぎれば、官僚組織が民意で選ばれた政治家を、国のためにならないからという判断で、切り捨てることもできる恐ろしいことになる。それと、歴代首相の中には、様々な反米と解釈された結果だろうが、米国関与で信用失墜させられ政権交代せざるを得なかったことを歴史は示している。それを防御できるのかと、問わねばならないだろう。

 なお、現行政権は長期政権になっているのだが、米国関与の謀略がないということになるのだろう。すなわちそれは、対米追従の隷属的な政権であることを示しているということに他ならないだろうことは嘆かざるを得ない。 



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