ここに3本のバルブ写真を示す。内、1本は排気バルブであるが、溶損を生じている。この排気バルブの溶損原因を含め、バルブに関係する知識を書き留めてみたい。
ここに示したバルブは、BMWミニR56型(N16Aエンジン)のものであるが、パーツリストから引き出した、重量、小売価格(米$価)などから、インテーク側とエキゾースト側を比較して見たのが、写真6のデータだ。これによると、インテークバルブは最大傘径が30mmでエキゾースト側の25mmより20%大きい。この給気バルブが排気バルブより大きいというのは、吸排の絶対圧力差とその流速により、給気側を重視するが故に、一般に給気側が大きくされている訳だが、昨今のターボ過給によるダウンサイジングエンジンが常套的な時代になり、昔より吸排の比率は小さくなって来ている様に感じられる。
さらに、同データ表から、重量は大きな傘径を持つ給気側の方が、排気側より30%ほど大きいが、小売価格(米$)は、排気側の方が逆20%高い。ちなみに、重量(g)当たりの単価を比べてみると、排気は給気に比べ60%高価であり、それだけ高級な材料が使用されているだろうと想像ができる。
バルブの製法だが傘部とステム部は別材質で、燃焼室の一部を形成する傘部は耐熱合金としての性能と、高温で着座しても破壊しない高温強度を重視している。ステム部はその様な性能は求められないので、傘部とステム部は溶接して成型されている。ここで、給気と排気では、排気バルブは燃焼中の高温に耐えるだけでなく、排気行程で高温の高速ガス中にさらされるということで、給気よりさらに高い高温性能が求められる。具体的にはニッケル成分を多くした、耐熱合金で作られることになるが、ここに排気バルブは小さく軽くても、給気バルブより高価になる理由がある。
なお、レーシングエンジンとか市販車でも高出力エンジンなど、熱的条件が厳しいエンジンには、ステム部を中空にして、内部にナリリウムを封入したバルブが使用される場合がある。このことは、以前の当ブログでも触れているので、参考までに以下にリンクを掲載しておく。
ナトリウム(ソジウム)封入バルブのこと
2018-05-15 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/12136dbc720bcee27a1bf432ddbfbbe8
写真の溶損した排気バルブは、数年前にBMWミニR60(クロスオーバー)で実際に、1気筒圧縮圧力ゼロで不良となってしまったエンジンのものだ。この様な排気バルブの加熱を防ぐため、エンジンの高負荷領域では、ストイキ(理論空燃比)燃焼を止め、出力空燃比(1:12程度)の燃焼を行い、出力重視と共に、高温部位の燃料冷却も併せて行う空燃比設計がなされている。
しかし、現実にこの様なバルブ溶損故障が生じた理由だが、これは私見となるが、ラッシュアジャスターの固着など正常な機能の喪失に原因があった可能性もあるのでは内かというのが想像だ。つまり、バルブの閉着座が緩く、密着不良でバルブの熱伝導不良による昇温と共に、漏れ吹き出す高温の排気ガスのジェット噴流によりバルブの溶損が起きたのではないかと想像するのだ。
もう一つ、実際のエンジン故障で、想像できることとして記してみたい。それは、ステム上部のコーター溝のことだ。このN16aエンジンでは、ステム系が5mmと細く、コッター溝を深く掘れないとう宿命もあり、コッター溝は3本が刻まれている。エンジンの動作中は、バルブの開閉に伴い、コッター溝部には繰り返し応力が働くが、もしコッター溝が1本だとして、コッター部の疲労破壊が生じると、バルブは燃焼室側に垂れ下がり、繰り返しピストンと衝突することで、極めて深刻なエンジン故障に結び付く。そんなエンジン故障の要因となったと想像されるのが、以下のスズキ・f6Aターボの排気バルブ傘部破壊故障の実例を記したリンクを掲載しておく。
F6Aターボ・ブローダウンの続き
2017-12-26 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/cbe12a09da875a03103c7a5d31c665e7
F6Aターボ・エンジンブローダウン事例のこと
2017-11-18 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/75c17e75ac90011dfbf9de829dd11319
ここに示したバルブは、BMWミニR56型(N16Aエンジン)のものであるが、パーツリストから引き出した、重量、小売価格(米$価)などから、インテーク側とエキゾースト側を比較して見たのが、写真6のデータだ。これによると、インテークバルブは最大傘径が30mmでエキゾースト側の25mmより20%大きい。この給気バルブが排気バルブより大きいというのは、吸排の絶対圧力差とその流速により、給気側を重視するが故に、一般に給気側が大きくされている訳だが、昨今のターボ過給によるダウンサイジングエンジンが常套的な時代になり、昔より吸排の比率は小さくなって来ている様に感じられる。
さらに、同データ表から、重量は大きな傘径を持つ給気側の方が、排気側より30%ほど大きいが、小売価格(米$)は、排気側の方が逆20%高い。ちなみに、重量(g)当たりの単価を比べてみると、排気は給気に比べ60%高価であり、それだけ高級な材料が使用されているだろうと想像ができる。
バルブの製法だが傘部とステム部は別材質で、燃焼室の一部を形成する傘部は耐熱合金としての性能と、高温で着座しても破壊しない高温強度を重視している。ステム部はその様な性能は求められないので、傘部とステム部は溶接して成型されている。ここで、給気と排気では、排気バルブは燃焼中の高温に耐えるだけでなく、排気行程で高温の高速ガス中にさらされるということで、給気よりさらに高い高温性能が求められる。具体的にはニッケル成分を多くした、耐熱合金で作られることになるが、ここに排気バルブは小さく軽くても、給気バルブより高価になる理由がある。
なお、レーシングエンジンとか市販車でも高出力エンジンなど、熱的条件が厳しいエンジンには、ステム部を中空にして、内部にナリリウムを封入したバルブが使用される場合がある。このことは、以前の当ブログでも触れているので、参考までに以下にリンクを掲載しておく。
ナトリウム(ソジウム)封入バルブのこと
2018-05-15 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/12136dbc720bcee27a1bf432ddbfbbe8
写真の溶損した排気バルブは、数年前にBMWミニR60(クロスオーバー)で実際に、1気筒圧縮圧力ゼロで不良となってしまったエンジンのものだ。この様な排気バルブの加熱を防ぐため、エンジンの高負荷領域では、ストイキ(理論空燃比)燃焼を止め、出力空燃比(1:12程度)の燃焼を行い、出力重視と共に、高温部位の燃料冷却も併せて行う空燃比設計がなされている。
しかし、現実にこの様なバルブ溶損故障が生じた理由だが、これは私見となるが、ラッシュアジャスターの固着など正常な機能の喪失に原因があった可能性もあるのでは内かというのが想像だ。つまり、バルブの閉着座が緩く、密着不良でバルブの熱伝導不良による昇温と共に、漏れ吹き出す高温の排気ガスのジェット噴流によりバルブの溶損が起きたのではないかと想像するのだ。
もう一つ、実際のエンジン故障で、想像できることとして記してみたい。それは、ステム上部のコーター溝のことだ。このN16aエンジンでは、ステム系が5mmと細く、コッター溝を深く掘れないとう宿命もあり、コッター溝は3本が刻まれている。エンジンの動作中は、バルブの開閉に伴い、コッター溝部には繰り返し応力が働くが、もしコッター溝が1本だとして、コッター部の疲労破壊が生じると、バルブは燃焼室側に垂れ下がり、繰り返しピストンと衝突することで、極めて深刻なエンジン故障に結び付く。そんなエンジン故障の要因となったと想像されるのが、以下のスズキ・f6Aターボの排気バルブ傘部破壊故障の実例を記したリンクを掲載しておく。
F6Aターボ・ブローダウンの続き
2017-12-26 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/cbe12a09da875a03103c7a5d31c665e7
F6Aターボ・エンジンブローダウン事例のこと
2017-11-18 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/75c17e75ac90011dfbf9de829dd11319