私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

フライホイール・アキュームレーター・コンデンサーの近似した性格

2020-07-08 | 車両修理関連
 表題の3つの機能部品は、フライホイールが運動エネルギーの、アキュームレーターが液体や気体の蓄圧とか立ち上がり立ち下がり特性の、コンデンサーが電気的なアキュームレーターと類似の特性と、用途は異なるが、何れも近似した目的のために利用されていることを知る方は十分判っているだろう。

 ここでは、そんなことはどうでも良い、部品を替えて直るかが修理と思い込んでいる方向けに、多少は、損傷診断の大前提となる知識としてそれぞれを書き留めてみる。

1)フライホイール
 回転体の運動エネルギーを回転体の慣性マス(重量)として溜める装置のことだ。内燃機関の実用車では、低回転での発進を容易にするために採用されている。プレス工場で使用されるクランクプレスという機械は、プレス動作はでは一気に必用動力が高まるが、予め小型モーターで比較的大重量のフライホイールを定速回転まで上げておくことで、一瞬のプレス動作の必用動作を引き出すことができる。
 なお、自動車の様に速度を変える場合、フライホイールを含め回転体の慣性マスが、すなわち加速抵抗として吸収されてしまうため、この面では回転系の慣性マスは小さい方が性能は向上するが、実用車としては発進の容易さとかクラッチ寿命を高めるために、そちらを優先している。故兼坂弘氏は大型トラックでのロー発進の全力加速ではエンジン出力の80%がフライホイールの加速に吸収されてしまうと述べていた。

2)アキュームレーター
 フライホイールは運動エネルギーを溜めておいて、必用な時に取り出す装置だが、これは液圧とか空圧で、類似の動作を行うものである。自動車に使われているものとしては、ABSやブレーキバイワイヤーのアクチュエーターとして、予めブレーキ液圧を高圧として蓄えておき、増圧作用が必用な時、速やかに圧力を取り出す作用を行っている。これにより、加圧用ポンプモーターの作動頻度を下げたり、レスポンス向上を求めている。

 フランス車などに昔からハイドロニューマチック(油空圧複合)サスペンションというのが採用されていたが、これの蓄圧用にアキュームレーターが用意され、必要以上に過大なポンプを使用せず、ムダなロスを防いでいる。それでも、燃費ロスは相当なものと想像する。20年位昔、アクティブサスペンションというのがトヨタやニッサンで開発されたが一世代で消え去った。これにも増圧用にアキュームレーターが装備されていた。このサスペンションが1世代で消え去ったのは、動力損失が大過ぎ燃費が悪くなり過ぎることにあったとは私見だ。

 ATミッション(ステップ式AT)に、特定のギヤ段のブレーキ(もしくはクラッチ)機構の油圧回路にアキュームレーターが配置されている場合がある。これは、予め蓄圧すると云うより、油圧が作用した場合の増加率(立ち上がり)をある程度緩め、持ってシフトショックを弱めるなどの目的で使っていたものだ。

 大型のアキュームレーターが配置された機械としては、ダイカストマシンなどの高油圧で大きな作動範囲を高頻度に繰り返す機械だろう。ダイカストマシンでは、型締力で機械の大きさを表すが、300トンクラスのものでも、見掛け30Lクラスの容量のアキュームレーターが付帯している。なお、アキュームレーターとして蓄圧した場合の反力は、液体の場合は高圧チッ素ガスが一般に利用されている。

3)コンデンサー
 コンデンサーは電気的なアキュームレータと同様の作用を行う電機部品だ。昔のポイント式高圧点火装置では、ポイントと並列にコンデンサーが配置されていた。これにより、ポイントが開いた瞬間、イグニッションコイルの自己誘導原理により高電位の誘起を生じる訳だが、ここでアーク放電が生じると電流の切れが悪く自己誘導が弱まるため、アーク放電防止に適する容量のコンデンサーを配置することで強い自己誘導を生じさせている、なお、過剰な容量のコンデンサーを配置すると、電流自体の切れが悪くなり過ぎ自己誘導は弱まってしまう。ポイント閉時のコイル電流に応じた適する容量のコンデンサーが必用なると共に、自己誘導の最大電圧に十分余裕を持つ耐圧性能が求められる。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。