私の思いと技術的覚え書き

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スズキリコール・燃料タンクブリーザーネック溶着不良

2021-04-09 | 車両修理関連
 昨日付(4/8)でリコール公示されたスズキ・ソリオ、クロスビー、イグニス、三菱・デリカD:2の燃料タンクのブリーザーパイプの溶着部のリコールがある。この中で、溶着という樹脂間の接合処理が外観目視でどこまで不具合を判定出来るのかという疑問を持ち、国土交通省リコール課に電話で意見を伝えると共に一部質疑応答などを行った内容を紹介してみたい。
 
1.私からリコール課に伝えた要旨
 私は、過去に自動車整備士ならびに損害保険調査員として長年種々の火災事案の原因究明にも関わって来た職歴を持つ。そんな中、4月8日付けでリコール届け出された、届出番号4929のスズキ自動車の燃料タンクのリコールだが、その改善処置の内容として、いささか不適当さを懸念し意見を述べたい。

 リコール内容は燃料タンクの樹脂本体に対し、別部品としてブリーザーパイプが溶着(樹脂を適当な時間加圧かつ加温して該当部を溶かして接合する)構造とのことだが、原因は加圧力、適正温度にあったのか判らぬが、何れにしても溶着不良のものが令和2年7月から最長でR2年11月まで約4か月間の製品で、燃料満タン時などに燃料が漏れるという不具合を生じているとのことだ。

 なお、現時点(4月8日)にリコール届出したと云うことは、製造から約半年と比較的短い期間でのリコール現象の発現に至っていることが判る。

 さて、今般の意見で問題視したいのは改善処置として対象車両の燃料タンクを点検し、該当ブリーザーパイプの様茶部を点検し溶着が不適正な場合、良品タンクと取り替えると記されている。ところで、樹脂溶着の部位の製造後の液漏れは燃料タンクに限らず、各種冷却系統の部品だとかでも経年した車両で生じていることが知られている。これは、同様着不良があった場合、その液圧や走行における振動の問題もあるだろうが、樹脂の持つ経年劣化という宿命的な問題を内在していることが知られている。

 また、樹脂溶着に関わらず、金属における溶接やろう付けにおいても、該当部の欠陥により、その直後もしくは相当期間を経て不具合が発現することが知られている。

 金属溶接などでは、外観目視による検査で済まされる場合もあるが、不具合が生じて液漏れなどを生じると重大な事故に結び付く可能性のある部位、例えば車軸の溶接とか、原子力関係の各種パイプの溶接においては、内部の不具合は概観からは判断できないので、X線とか磁気探傷法とか、それなりの検査を経て出荷されている。

 今般の樹脂タンクと樹脂製ブリーザーパイプフランジ部の溶着だが、確実に溶着されており、未だ製造後半年の期間であるが、少なくとも車齢をまっとうする10年前後の期間、不具合を生じない確実な溶着具合になっているかは、試作段階で正しくは破壊検査により断面を分析しなければ判断できないと思量する。

 また、非破壊検査で行うにしても、燃料もしくは別の液体、もしくは大きな水槽内で燃料タンク内を加圧する試験をしなければ、確実な溶着が出来ているか判断は困難だろうと、類似の様々な経験からは推察する。

 つまり。リコール届出書の改善内容に記されている「ブリーザーパイプの溶着が不適切な場合」とはどのような検査を行うのだろうか? もし、それが、目視で溶着部位の外視だけで済まされるとか、燃料漏れの痕跡がないことだけを持って行われる前提としたら、甚だ不足な内容と憂慮せざるを得ないのである。

2.リコール課担当者の回答
 意見の趣旨は良く判ります。ただ、ここにリコール内容には記されていませんが、別途のメーカーからの情報として、該当不具合は、タンクに装着されたブリーザーパイプのフランジ部の座りが悪い(つまり治具などの不具合で斜めに取り付けられてしまっている)ことがあるという。ですから、目視で斜めになっているかという不具合は発見しやすいとも付記されている。

 ということを聞いて、それなら、メーカーのリコール届出内容を、もっと実情を伝えるように訂正させるなり、ユーザーの不安を払拭させるよう努めなければならないのではないだろうか。私は、過去のリコール記述を見て、論理不足だとか、不自然だと感じることもあった。いずれにしても、メーカーの視点に立てば、そのリコールを如何に軽く洗わしたい、もっと云えば要する費用を安価に済ませたいという心理が働くのは、ある意味当然の帰結であり、リコール課は、その辺りの心理も十分想定した上で、適宜届け内容の訂正を求めるなど、対ユーザーに理解を得やすいものにすることが求められよう。そのためには、あなたがリコール担当のリーダーなのだから、自己研鑽も含め、ユーザーの立場に立つと云う気概を持って業務に励んで戴きたい。

 なお、保険のリコールは、対象台数も7800台と少ないのだし、先に述べたように約10年は車検など日頃の点検でも見ることもできない部位だと云うことも合わせると、全数取替とすべきではないだろうか。





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