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冠水路で車が走れる水深は?

2022-11-08 | コラム
冠水路で車が走れる水深は?
 世には冠水路などで車両が水没して、エンジンが停止したまま死亡するなど重大な事故が時々聞かれる。また、死亡とか重大事故にはならずとも、いわゆる水害車としてエンジン始動不能となったり、室内に水や泥が侵入して、その修理費用が極めて高額となり、修理費が車両の価値を上回る経済全損でとても修理しても間尺に合わないので修理を諦めるという自体も多いだろう。

 その様な前提で下記の記事をNetで見たのだが、だいたいは異論はないのだが、一部異論を感じるのと言葉たらずという思いを持つので、ここでそのことを書き留めてみたい。

 問題を感じた部分を下記に抜粋したが、クルマが問題なく走れる水深は10cmまでは問題ないと思えるし、50cmを越えると「車が浮き」というのも確かだろう。たが、「マフラーの出口より水深が深ければ、水によって排気管が塞がれ、エンジンが止まり」とあるがこれは疑問だ。排気管の圧力は水深50cm程度の水圧をはるかに上回り、この程度の排圧上昇でエンジン停止はあり得ないと判断している。

 それよりも、水深20cm程度に近づくと、車両の前進速度が上がると、水の造波抵抗により車両前方の水位は押し上げられ、これが吸気口の高さを上回ると、吸気管に水か侵入すると即座にエンジンは停止する。また、この水の吸い込みが急激かつエンジン負荷の高い状態(アクセルを踏んだ高負荷状態)だと、エンジン内部に深刻な重大ダメージが生じる。これは俗に云う「ウォーターハンマー」と呼ばれるもので、シリンダーが空気圧縮でなく液圧縮されることで、コンロッドなどに設計値を遙かに上回る応力が作用して曲がるというものだ。

 なお、駐車中の冠水水位の上昇でフロアパネルを越える水深になると、車両の防水は極短時間の冠水水位が50cm程度でも室内に水は浸入しないが、水密は厳密なものでなく時間経過と共に水が進入してしまう。ただし、駐車中の水没では、その水位まで室内などの水位も達することになり、大きな修理費を生み出し、エンジン内部などにも水が入る場合もあるが、この場合でもエンジン内部に重大な破壊を生み出すことは考え難い。

 筆者は過去に多数の水害車の損害査定に関わり、またその水害車を修復し5年程乗り続けたこともある。この修復した水害車は駐車中に水深80cm程の水没(コンビネーションメーター下縁程)を生じており、エンジンオイルは明らかに水が浸入しており、規定オイル量の倍ほどの水混入オイルが排出されたが、エンジン内部に何ら手を触れることはなかった。ただし、主に室内艤装部品(シートやフロアマット類)の他、ECUとかリレー類のたぐいはすべて取替を要した。また、これら類の取替は新品部品を取り寄せて交換ではあまりに費用を要することが容易に予見でき、同型事故大破車の部品と交換することで部品を調達できた。なお、ATユニットはやはりブリーダープラグ(空気抜き)から水侵入と思われる増量があり、オイル交換の繰り返しより、該当大破車のATユニットと取り替えることで済ませた。ATの場合は、油路が複雑で、水侵入の場合に直ちに壊れる訳ではないものの、オイル交換を繰り返しても、油路および各ギヤを切り替えるためのソレノイドなどに水と空気がいたずらすると、変速不具合などを生じるリスクを逃れたいという意味で、事故大破車のATユニットと取替が最善であろうと判断したものだ。

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クルマが走れる水の深さは? 豪雨や台風時の運転で「命と愛車を守る」ためにすべきこと (2/2ページ)
WEB CARTOP 2019年11月7日 TEXT: 藤田竜太 PHOTO: WEB CARTOP
ソースURL:https://www.webcartop.jp/2019/11/450797/

【内容の一部抜粋】
クルマが問題なく走れる浸水深は10cmまで
 基本的に深い水たまりがあるところは走らないことが重要。センターラインが見えない、道の端が確認できないような道は、危険なので別のルートを探すこと。豪雨や洪水などで浸水した際の、水面から地面までの深さのことを「浸水深」というが、千葉県津波浸水予測図の浸水深ランクによると、クルマが問題なく走れる浸水深は、10cmまで。
 10~30cmになると「ブレーキ性能が低下し、安全な場所へ車を移動させる必要がある」30~50cmになると「エンジンが停止し、車から退出を図らなければならない」50cm以上になると「車が浮き、また、パワーウィンドウが作動せず、車の中に閉じ込められてしまい、車とともに流され非常に危険な状態となる」とある。
ただ、見た目で浸水深を正しく判断するのは難しいので、すでに冠水している道には進入しないことが鉄則。
 車高の高いSUVやミニバンでも、マフラーの出口より水深が深ければ、水によって排気管が塞がれ、エンジンが止まり、その場で立ち往生することは避けられない。


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