現代車において、ドエルアングルというのは、ほぼ死語となったという感だ。まあまあクルマのメカに詳しい方でも、現在30代以前では、聞いたこもないという方もいるのかもしれない。現在のクルマは、軽トラでさえ、DI(ダイレクトイグニッション)化され、デストリビューターもポイントもない訳で、エンジンECU内部のパワートランジスタで、各気筒のイグニッションコイルの電流を断続させ、スパークプラグの火花点火を行っている。
昔を思い出すと、イグニッションコイルの電流断続のため、コンタクトポイント(以下ポイントと記す)は必須のメカニズムだった。しかし、このポイントというメカニズム、接点はアークで摩耗し、ポイントを開閉のカムとの当たり面となるヒールというベークライト製の部位の摩耗も進むから、結構に交換頻度の高い消耗部品の一つだった。そして、ポイントを交換する際、ポイントギャップ(カムの最頂部で押し上げられ開いた隙間)を基準値(0.45mm±0.05だったと思う)に合わせる訳だが、ポイント接点間にシクネスゲージなどを挿入するのは接点の汚損から好ましくなく、目見当で合わせ、エンジン始動後ドエルアングルテスターで、基準値(4気筒なら52°±2°これもだったと思う)なら、ポイントギャップOKと判定していたものだった。だいたい慣れてくると、8割方は目見一発で決まったものだった。
改めて、ドエルアングルだが、ポイントの閉じている角度を示す数値のことを指す。つまり、イグニッションコイルに電流が流れている角度(=時間)を示す値だ。ポイントを閉じてコイルに電流が流れている状態で、ポイントを開くとコイルの自己誘導作用で高電圧(千ボルト単位)が生じ、さらに二次コイルとの巻数比による相互誘導作用で万ボルト単位の高電圧に変換されスパークプラグに火花を飛ばす訳だ。ところで、ポイントを閉じた瞬間にコイルの電流は垂直上昇する訳ではない。先の自己誘導(逆起電力)が生じるため、二次関数的な上昇を示しつつ電流は飽和する。従って、高速回転とか、そもそもドエルアングルが小さくなる6気筒とか8気筒では、電流が飽和しないままにポイントが開いた結果、火花が弱くなってしまうという現象になるのだ。この解消策とて、マルチシリンダーでは、デストリビューターを2つ備え、それぞれのポイントとコイルにより閉角度を大きくするものもあったが、コスト高で高級スポーツカーに限られていた。もしくは、デスビーは1つだが、内部に2つのポイントを持ち、作動カムは気筒半数のカム山としたものもあった。そして、もう一つの火花を強くする手法として、一次コイルの巻数を少なくすることで逆起電力を小さくし、コイル電流の飽和時間を短くするものがあった。その代わり過電流を防止するため、外付け抵抗を付けたのが通称GTコイルと呼んでいた外部抵抗器付きイグニッションコイルだった。しかし、ポイントレス(フルトランジスターと呼称)の時代になり、閉角度制御と呼ばれた高回転でドエルアングルを電気的に大きくする機能(一種のデューティ比制御)が付加されたりと、なにかとトラブルを生じがちなポイントメカの呪縛から逃れたのだった。
いろいろ追記
コイルの逆起電力(インダクタンス)による駆動電流の立ち上がりの鈍さは、イグニッションコイルだけでなく、インジェクションのインジェクターコイルでも類似の遅延を生じる。これを防止する目的で、コイル巻数を減じレジスターを入れて対応しているのも良く見られる。
ポイントと並列にコンデンサーが接続されていたが、これはポイントが開く際のアークを吸収(つまりポイントの電気的切れを良く)し、強力なコイル電流の切断を行うためのものだ。だから、コンデンサーがパンクすれば、スパークプラグの火花が弱くなり、始動困難に陥るという事例も多数あった。
何れにしても高圧電気系は、高圧がデスキャップやローターのベークライト製部品の亀裂によるリークやレジスティブコード(ラジオノイズ防止のための抵抗入り高圧コード)の内部断線だとかから、エンジン始動不良や加速不良など、とかく原因となることが多かったものだ。現代車では雨天でも、特にエンジントラブルとなる事例は少なくなったと思えるが、昔(ポイント時代)は、雨の日にトラブルで停止しているクルマを見掛けたものだ。それも、決して偏見でなくトヨタより日産が多かったと思える。
※写真はトヨタ4気筒エンジンのデスビーキャップとローターを外した状態。ポイントはベースプレート上に2本のビスで固定される。4山カムは、ベース下部にある遠心式進角装置により進角する。また、ベースプレートはバキュームダイヤフラムにより軽負荷(高負圧)時に進角される。そして、バキュームダイヤフラムの反対側に付くダイヤル(透明キャップ内)がオクテンセレクターで、アイドルでイニシャルタイミングをセット後、実走でトップギヤ40km/hくらいからの加速で短時間カリカリとノック音が出る程度に、マニュアル調整(S48規制以前、以後は禁止とされたができる構造はそのままだった)したものだった。
昔を思い出すと、イグニッションコイルの電流断続のため、コンタクトポイント(以下ポイントと記す)は必須のメカニズムだった。しかし、このポイントというメカニズム、接点はアークで摩耗し、ポイントを開閉のカムとの当たり面となるヒールというベークライト製の部位の摩耗も進むから、結構に交換頻度の高い消耗部品の一つだった。そして、ポイントを交換する際、ポイントギャップ(カムの最頂部で押し上げられ開いた隙間)を基準値(0.45mm±0.05だったと思う)に合わせる訳だが、ポイント接点間にシクネスゲージなどを挿入するのは接点の汚損から好ましくなく、目見当で合わせ、エンジン始動後ドエルアングルテスターで、基準値(4気筒なら52°±2°これもだったと思う)なら、ポイントギャップOKと判定していたものだった。だいたい慣れてくると、8割方は目見一発で決まったものだった。
改めて、ドエルアングルだが、ポイントの閉じている角度を示す数値のことを指す。つまり、イグニッションコイルに電流が流れている角度(=時間)を示す値だ。ポイントを閉じてコイルに電流が流れている状態で、ポイントを開くとコイルの自己誘導作用で高電圧(千ボルト単位)が生じ、さらに二次コイルとの巻数比による相互誘導作用で万ボルト単位の高電圧に変換されスパークプラグに火花を飛ばす訳だ。ところで、ポイントを閉じた瞬間にコイルの電流は垂直上昇する訳ではない。先の自己誘導(逆起電力)が生じるため、二次関数的な上昇を示しつつ電流は飽和する。従って、高速回転とか、そもそもドエルアングルが小さくなる6気筒とか8気筒では、電流が飽和しないままにポイントが開いた結果、火花が弱くなってしまうという現象になるのだ。この解消策とて、マルチシリンダーでは、デストリビューターを2つ備え、それぞれのポイントとコイルにより閉角度を大きくするものもあったが、コスト高で高級スポーツカーに限られていた。もしくは、デスビーは1つだが、内部に2つのポイントを持ち、作動カムは気筒半数のカム山としたものもあった。そして、もう一つの火花を強くする手法として、一次コイルの巻数を少なくすることで逆起電力を小さくし、コイル電流の飽和時間を短くするものがあった。その代わり過電流を防止するため、外付け抵抗を付けたのが通称GTコイルと呼んでいた外部抵抗器付きイグニッションコイルだった。しかし、ポイントレス(フルトランジスターと呼称)の時代になり、閉角度制御と呼ばれた高回転でドエルアングルを電気的に大きくする機能(一種のデューティ比制御)が付加されたりと、なにかとトラブルを生じがちなポイントメカの呪縛から逃れたのだった。
いろいろ追記
コイルの逆起電力(インダクタンス)による駆動電流の立ち上がりの鈍さは、イグニッションコイルだけでなく、インジェクションのインジェクターコイルでも類似の遅延を生じる。これを防止する目的で、コイル巻数を減じレジスターを入れて対応しているのも良く見られる。
ポイントと並列にコンデンサーが接続されていたが、これはポイントが開く際のアークを吸収(つまりポイントの電気的切れを良く)し、強力なコイル電流の切断を行うためのものだ。だから、コンデンサーがパンクすれば、スパークプラグの火花が弱くなり、始動困難に陥るという事例も多数あった。
何れにしても高圧電気系は、高圧がデスキャップやローターのベークライト製部品の亀裂によるリークやレジスティブコード(ラジオノイズ防止のための抵抗入り高圧コード)の内部断線だとかから、エンジン始動不良や加速不良など、とかく原因となることが多かったものだ。現代車では雨天でも、特にエンジントラブルとなる事例は少なくなったと思えるが、昔(ポイント時代)は、雨の日にトラブルで停止しているクルマを見掛けたものだ。それも、決して偏見でなくトヨタより日産が多かったと思える。
※写真はトヨタ4気筒エンジンのデスビーキャップとローターを外した状態。ポイントはベースプレート上に2本のビスで固定される。4山カムは、ベース下部にある遠心式進角装置により進角する。また、ベースプレートはバキュームダイヤフラムにより軽負荷(高負圧)時に進角される。そして、バキュームダイヤフラムの反対側に付くダイヤル(透明キャップ内)がオクテンセレクターで、アイドルでイニシャルタイミングをセット後、実走でトップギヤ40km/hくらいからの加速で短時間カリカリとノック音が出る程度に、マニュアル調整(S48規制以前、以後は禁止とされたができる構造はそのままだった)したものだった。