私が社会人になっておよそ32年になろうとしています。その間クルマに関わる仕事を続けながら、多くのクルマ達を見続けてきました。この間のクルマに関わるトレンド(傾向・流行)として、私が思うことを記してみます。なお、書き始めたら予想を超え多項目になってしまいましたので、取りあえず3回に分けて掲載する予定にします。
①ボデーデザイン(その1)
ボデーデザインにおいて、現在のクルマを概観して類似性が多く個性がないと思う方も結構いるのではないでしょうか。考えて見れば、昔のクルマでは、ボデーデザインで一番目に付き易いフロントエンドのデザインにおいて、丸形4灯もしくは2灯のヘッドランプに規制されるという宿命がありました。しかし、現在のクルマでは、異形ヘッドランプとしてデザインの自由度は圧倒的に増えたものの、クルマ毎の個性はかえって減っている様に感じられます。確かに、ディテールを眺めれば違うのですが、全体を見ると類似性が際だってしまうのだと思います。
しかし、これも止むない宿命もあるのだと感じます。クルマの開発費用は明確には判りかねますが、百億単位のこともあろうと思いますが、やはり売れる商品を作るというが至上命題なのでしょう。そんな中、他社の売れる商品の一部デザインモチーフを取り入れ、売れるクルマのデザインを作るというということは、無意識的に生じてしまうことなのかもしれません、但し、中国の様に極端な模倣をするのは、論外な話しでしょうが。
②ボデーデザイン(その2)
過去のデザインを概観して、角か丸かという区別というか傾向が見られるものです。つまり、そのクルマのデザインが、角張ったものか、曲面を多用した丸っこいデザインかということです。
この様なデザイントレンドに乗るのは、どのメーカーであれ多かれ少なかれあることです。特定の車種において、モデルチェンジで、丸くなったり角ばったりと、ある程度変化して行くことは、ある意味新たなデザインの提案と云った意味を含め賛意を持つことです。しかし、その車種のアイデンティを残しつつ、新たなデザインを提案する実績においては、欧州車に比べ日本車の弱い部分と感じます。特に過去の日産は、ユーザー不在のまま、振れすぎた面があったのだろうと思います。
ところで、モーターリゼーションが起こる以前のクルマや、昔のイタリアのカロツェリア達等が作って来た少量生産車は、圧倒的に丸っこいデザインのクルマが多いものです。しかし、古いクルマの中でも、米軍のウィルスジープや独軍のキューベルワーゲン等では、平板なボデー構成のクルマもありますが、これらは兵器としての大量生産に特化したものとして除外した上での話しです。この曲面多用の理由ですが、ボデーパネルを手叩き鈑金によって製作したことにあるのだと思います。クルマのボデーパネルは平らに見える部分でも、極緩やかな曲面となっていますが、この様な平面に近いボデー部位より強い曲面を持つボデー部位の方が鈑金製作作業は容易なのです。また、これは鈑金修理でも云えることです。
なお、昔のイタリアを中心としたカロツェリア達が作って来た少量生産車は、その多くがアルミニウム製パネルですが、これも鈑金製作の際の容易さにあったはずです。アルミによる軽量化は、あくまで副次的に生じたものと感じています。
③ボデーデザイン(その3)
クルマに取り入られるデザインモチーフで、瞬く間に広がり普及するものがあります。近年気が付くものでは、ドアミラー組み込みのサイドターンシグナルランプがあります。これは、ベンツで最初に採用されたものだと思いますが、今や日本車の多くで普及しました。
リヤランプやポジションランプ等のホワイトもしくはクリアランプも、今やその採用車も多くトレンドとなっています。これは、元々社外パーツとして、クルマ好きの若者を中心に改造装着され出したものだと思います。但し、このホワイトランプですが、私は少しも良さを感じません。赤やオレンジの方が、アクセントにもなり、良いと感じていますが、これも私が年を取ったせいでしょうか。
これは機能部品となりますがマフラー出口のデザインに感じることです。一時期のクルマで、マフラー出口を下向きにして目立たなくしたクルマがありました。しかし、昨今は逆に従来と同様に戻した上で、これ見よがしげに左右に2カ所のマフラー出口としているクルマが増えています。これは、大排気量V型エンジンの搭載車が増えたということもあるのでしょうが、4気筒エンジン搭載車でも結構にあります。これも、私には価値を認めがたいトレンドと感じます。
④ボデーデザイン(その4)
またまたボデーのディテールですが、近年前後ウインドガラスのモールディングを廃したり、室内のヘッドライニング(天井)の各縁のトリミングを廃したりといった設計を行うクルマが増加しています。このこと自体は、各部品の寸法精度や端部の仕上げレベルの品質向上がなされた故に可能になったことであり、これによりカーメーカーは部品点数を減らし原価低減を進めているものだと思います。しかし、これらガラスや内装部品を作っているサプライヤーにとって見れば、各パーツの品質レベルの向上を求められ、きっと納入価格は据え置かれ、納入部品点数を減らされと、大変な思いをしているのではと想像してしまいます。
なお、この傾向は事故車の復元修理についても、影響を与える場合が往々にしてあります。各モールディングを廃した設計は、個別パーツの較差の許容を狭め、その部品の修理を困難とし、部品の交換率を引き上げる要因となります。また。具体的には、前後ガラスでモールディングがないクルマにおいて、何らガラスの損傷はなくとも、その他の理由でガラスを取り外したい場合、高額部品となるガラスの再使用が出来ないというクルマが現実にあり、それが増加する傾向も感じられるのです。