評価損の最終章として、たぶん知る方も少ないと思われ、この答申の結果如何によっては、車体整備業にも分解整備魚と同じく検査という法律の枠が課され、それによる付加価値が生まれたかもしれないという話題が歴史としてあったということを知ってもらいまとめとしたい。
5.車体修理業界の歴史に関する知識・「何故事故車検査制度が生まれなかったか?」
このことは、たぶん余程車体修理業界の歴史に疎い一般の方は知らぬことだと思い改めて補足したい。
いわゆる分解整備事業者(認証もしくは指定工場)には、そもそも車両法に分解整備の規定があって、その分解整備の作業を行った場合、法律上は国の検査を受けなければならないとされている。ただし。国交省から分解整備事業者に認定なされた者は、そこに存在する検査主任者もしくは検査員による検査により、国の検査を行わなくて良いという法律だてとなっている。ところで、車体整備で車体の根幹である骨格部位を修正しもしくは取り替えるなどの大ダメージを生じた車について、従前の車両法に明記する分解整備と比べ、より重要な部位を作業しているのであり、もし修理の瑕疵があったとすれば重大な事故に結び付く恐れもあるのではないかという意見は平成初期のころ論議となった。この経緯を踏まえ、当時の運輸省(現国交省)では、有識者による運輸技術審議会(以下運技審)というのが開催され、車体整備後の検査を行うべきかどうかを審議したという歴史があるのだ。この運技審の答申は、「事故破損車両の安全確保のあり方に関する報告書」としてH9年3月に事務局たる日通総合研究所によりまとめられ運輸省に提出された。(表紙のみ添付4参照)
ここまで読まれて、既存の板金工場の特に大手工場はある意味沸き立ったところがあったと回想する。つまり、分解整備事業者は車検、法定点検、認証、指定など、法律の規定に守られ存在を高めていると云うことが云えるだろう。一方、既存の板金工場は、分解整備事業にある法律的な後ろ盾は一切なく、もし検査制度ができれば、既存の板金工場でも、事故後の検査を受検するという法律内での新しい業務が生まれることになるからだ。この中でもある程度の規模の大きい工場などは、独自の検査員などを要すこと想定できるから、分解整備事業と同様に法律の枠にある程度庇護された付加価値業務が生じる可能性もあったのだ。
この運技審答申は、平成7年から8年の約2年間を掛けて、車体整備業社の現状などを調査している。この調査時点での日本自動車車体組合連合会(以下日車協)の加入工場は約11千工場(H21現在4500工場)であるが、大手ディーラーを含め日車協非加入工場は14千工場あり、わが国の車体工場の総数は25千工場と推定されたとある。なおこの時点での分解整備事業者(認証&指定)の総数は約7万工場(H21年現在9万工場)と云うことも補足しておく。
同調査は全国の車体整備工場を抽出しアンケート方式で回答を得ることで実態調査を行った。対象は日車協加入の優良認定工場(車体整備一種が327工場(つまり比較的中規模以上の工場となるだろう)、日整連加入のディーラー系車体工場70工場の合計397工場抽出して行った。
この397工場に対するアンケートの回収率は56%だった。アンケートは工員1名当りの工賃売上とか処理件数だとか様々な項目があるが、ここでは本答申の根幹となる再修理関係におけるデータのみを記す。再修理の発生率としては対象全工場平均で1.9%となっている。また、この再修理の中で、特に安全に関わる再修理に限定すると0.19%という結果となった。
また、同調査では、諸外国の実態調査として、欧州(ドイツ、フランス、オランダ)などの関係行政機関と車体工場へ約2週間のヒアリング調査を行った。この結果からは、特に事故車の検査制度を法制度として採用している国はなかった。ただし、最近関連ブログにイギリスでの事例だが「事故などいわゆる全損車の登録原簿への記録の提案」で記した、大ダメージ事故車に「condition alert」(要注意車両)が登録原簿に記録される仕組みや、それを直した場合は検査により車体のすり替えがなされていないことを確認することも主眼に「condition inspected」(検査済み)が記録されるというところは目を引くところだ。つまり、わが国でも往時より低下したとはいえ、高価格車を中心に盗難が継続しており、一部は隠れて輸出されるが、修理しない同型車の登録原簿と車体のVIN打刻を利用したすり替え登録が行われ国内に転売されている事例を垣間見ることから、参考にすべき内容だと感じる。
と云うことで、運技審が行った「事故破損車両の安全確保のあり方に関する報告書」H9年3月は、再修理率1.9%(その内安全に関わるもの0.19%)と欧州先進3カ国で事故車検査が特に行われていない実態から、わが国での事故後の検査は必要ないという結論付けとなったのだった。
つまり、このことは、事故修復後に明らかに不具合が出やすいと云うことを否定するものであり、この調査結果からも訴訟などになった場合に、否定を促し得る資料の一つとなるだろう。
5.車体修理業界の歴史に関する知識・「何故事故車検査制度が生まれなかったか?」
このことは、たぶん余程車体修理業界の歴史に疎い一般の方は知らぬことだと思い改めて補足したい。
いわゆる分解整備事業者(認証もしくは指定工場)には、そもそも車両法に分解整備の規定があって、その分解整備の作業を行った場合、法律上は国の検査を受けなければならないとされている。ただし。国交省から分解整備事業者に認定なされた者は、そこに存在する検査主任者もしくは検査員による検査により、国の検査を行わなくて良いという法律だてとなっている。ところで、車体整備で車体の根幹である骨格部位を修正しもしくは取り替えるなどの大ダメージを生じた車について、従前の車両法に明記する分解整備と比べ、より重要な部位を作業しているのであり、もし修理の瑕疵があったとすれば重大な事故に結び付く恐れもあるのではないかという意見は平成初期のころ論議となった。この経緯を踏まえ、当時の運輸省(現国交省)では、有識者による運輸技術審議会(以下運技審)というのが開催され、車体整備後の検査を行うべきかどうかを審議したという歴史があるのだ。この運技審の答申は、「事故破損車両の安全確保のあり方に関する報告書」としてH9年3月に事務局たる日通総合研究所によりまとめられ運輸省に提出された。(表紙のみ添付4参照)
ここまで読まれて、既存の板金工場の特に大手工場はある意味沸き立ったところがあったと回想する。つまり、分解整備事業者は車検、法定点検、認証、指定など、法律の規定に守られ存在を高めていると云うことが云えるだろう。一方、既存の板金工場は、分解整備事業にある法律的な後ろ盾は一切なく、もし検査制度ができれば、既存の板金工場でも、事故後の検査を受検するという法律内での新しい業務が生まれることになるからだ。この中でもある程度の規模の大きい工場などは、独自の検査員などを要すこと想定できるから、分解整備事業と同様に法律の枠にある程度庇護された付加価値業務が生じる可能性もあったのだ。
この運技審答申は、平成7年から8年の約2年間を掛けて、車体整備業社の現状などを調査している。この調査時点での日本自動車車体組合連合会(以下日車協)の加入工場は約11千工場(H21現在4500工場)であるが、大手ディーラーを含め日車協非加入工場は14千工場あり、わが国の車体工場の総数は25千工場と推定されたとある。なおこの時点での分解整備事業者(認証&指定)の総数は約7万工場(H21年現在9万工場)と云うことも補足しておく。
同調査は全国の車体整備工場を抽出しアンケート方式で回答を得ることで実態調査を行った。対象は日車協加入の優良認定工場(車体整備一種が327工場(つまり比較的中規模以上の工場となるだろう)、日整連加入のディーラー系車体工場70工場の合計397工場抽出して行った。
この397工場に対するアンケートの回収率は56%だった。アンケートは工員1名当りの工賃売上とか処理件数だとか様々な項目があるが、ここでは本答申の根幹となる再修理関係におけるデータのみを記す。再修理の発生率としては対象全工場平均で1.9%となっている。また、この再修理の中で、特に安全に関わる再修理に限定すると0.19%という結果となった。
また、同調査では、諸外国の実態調査として、欧州(ドイツ、フランス、オランダ)などの関係行政機関と車体工場へ約2週間のヒアリング調査を行った。この結果からは、特に事故車の検査制度を法制度として採用している国はなかった。ただし、最近関連ブログにイギリスでの事例だが「事故などいわゆる全損車の登録原簿への記録の提案」で記した、大ダメージ事故車に「condition alert」(要注意車両)が登録原簿に記録される仕組みや、それを直した場合は検査により車体のすり替えがなされていないことを確認することも主眼に「condition inspected」(検査済み)が記録されるというところは目を引くところだ。つまり、わが国でも往時より低下したとはいえ、高価格車を中心に盗難が継続しており、一部は隠れて輸出されるが、修理しない同型車の登録原簿と車体のVIN打刻を利用したすり替え登録が行われ国内に転売されている事例を垣間見ることから、参考にすべき内容だと感じる。
と云うことで、運技審が行った「事故破損車両の安全確保のあり方に関する報告書」H9年3月は、再修理率1.9%(その内安全に関わるもの0.19%)と欧州先進3カ国で事故車検査が特に行われていない実態から、わが国での事故後の検査は必要ないという結論付けとなったのだった。
つまり、このことは、事故修復後に明らかに不具合が出やすいと云うことを否定するものであり、この調査結果からも訴訟などになった場合に、否定を促し得る資料の一つとなるだろう。