私の思いと技術的覚え書き

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評価損害の考察 その4

2021-02-05 | 問題提起
 前回にさらに続いて、今回は対物賠償事故で、必ずしも多くはないが、評価損害が問題にされる案件について種々考察してみたい。

4.査定協会が算出する評価損害
 評価損害の主張がなされる場合に、一般財団法人 日本自動車査定協会なる組織体が有料で発行する事故減価証明書なる文書が根拠として提示される場合がある。(添付3参照)

 この算定式では、P=基準価格(小売価相当)、X=修理費とされているらしいが、6.67とか係数の1.2の根拠は不明だ。その他、従前述べて来た修復歴と定義と合わせ考えてみると、幾つか疑問を生じることがある。

 ここでは評価損の積算に小売価に修理費を乗じてルートで開いている訳だが、修復歴で対象としない部品まで含め多修理費全体を所売ることの不思議さを感じる。つまり、例えば、仮にタイヤとホイール4本を新品に替えると、それだけ修理費は増すが、一般に小売価が増す要因となっても、評価損を増やす不合理を感じる。このことは、サスペンション部品など、何れも高価な部品だが、事故でなくとも自然に摩耗や衰損を生じるが、これらを交換しても、修復歴にならないのに、この減価計算式では逆になるという不合理を感じる。

5.車体修理業界の歴史に関する知識・「何故事故車検査制度が生まれなかったか?」
 このことは、たぶん余程車体修理業界の歴史に疎い一般の方は知らぬことだと思い改めて補足したい。
 いわゆる分解整備事業者(認証もしくは指定工場)には、そもそも車両法に分解整備の規定があって、その分解整備の作業を行った場合、法律上は国の検査を受けなければならないとされている。ただし。国交省から分解整備事業者に認定なされた者は、そこに存在する検査主任者もしくは検査員による検査により、国の検査を行わなくて良いという法律だてとなっている。ところで、車体整備で車体の根幹である骨格部位を修正しもしくは取り替えるなどの大ダメージを生じた車について、従前の車両法に明記する分解整備と比べ、より重要な部位を作業しているのであり、もし修理の瑕疵があったとすれば重大な事故に結び付く恐れもあるのではないかという意見は平成初期のころ論議となった。この経緯を踏まえ、当時の運輸省(現国交省)では、有識者による運輸技術審議会(以下運技審)というのが開催され、車体整備後の検査を行うべきかどうかを審議したという歴史があるのだ。この運技審の答申は、「事故破損車両の安全確保のあり方に関する報告書」としてH9年3月に事務局たる日通総合研究所によりまとめられ運輸省に提出された。(表紙のみ添付4参照)



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