人口激減時代、東京圏を「3500万人の巨大都市国家」としてとらえる視点が必要だ!
4/8(月) 6:04配信 現代ビジネス
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
東京圏そのものを「特区」とする
第5の視点は、人口減少日本において、しばらくは独自の課題を抱える東京圏という「外国」に対して行おう。東京圏はいわば、「3500万人の巨大都市国家」となる。ならば、名実ともに外国とすべく、東京圏そのものを「特区」としてしまうことだ。
例えば、地方との間で人や物が移動した場合には関税のように負担を求め、それで得られた収入を地方の社会基盤を作り替えるための財源として充てるぐらいの大胆な構造的変化をつけるのもよいかもしれない。
東京圏を「巨大都市国家」としてとらえるならば、東京圏を除く「地方」は“取引の相手国”のような位置づけとなる。「巨大都市圏」から見た場合に、どう見えるのかという視点が重要になる。
東京圏から「地方」を見れば、若者が減って行くので、多様な人材を集めてきたこれまでのスタイルは維持できなくなる。国内マーケットは縮み、高齢化によって消費者の嗜好も消費量も変わっていくので、国内マーケットを主軸にしてきた企業は成り立たなくなる。
こうした条件下で東京圏が日本経済の推進エンジンを担い続けようとするなら、これまで以上に海外マーケットに活路を求めざるを得ないだろう。
すると、国際競争力の強化策が急務となる。いまや、東京に支社を置いていた外国企業の多くが北京やシンガポールなどに拠点を移してしまった。グローバル企業が日本法人ではなく、極東支社を置くくらいにならなければ優秀な外国人人材も招き入れられない。
こうした状況を打破するためにも、まず行うべきは成長分野の企業が集積するエリアを定め、そこを中心に大胆な規制緩和を徹底することだ。許認可等の手続きをできる限り簡素化し、通信インフラを含めた基盤整備を早期に実現する必要がある。
政府は先端技術を活用した「ソサエティ5.0」を打ち出している。先に、最先端技術を活用した「スーパーシティ」構想を取り上げたが、これこそ、効果が見通せぬ地方創生のための政策として展開するのではなく、特区と化した東京圏で“夢の国”の如く実現させたらどうか。
東京圏の中にエリアを決めて、最先端医療やアニメーションなど日本が得意とする分野の集積地とするのも方策だ。外国資本や人材の呼び込みができないようでは国際競争において東京圏に“勝ち目”はない。
コンソーシアムを形成する
写真:現代ビジネス
一方、若い人材が減っていく状況への対応策としては、各企業がそれぞれの「強み」を持ち寄ってイノベーションにつなげたり、商品開発につなげたりする企業間連携を築く発想も求められる。
すでに一部の企業では動きもあるが、いくつもの異業種企業がコンソーシアムを形成し、各社が優秀な社員をメンバー登録してプロジェクトチームを結成する。
コンソーシアムの運営組織が、企業間連携の橋渡し役を務める。少子化で若き優秀な日本人の人材は限られてくる。とはいえ、簡単に外国から招き入れられるわけでもない。“奪い合う”よりも“出し合う”ことで人材不足を補うだけでなく、イノベーションを促進し、あるいは新たな成長分野を切り開いていけるような受け皿づくりも推進する。個々で戦うのもよいが、可能な限り「3500万人の巨大都市国家」としての勝利を目指すことである。
次代の日本をにらんだ布石打ちも必要だ。日本はユニコーン企業が誕生しづらい国と言われてきたが、大企業はもっと企業内ベンチャーやスタートアップ企業づくりを積極的に仕掛けることだ。
日本でなかなか起業が進まないのは、そもそもの挑戦者が少ない、ベンチャーキャピタルの不在など数多くの理由が存在するが、まず法律で規制し、その後で民間参入を許可するという政府の姿勢が崩れないことにもある。法整備には時間を要するため、その間にどんな素晴らしいアイデアでも腐ってしまう。
大企業の企業内ベンチャーに限らず、若きチャレンジャーたちが何度も挑戦できる環境を官民協力のもとに整え、スモールビジネスを大きく育成していくことが求められる。国の研究機関や大学の知見をもっと実業に活用できるよう情報の共有化を推進し、スタートアップ事業の拠点も強化することだ。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)
4/8(月) 6:04配信 現代ビジネス
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
東京圏そのものを「特区」とする
第5の視点は、人口減少日本において、しばらくは独自の課題を抱える東京圏という「外国」に対して行おう。東京圏はいわば、「3500万人の巨大都市国家」となる。ならば、名実ともに外国とすべく、東京圏そのものを「特区」としてしまうことだ。
例えば、地方との間で人や物が移動した場合には関税のように負担を求め、それで得られた収入を地方の社会基盤を作り替えるための財源として充てるぐらいの大胆な構造的変化をつけるのもよいかもしれない。
東京圏を「巨大都市国家」としてとらえるならば、東京圏を除く「地方」は“取引の相手国”のような位置づけとなる。「巨大都市圏」から見た場合に、どう見えるのかという視点が重要になる。
東京圏から「地方」を見れば、若者が減って行くので、多様な人材を集めてきたこれまでのスタイルは維持できなくなる。国内マーケットは縮み、高齢化によって消費者の嗜好も消費量も変わっていくので、国内マーケットを主軸にしてきた企業は成り立たなくなる。
こうした条件下で東京圏が日本経済の推進エンジンを担い続けようとするなら、これまで以上に海外マーケットに活路を求めざるを得ないだろう。
すると、国際競争力の強化策が急務となる。いまや、東京に支社を置いていた外国企業の多くが北京やシンガポールなどに拠点を移してしまった。グローバル企業が日本法人ではなく、極東支社を置くくらいにならなければ優秀な外国人人材も招き入れられない。
こうした状況を打破するためにも、まず行うべきは成長分野の企業が集積するエリアを定め、そこを中心に大胆な規制緩和を徹底することだ。許認可等の手続きをできる限り簡素化し、通信インフラを含めた基盤整備を早期に実現する必要がある。
政府は先端技術を活用した「ソサエティ5.0」を打ち出している。先に、最先端技術を活用した「スーパーシティ」構想を取り上げたが、これこそ、効果が見通せぬ地方創生のための政策として展開するのではなく、特区と化した東京圏で“夢の国”の如く実現させたらどうか。
東京圏の中にエリアを決めて、最先端医療やアニメーションなど日本が得意とする分野の集積地とするのも方策だ。外国資本や人材の呼び込みができないようでは国際競争において東京圏に“勝ち目”はない。
コンソーシアムを形成する
写真:現代ビジネス
一方、若い人材が減っていく状況への対応策としては、各企業がそれぞれの「強み」を持ち寄ってイノベーションにつなげたり、商品開発につなげたりする企業間連携を築く発想も求められる。
すでに一部の企業では動きもあるが、いくつもの異業種企業がコンソーシアムを形成し、各社が優秀な社員をメンバー登録してプロジェクトチームを結成する。
コンソーシアムの運営組織が、企業間連携の橋渡し役を務める。少子化で若き優秀な日本人の人材は限られてくる。とはいえ、簡単に外国から招き入れられるわけでもない。“奪い合う”よりも“出し合う”ことで人材不足を補うだけでなく、イノベーションを促進し、あるいは新たな成長分野を切り開いていけるような受け皿づくりも推進する。個々で戦うのもよいが、可能な限り「3500万人の巨大都市国家」としての勝利を目指すことである。
次代の日本をにらんだ布石打ちも必要だ。日本はユニコーン企業が誕生しづらい国と言われてきたが、大企業はもっと企業内ベンチャーやスタートアップ企業づくりを積極的に仕掛けることだ。
日本でなかなか起業が進まないのは、そもそもの挑戦者が少ない、ベンチャーキャピタルの不在など数多くの理由が存在するが、まず法律で規制し、その後で民間参入を許可するという政府の姿勢が崩れないことにもある。法整備には時間を要するため、その間にどんな素晴らしいアイデアでも腐ってしまう。
大企業の企業内ベンチャーに限らず、若きチャレンジャーたちが何度も挑戦できる環境を官民協力のもとに整え、スモールビジネスを大きく育成していくことが求められる。国の研究機関や大学の知見をもっと実業に活用できるよう情報の共有化を推進し、スタートアップ事業の拠点も強化することだ。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)