国家がデータを改竄するということ
過去および現在の他国の政府でも、様々な統計が改竄されてきたという風説(かなり現実見は高い)があるが、その様な国家は、旧ソ連の様に、崩壊して来たといえる。
考えてみれば、犯罪者が自らの罪状を隠す目的を持って、証拠隠滅を図るのと基本的に同じで、国家にしても組織にしても、改竄や捏造、破棄したことにするという行為は、自らの立場の悪化を防ぐ、都合の悪い真実を隠すと云う、およそ民主主義とは相容れない行為だろう。
そして、恐ろしいのは、公権力を有した国家の犯罪は、法務省、検察、警察と云った、国家権力機関を擁しているが故、ほとんど裁き様がないとい宿命を持つことだろう。そのため、法令とか行政の仕組みに、予めそれらのことを想定し、不正の根源が芽生えることがない様に留意はされてきたのだが、権力者はある時は、その様な仕組みを矯正してまで、都合の良いものとしてしまうことだろう。
こういうことを防ぐには、ひたすら透明性を高め、国民の情報開示とか説明要求に対し、とことん説明責任を果たしていく他ないのだが、特に国家機関の不正は、国家という最大権力の上に居るだけに、ほとんどなし崩しになされてしまい、時を経て忘れ去られてしまうのだろう。
ただ、間違いなく云えることは、国家が改竄を行うと云うことは、その国家のポテンシャルに陰りが出ていることを示すものであり、その改竄により、本来の姿を覆い隠すことで、ポテンシャル低下を加速する働きを持つことだけは確かだろう。
このことは、一般の犯罪者についても同じことで、初犯はさもない動機で始めたことで、大した証拠もなく疑いを持たれることもなく過ぎてしまう。ところが、薬物中毒と似て、そこに逃げ込む手法に味をしめた犯罪者は、次から次へと犯罪をスケールアップし続け、都度適当ないい訳をして、何とか司直の追求から逃れて行くのだが、それら言い訳に縛られ、言い訳の自由度は狭まりつつ、論理矛盾が生じることなどから、限界を迎えて断罪の時を迎えるということだろう。
近年の国家や企業、組織の不正事案は、全体幸福が一部既得権者の幸福に限定され、不幸福者が増加するという、不公平もしくは不公正な世になったことと無縁ではないだろうが、この不公平や不公正という真の要員までに言及されることはほとんどないし、その様な対策も取られぬまま、懺悔という形ばかりの情緒で済まされる。その先に控えるのは、国家、企業、組織の解体に他ならないのだろう。
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国交省の統計書き換え 水増しの全容解明急げ(コラム)
中国新聞 2021/12/18 6:41
国の政策立案や民間の意思決定に広く利用されている、特に重要な「基幹統計」の一つで、国土交通省が長年、データの改ざんを続けていた。
3年前、厚生労働省による統計不正が発覚し、50を超す基幹統計に問題がないか全てチェックしていたはずだ。厚労省に国交省と不正が後を絶たないようでは、政府の統計全体への国際的な信頼が損なわれてしまう。看過できない。政府は全容解明を急がなければならない。
国交省の不適切な処理は「建設工事受注動態統計調査」で行われていた。国が抽出した全国約1万2千の建設業者に毎月、受注実績を調査票に書いてもらい、それを都道府県が回収。国交省が建設業界全体の数値として、まとめている。
調査票を数カ月分まとめて出す業者がいた場合、国交省は都道府県の担当者に書き換えさせていた。業者が書いた各月の実績を消しゴムや修正テープで消し、提出月の欄に、数カ月分を合算した実績を鉛筆で書くよう指示していた。いつ始まったのか明らかではないが、年間で1万件程度に上ったという。
2013年度からは、毎月の集計で回答がなかった業者の金額は全体の受注額から推計して計上していた。同じ業者の受注額が一部「二重計上」となり、公表額は実態より水増しされ、国内総生産(GDP)算出などに影響した恐れがある。
政府は「GDPへの影響は現時点では軽微だと考える」という。誰かを殴って負傷させた後、けがは軽いと開き直っているようなものではないか。
業者の記入した生データに無断で手を加えさせたのは、改ざんと言えよう。狙いはGDPの水増しではないか、との疑念を持たれても不思議ではない。
国交省はしかも、水増しを改める機会を自ら放棄していた。書き換え指示を会計検査院が知り、19年11月に問題だと指摘。それを受けて国交省は20年1月以降は都道府県への指示をやめた。にもかかわらず、今年3月まで国交省の職員が自ら書き換えと二重計上を続けていた。公表もしておらず、隠蔽(いんぺい)と言われても仕方あるまい。
斉藤鉄夫国交相は国会で「従来の手法との連続性を図っており、統計上意味があった」と釈明した。しかし水増しデータの比較にどんな意味があるのか。都道府県にはさせられない作業を、なぜ国交省が1年以上も続けたのか。疑問は尽きない。
基幹統計について定めた統計法では、作成に必要な事項について報告を求められれば、個人や団体は拒めず違反には罰則もある。正確なデータにはそれほど重い意味があると言えよう。
客観データや科学的知見に基づかない政策を打ち出せば、混乱を招いたり無駄遣いになったりしかねない。昨年の突然の一斉休校騒ぎや「アベノマスク」を思い出せば明らかだろう。為政者や幹部官僚の思いつき施策の愚を繰り返してはならない。
岸田文雄首相は、今回の問題の経緯や理由を調べるため、統計の専門家や検察OB、弁護士らを含めた第三者委員会を設けるよう指示した。「二重計上」は誰の指示で始まったのか。3年前の総点検でなぜ見過ごされたのか。洗いざらい明らかにしなければ、行政や政治への信頼を取り戻すことはできない。
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過去および現在の他国の政府でも、様々な統計が改竄されてきたという風説(かなり現実見は高い)があるが、その様な国家は、旧ソ連の様に、崩壊して来たといえる。
考えてみれば、犯罪者が自らの罪状を隠す目的を持って、証拠隠滅を図るのと基本的に同じで、国家にしても組織にしても、改竄や捏造、破棄したことにするという行為は、自らの立場の悪化を防ぐ、都合の悪い真実を隠すと云う、およそ民主主義とは相容れない行為だろう。
そして、恐ろしいのは、公権力を有した国家の犯罪は、法務省、検察、警察と云った、国家権力機関を擁しているが故、ほとんど裁き様がないとい宿命を持つことだろう。そのため、法令とか行政の仕組みに、予めそれらのことを想定し、不正の根源が芽生えることがない様に留意はされてきたのだが、権力者はある時は、その様な仕組みを矯正してまで、都合の良いものとしてしまうことだろう。
こういうことを防ぐには、ひたすら透明性を高め、国民の情報開示とか説明要求に対し、とことん説明責任を果たしていく他ないのだが、特に国家機関の不正は、国家という最大権力の上に居るだけに、ほとんどなし崩しになされてしまい、時を経て忘れ去られてしまうのだろう。
ただ、間違いなく云えることは、国家が改竄を行うと云うことは、その国家のポテンシャルに陰りが出ていることを示すものであり、その改竄により、本来の姿を覆い隠すことで、ポテンシャル低下を加速する働きを持つことだけは確かだろう。
このことは、一般の犯罪者についても同じことで、初犯はさもない動機で始めたことで、大した証拠もなく疑いを持たれることもなく過ぎてしまう。ところが、薬物中毒と似て、そこに逃げ込む手法に味をしめた犯罪者は、次から次へと犯罪をスケールアップし続け、都度適当ないい訳をして、何とか司直の追求から逃れて行くのだが、それら言い訳に縛られ、言い訳の自由度は狭まりつつ、論理矛盾が生じることなどから、限界を迎えて断罪の時を迎えるということだろう。
近年の国家や企業、組織の不正事案は、全体幸福が一部既得権者の幸福に限定され、不幸福者が増加するという、不公平もしくは不公正な世になったことと無縁ではないだろうが、この不公平や不公正という真の要員までに言及されることはほとんどないし、その様な対策も取られぬまま、懺悔という形ばかりの情緒で済まされる。その先に控えるのは、国家、企業、組織の解体に他ならないのだろう。
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国交省の統計書き換え 水増しの全容解明急げ(コラム)
中国新聞 2021/12/18 6:41
国の政策立案や民間の意思決定に広く利用されている、特に重要な「基幹統計」の一つで、国土交通省が長年、データの改ざんを続けていた。
3年前、厚生労働省による統計不正が発覚し、50を超す基幹統計に問題がないか全てチェックしていたはずだ。厚労省に国交省と不正が後を絶たないようでは、政府の統計全体への国際的な信頼が損なわれてしまう。看過できない。政府は全容解明を急がなければならない。
国交省の不適切な処理は「建設工事受注動態統計調査」で行われていた。国が抽出した全国約1万2千の建設業者に毎月、受注実績を調査票に書いてもらい、それを都道府県が回収。国交省が建設業界全体の数値として、まとめている。
調査票を数カ月分まとめて出す業者がいた場合、国交省は都道府県の担当者に書き換えさせていた。業者が書いた各月の実績を消しゴムや修正テープで消し、提出月の欄に、数カ月分を合算した実績を鉛筆で書くよう指示していた。いつ始まったのか明らかではないが、年間で1万件程度に上ったという。
2013年度からは、毎月の集計で回答がなかった業者の金額は全体の受注額から推計して計上していた。同じ業者の受注額が一部「二重計上」となり、公表額は実態より水増しされ、国内総生産(GDP)算出などに影響した恐れがある。
政府は「GDPへの影響は現時点では軽微だと考える」という。誰かを殴って負傷させた後、けがは軽いと開き直っているようなものではないか。
業者の記入した生データに無断で手を加えさせたのは、改ざんと言えよう。狙いはGDPの水増しではないか、との疑念を持たれても不思議ではない。
国交省はしかも、水増しを改める機会を自ら放棄していた。書き換え指示を会計検査院が知り、19年11月に問題だと指摘。それを受けて国交省は20年1月以降は都道府県への指示をやめた。にもかかわらず、今年3月まで国交省の職員が自ら書き換えと二重計上を続けていた。公表もしておらず、隠蔽(いんぺい)と言われても仕方あるまい。
斉藤鉄夫国交相は国会で「従来の手法との連続性を図っており、統計上意味があった」と釈明した。しかし水増しデータの比較にどんな意味があるのか。都道府県にはさせられない作業を、なぜ国交省が1年以上も続けたのか。疑問は尽きない。
基幹統計について定めた統計法では、作成に必要な事項について報告を求められれば、個人や団体は拒めず違反には罰則もある。正確なデータにはそれほど重い意味があると言えよう。
客観データや科学的知見に基づかない政策を打ち出せば、混乱を招いたり無駄遣いになったりしかねない。昨年の突然の一斉休校騒ぎや「アベノマスク」を思い出せば明らかだろう。為政者や幹部官僚の思いつき施策の愚を繰り返してはならない。
岸田文雄首相は、今回の問題の経緯や理由を調べるため、統計の専門家や検察OB、弁護士らを含めた第三者委員会を設けるよう指示した。「二重計上」は誰の指示で始まったのか。3年前の総点検でなぜ見過ごされたのか。洗いざらい明らかにしなければ、行政や政治への信頼を取り戻すことはできない。
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