そもそも論だが、事故の真実を把握するには、運転者とか目撃者が存在したとして、それらの証言だけに頼ることは、甚だ問題を生じる場合があり得る。これは、運転者なら、そもそも自らの落ち度を軽減しようと図る場合もあり得るだろう。もしくは目撃者の場合も含めてだが、事故は極短時間の一瞬の中で生じる事象で、その一連の動きは衝突実験装置による超高速度カメラでしか捉えられない様な挙動を生む場合も多いから(認知の限界を超える)、俄には信用しがたい場合も出てくるからだ。このことは、刑法上の罰を訴求する警察だとか、民事賠償とか損害保険の認定に携わる者は絶えず意識していなければならないだろう。ということで、これらの者には、単に関係者が述べる証言だけに頼らず、車両や道路などに残された純物理的な現象を前提として事故の再現という視点での考察が求められているはずだが、自己経験からは不足しがちなことと思える。
また、損害保険の車両調査を行う者(いわゆるアジャスター)には、その規則(アジャスター規則)において、業務内容を「保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認並びにそれらに付随する業務を行なう。」と規定している。これは非常に判り難い文意かつ中途半端なものと感じ続けて来た。端的に云って、損害保険の調査を行う者は、損害額の調査を行えばことが済むと思っていたとしたら大間違いであって、その事故が実際どういう事故であったのか、そして様々な保険の請求要件に照らして、真性間違いなく「偶然外来」の事故であるのかを見つめることが肝要と考えている。そのためには、ある一瞬の事故が、スローモーションのごとく再現できなければならないと信じているのだ。それによって、この事故は、偶然外来生が低いとか、そもそも故意性が高いとか、過失割合においても常軌を逸した速度や対応で運行していた等の、事故の客観的な事実関係が見えて来るというものだろう。そんな思いを持ち続け、一つの事故を眺めることを繰り返して来たのだが、果たして現代の損害保険調査員たるアジャスターに、その様な意識が皆無とはいえないまでも、不足しているんじゃないだろうかかと感じる機会は多い。
そんなことを思いつつ、Fasebookで見つけた、米コロラド州の事故現場写真を元に、事故の再現に挑んでみたい。
この米コロラド州の事故だが、車両はタコマ(日本名ハイラックス)ダブルキャブピックアップトラックの転覆事故で、下記のFasebookアドレスで見たものだ。場所は米コロラド州、サンミゲル郡、ハイウェイ146号線、プラザビルの西1マイル(1.6K)と記されている。記事には、同トラックは、推定100mph(160km/h)で崖の側面(のり面)に乗り上げて事故したとか記してあるが、ハイラックスで100mphはやっと出せる限界的な速度だろうとも思える。
このどうやら車両単独の転覆事故だが、面白いなと思うのは、ほぼ原形を留めている運転台(キャブ)と車体本体(フレーム)は分離している。キャブは横転した形跡もなく正立しているが、フレームは180度転覆し裏がえしになってしまっている。その他、写真からの注目点は以下の様なところだろう。
①キャブ全部は、前部を中心に大破している様だが、開いたボンネットは比較的小変形なことから、事故の着力点は車両の下方にあることを伺わせる。
②ボンネットが90度垂直に突っ立っているが、同様機能を持ったベンツでもないし正規の開口角を大幅に超えている。これが事故が原因だとすると、何がその様な作用を及ぼしたのか?
③キャブの後下部左右の大きな凹損が観察されるが、どうして生じたのだろうか?
④転覆した車体フレームと後部荷台だが、左後部のバンパーや割損して脱落してしまっているテールランプ付近に入力があり、左後部側面にその損傷波及としての凹損と、さらに擦過痕が観察される。凹損と擦過キズの順序はどうか?
⑤同じく後部荷台だが、全体に上下に圧縮される様な変形を生じているが、何がこの様な変形を生じさせたのか?
⑥エンジン・トランスミッションは、ほぼ元の位置付近にあるが、その搭載角度は恐ろしくトランスミッション後端部を移動させ、転覆した路面に後端部が接触している。つまり、トランスミションを支えるリヤマウントは切断されているのだろう。この、トランスミションの移動が要因だろうが、プロペラシャフト前端スリーブ部は抜け落ちている。としても、写真から判読し難いところもあるが、トランスミッションの傾斜角とエンジンの傾斜角が一致しない様も見える。エンジンとトランスミッション間(コンバーターハウジング部)で破壊が起きている様にも想像される。
⑦車輪は4本すべて付いているが、右前輪が大きく後退して、フレームのキャブマウント用ハンガー部に強く押し付けられている。また、左前輪と比べ、転覆でフルリバウンドしているが、高さが低く見える。サスペンションアームの変形だけの問題でないかもしれない。
結論
今回事故では、私自身が実車および事故現場も含め調査した訳ではなく、Net情報から得られた情報からだけの判断なので、不足する情報も多く結論は出せない。しかし、先に上げた程度の疑問点が浮かんで来ない調査担当者が居たとしたら、甚だ心許ない調査人であると私は断定せざるを得ない。なお、シャシフレームとボデーが引き剥がされる様な事故は、今回事故以外にもあり得ることだろうが、今回のタコマに格別その様な事故が多いという裏付けはなく、車両の欠陥という問題は除外して考えてしかるべきだろう。
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※オリジナル情報アドレス
San Miguel County Sheriff(米サンミゲル郡・保安官) 3月25日
https://www.facebook.com/sanmiguelcountysheriff/posts/2762032453833518
また、損害保険の車両調査を行う者(いわゆるアジャスター)には、その規則(アジャスター規則)において、業務内容を「保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認並びにそれらに付随する業務を行なう。」と規定している。これは非常に判り難い文意かつ中途半端なものと感じ続けて来た。端的に云って、損害保険の調査を行う者は、損害額の調査を行えばことが済むと思っていたとしたら大間違いであって、その事故が実際どういう事故であったのか、そして様々な保険の請求要件に照らして、真性間違いなく「偶然外来」の事故であるのかを見つめることが肝要と考えている。そのためには、ある一瞬の事故が、スローモーションのごとく再現できなければならないと信じているのだ。それによって、この事故は、偶然外来生が低いとか、そもそも故意性が高いとか、過失割合においても常軌を逸した速度や対応で運行していた等の、事故の客観的な事実関係が見えて来るというものだろう。そんな思いを持ち続け、一つの事故を眺めることを繰り返して来たのだが、果たして現代の損害保険調査員たるアジャスターに、その様な意識が皆無とはいえないまでも、不足しているんじゃないだろうかかと感じる機会は多い。
そんなことを思いつつ、Fasebookで見つけた、米コロラド州の事故現場写真を元に、事故の再現に挑んでみたい。
この米コロラド州の事故だが、車両はタコマ(日本名ハイラックス)ダブルキャブピックアップトラックの転覆事故で、下記のFasebookアドレスで見たものだ。場所は米コロラド州、サンミゲル郡、ハイウェイ146号線、プラザビルの西1マイル(1.6K)と記されている。記事には、同トラックは、推定100mph(160km/h)で崖の側面(のり面)に乗り上げて事故したとか記してあるが、ハイラックスで100mphはやっと出せる限界的な速度だろうとも思える。
このどうやら車両単独の転覆事故だが、面白いなと思うのは、ほぼ原形を留めている運転台(キャブ)と車体本体(フレーム)は分離している。キャブは横転した形跡もなく正立しているが、フレームは180度転覆し裏がえしになってしまっている。その他、写真からの注目点は以下の様なところだろう。
①キャブ全部は、前部を中心に大破している様だが、開いたボンネットは比較的小変形なことから、事故の着力点は車両の下方にあることを伺わせる。
②ボンネットが90度垂直に突っ立っているが、同様機能を持ったベンツでもないし正規の開口角を大幅に超えている。これが事故が原因だとすると、何がその様な作用を及ぼしたのか?
③キャブの後下部左右の大きな凹損が観察されるが、どうして生じたのだろうか?
④転覆した車体フレームと後部荷台だが、左後部のバンパーや割損して脱落してしまっているテールランプ付近に入力があり、左後部側面にその損傷波及としての凹損と、さらに擦過痕が観察される。凹損と擦過キズの順序はどうか?
⑤同じく後部荷台だが、全体に上下に圧縮される様な変形を生じているが、何がこの様な変形を生じさせたのか?
⑥エンジン・トランスミッションは、ほぼ元の位置付近にあるが、その搭載角度は恐ろしくトランスミッション後端部を移動させ、転覆した路面に後端部が接触している。つまり、トランスミションを支えるリヤマウントは切断されているのだろう。この、トランスミションの移動が要因だろうが、プロペラシャフト前端スリーブ部は抜け落ちている。としても、写真から判読し難いところもあるが、トランスミッションの傾斜角とエンジンの傾斜角が一致しない様も見える。エンジンとトランスミッション間(コンバーターハウジング部)で破壊が起きている様にも想像される。
⑦車輪は4本すべて付いているが、右前輪が大きく後退して、フレームのキャブマウント用ハンガー部に強く押し付けられている。また、左前輪と比べ、転覆でフルリバウンドしているが、高さが低く見える。サスペンションアームの変形だけの問題でないかもしれない。
結論
今回事故では、私自身が実車および事故現場も含め調査した訳ではなく、Net情報から得られた情報からだけの判断なので、不足する情報も多く結論は出せない。しかし、先に上げた程度の疑問点が浮かんで来ない調査担当者が居たとしたら、甚だ心許ない調査人であると私は断定せざるを得ない。なお、シャシフレームとボデーが引き剥がされる様な事故は、今回事故以外にもあり得ることだろうが、今回のタコマに格別その様な事故が多いという裏付けはなく、車両の欠陥という問題は除外して考えてしかるべきだろう。
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※オリジナル情報アドレス
San Miguel County Sheriff(米サンミゲル郡・保安官) 3月25日
https://www.facebook.com/sanmiguelcountysheriff/posts/2762032453833518