私の思いと技術的覚え書き

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官僚達の夏の時代

2018-04-20 | コラム
 「官僚達の夏」は城山三郎氏(故人)の1975年に出版した、ある程度事実に基づいた小説作品だ。国の行き先を憂い、活躍する通産官僚の活躍を描くという、今では考え難い内容だ。作者の城山氏も晩年、官僚の堕落ぶりを嘆き続けていた。もしかすると官僚賛歌たる本作を書いたことを後悔していたのかもしれない。

 さて、物語の中では、特振法という貿易自由化に対応するため日本の産業を整理統合する法案作りに没頭するが結果としては廃案となる。しかし、この法案作りの背景には、反発奮闘したり、通産省に促されて吸収合併の憂き目に遭った自動車メーカーもあったのである。そのことを、今回は記してみたい。

 1つはホンダだ。未だ4輪車を発売しておらず、既存の4輪メーカー以外は新規参入が困難になるとの切迫感の中、宗一郎氏は連日の様に通産省に直談判に出かけると共に、少しでも早く既成事実を作るべく、S用ツインカムエンジンを搭載した軽トラックT360を販売開始したのだ。

 もう一つはプリンス自動車の日産自動車への吸収合併だ。プリンス自動車はトヨタ、日産に次ぐ第3位の自動車メーカーであったが、その技術力には抜き出たものがあった。だからこそ、皇室御用達の御料車を製造委託について、トヨタ、日産を押しのけ、その受託を受けることになったのだ。なお、御料車の納車は合併後となり、日産自動車となるが、間違いなくプリンス自動車の作品である。しかし、プリンス自動車は中高級乗用車中心で、大衆車を持たぬが故に、その経営基盤は盤石とは云えなかった様だ。そこで、通産省の肝いりもあり、日産自動車の吸収合併を飲まざるを得なかったということだろう。しかし、その後の日差の凋落も著しく、日産の企業規模の縮小均衡という流転の中、プリンス時代の工場で残存しているものはない。

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