壁に向かってゴムボールを投げつけます。ボールが壁に衝突する速度を1とすれば、ほぼ1の速度でボールは跳ね返って来るでしょう。一方、粘土を壁に向かって投げつけてみます。粘土は、衝突速度に関係なく、壁にグチャと潰れて、そのまま真下に落下することでしょう。この様な、衝突速度とその後の跳ね返りの速度の比を、反発係数と呼び、先のボールの様な場合を1、粘土のような場合を0と表します。
さて、本論ですが、クルマの衝突における反発係数は、どの程度になるのでしょうか? 衝突テストにおけるフルラップ・リジットバリア50km/hテストの場合は、衝突後のバリヤと停止した車両の間隔は長くても1mも離れていないことが判ります。一方、オフセット・デフォーマブルバリヤ55km/hテストでは、車両は飛び跳ねる様に右方向(右前部を衝突させる右ハンドル車場合)に回転します。そして、バリヤに対して90度程度も角度が付いた状態で、フルラップバリヤの場合より離れた位置で停止することが見て取れます。
オフセット・バリヤテストの場合、車両重心位置と離れた部位に入力しますから、車両には重心位置と受圧位置の長さを腕とするモーメント(回転力)を受けます。それにより、跳ね返るというより、振り回され飛ばされるという感じで、フルラップテストより離れた位置で停止することが判ります。
一方、あまり見る機会はないのかもしれませんが、時速8km/h(5マイル)という低速度でフルラップ・バリヤテストを行った場合、衝突後の車両はゆっくりと後退し、5m以上もバリヤから離れて停止することが判ります。
以上のことから、先のクルマの反発係数はどの程度かという答えは、極低速では1に近づき、一定以上高速では0に近づくということが理解されます。このことは、弾性と塑性という性質からも説明できることです。極低速の衝突では、樹脂バンパや金属部分の変形量も極小さく、弾性限度内でスプリングとしての効果を生みます。一方、高速衝突では変形量が大きく、弾性限度を遙かに超える塑性変形として、スプリングとしての効果は生まれないということです。すなわち、一定以上の高速(30km/h以上)では、クルマの衝突における反発係数は0に近く、ほぼ粘土の衝突であると云えるのです。
追記
本文中に5マイルでのバリヤ衝突の話を記しましたが、米国でのFMVSS(連邦自動車安全基準:日本の保安基準に相当)で一時期5マイルバンパー基準というものがありました。すなわち5マイルでの衝突において、バンパー以外の車体本体に損傷が生じないことを問う規制だったのです。この基準で作られたバンパーは、日本車でも一時期採用車がありました。その構造は、バンパー表皮が柔軟性を持ったウレタンバンパーであり、内部のエネルギー吸収体、そしてバンパー全体を受け止める高い強度を持たせたリインフォースメント、それと車体との結合にショックアブソーバーを介したものでした。と云うことで、車両重量としても重くならざるを得ませんでした。
この5マイルバンパーは、これぞバンパー(緩衝器)」と云うものでしたが、その後のCAFE(米国燃費規制)などの省エネルギーへの要請と共に、衝突速度2.5マイル(4km/h)への規制へとダウンレートされたのでした。
さて、本論ですが、クルマの衝突における反発係数は、どの程度になるのでしょうか? 衝突テストにおけるフルラップ・リジットバリア50km/hテストの場合は、衝突後のバリヤと停止した車両の間隔は長くても1mも離れていないことが判ります。一方、オフセット・デフォーマブルバリヤ55km/hテストでは、車両は飛び跳ねる様に右方向(右前部を衝突させる右ハンドル車場合)に回転します。そして、バリヤに対して90度程度も角度が付いた状態で、フルラップバリヤの場合より離れた位置で停止することが見て取れます。
オフセット・バリヤテストの場合、車両重心位置と離れた部位に入力しますから、車両には重心位置と受圧位置の長さを腕とするモーメント(回転力)を受けます。それにより、跳ね返るというより、振り回され飛ばされるという感じで、フルラップテストより離れた位置で停止することが判ります。
一方、あまり見る機会はないのかもしれませんが、時速8km/h(5マイル)という低速度でフルラップ・バリヤテストを行った場合、衝突後の車両はゆっくりと後退し、5m以上もバリヤから離れて停止することが判ります。
以上のことから、先のクルマの反発係数はどの程度かという答えは、極低速では1に近づき、一定以上高速では0に近づくということが理解されます。このことは、弾性と塑性という性質からも説明できることです。極低速の衝突では、樹脂バンパや金属部分の変形量も極小さく、弾性限度内でスプリングとしての効果を生みます。一方、高速衝突では変形量が大きく、弾性限度を遙かに超える塑性変形として、スプリングとしての効果は生まれないということです。すなわち、一定以上の高速(30km/h以上)では、クルマの衝突における反発係数は0に近く、ほぼ粘土の衝突であると云えるのです。
追記
本文中に5マイルでのバリヤ衝突の話を記しましたが、米国でのFMVSS(連邦自動車安全基準:日本の保安基準に相当)で一時期5マイルバンパー基準というものがありました。すなわち5マイルでの衝突において、バンパー以外の車体本体に損傷が生じないことを問う規制だったのです。この基準で作られたバンパーは、日本車でも一時期採用車がありました。その構造は、バンパー表皮が柔軟性を持ったウレタンバンパーであり、内部のエネルギー吸収体、そしてバンパー全体を受け止める高い強度を持たせたリインフォースメント、それと車体との結合にショックアブソーバーを介したものでした。と云うことで、車両重量としても重くならざるを得ませんでした。
この5マイルバンパーは、これぞバンパー(緩衝器)」と云うものでしたが、その後のCAFE(米国燃費規制)などの省エネルギーへの要請と共に、衝突速度2.5マイル(4km/h)への規制へとダウンレートされたのでした。