トヨタ・レーザースクリューウェルディング
トヨタが2012年に開発した(たぶん特許済み)のトヨタ・レーザースクリューウェルディング(略称LSW)だが、従来のクルマの鋼板(もしくはアルミ板)の接合法として最も多用されてきた、スポット溶接に変わるものだ。
従来のスポット溶接の概念を図1に示すが、通電して大電流を流すことで発熱して鉄を溶接できるものだが、電流、通電時間、加圧保持という3要件が必要なこともあり、1点当たりの時間を要す。また、強度を上げようとスポット間隔を接近しすぎると無効分流が多くなり、溶接品質の劣化を生じるという欠点があった。
この問題をLSWではロボットでレーザー光を円形に高速照射することで、極短時間にスポットより、より密度の高い溶接間隔が実現できるというものだ。LSW1点当たりの所要時間は 0.2~0.8秒と、従来スポットより大幅に短縮していると云う。また、パネルの袋状部などで従来のスポット溶接だと、片面スポットという技術はあったが、どうしても溶接強度が低下しがちなので、溶接工程を電極の入る手法に工夫してきたが、LSWでは片面からの接合で、まったく強度的な劣化はない。
なお、レーザー光による溶接は、国内でも、テーラードブランク(部位別に板厚が異なる鋼板)間の高品質接合などに利用されて来ていたが、これはMIGなどと同様の連続溶接(線溶接)だ。ドイツVW社などは、このレーザー線溶接を大幅に取り入れているらしい。
なお、その中にはレーザーブレージング(ろう付け)というのも開発されている。これは同社のルーフとルーフサイドアウターとの連続接合に採用されており、同工法で接合されたルーフには接合カ所を隠すモールがない。ただし、これは、現在のサイドアウターパネルがABCピラーの一体式以前のクォーターパネル上部でアークブレージング(MIG溶接様にブレージングろう材が自動供給されるもの)が行われていたが、最終仕上げでサイダーリングが必用などのネックがあった。VWのルーフアークブレージングも、ロボットでのサンダリングを経て、塗装工程に廻るのだと想像するが、タクト工数としては有利とは云えない様に思える。
なお、アフターリペアとしての補修工程となると、同ブレージングを剥がす作業は、後のパテ付け整形処理などから膨大な工数が予想され、採用メーカーでは(VWの他ホンダ)では、同ブレージング部を避け近接部位での接着工法を修理書に記載している。
LSWの話しに戻るが、トヨタではLSW採用で接合点数を30%アップすることで、ボデー剛性(主に捻り剛性だと推察)を60%アップしたと述べている。(あくまでトヨタの主張)
なお、LSWの補修だが、補修用のレーザービーム溶接機というのは市販されていない、これはレーザーの世界的な安全規格の問題もあり、将来的にもないのではないかと思える。そこで、補修の場合の、切り離しは従来のスポットカッター(ドリルの切削面が平面状で中央のピーク部だけが横滑りしない様に突き出した形状のキリ)で行うのだが、近年の超高張力鋼(主にサイドパネルの中間に挿入されるリインホースメント材などに多用)には、あっと云う間に旧来のスポットカッターが鈍ってしまうという問題がある。超高張力対応のスポットカッターも市販されているが、高額でなおかつ専用の研ぎ機が必用とか種々問題は多いところだ。
また、新部品の取付については、新部品の該当部予め穴(8Φ前後程度)を開けておき、その穴を埋める様にMIGトーチを円形に動かして行う俗称プラグ溶接という工法を取る必用がメーカー修理書では案内されている。このプラグ溶接の場合、ある程度盛り上がりだとかスパッタも付着するので、サンダーリングおよびポリパテ付の仕上げを要するので、スポット溶接より大幅に工数は増す要素が多い。
【参考Youtube LSW工程動画】
レーザースクリューウェルディング
https://www.youtube.com/watch?v=v93MZXeFN5E
39,863 回視聴 トヨタ自動車
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、2011年3月に策定した「トヨタグローバルビジョン」に基づき、「持続的に成長し続ける企業」を目指し、「もっといいクルマづくり」に向けた取り組みを進めている。
※コメント:溶接ロボットの動きの速さに驚かされる。なお、この前工程(タクト)にて、予め精密ジグで位置合わせした後、仮固定のスポット溶接をまばらに行い、パネル間の密着を高めた上で、本LSW工程となるのだと想定される。
#トヨタ LSW
トヨタが2012年に開発した(たぶん特許済み)のトヨタ・レーザースクリューウェルディング(略称LSW)だが、従来のクルマの鋼板(もしくはアルミ板)の接合法として最も多用されてきた、スポット溶接に変わるものだ。
従来のスポット溶接の概念を図1に示すが、通電して大電流を流すことで発熱して鉄を溶接できるものだが、電流、通電時間、加圧保持という3要件が必要なこともあり、1点当たりの時間を要す。また、強度を上げようとスポット間隔を接近しすぎると無効分流が多くなり、溶接品質の劣化を生じるという欠点があった。
この問題をLSWではロボットでレーザー光を円形に高速照射することで、極短時間にスポットより、より密度の高い溶接間隔が実現できるというものだ。LSW1点当たりの所要時間は 0.2~0.8秒と、従来スポットより大幅に短縮していると云う。また、パネルの袋状部などで従来のスポット溶接だと、片面スポットという技術はあったが、どうしても溶接強度が低下しがちなので、溶接工程を電極の入る手法に工夫してきたが、LSWでは片面からの接合で、まったく強度的な劣化はない。
なお、レーザー光による溶接は、国内でも、テーラードブランク(部位別に板厚が異なる鋼板)間の高品質接合などに利用されて来ていたが、これはMIGなどと同様の連続溶接(線溶接)だ。ドイツVW社などは、このレーザー線溶接を大幅に取り入れているらしい。
なお、その中にはレーザーブレージング(ろう付け)というのも開発されている。これは同社のルーフとルーフサイドアウターとの連続接合に採用されており、同工法で接合されたルーフには接合カ所を隠すモールがない。ただし、これは、現在のサイドアウターパネルがABCピラーの一体式以前のクォーターパネル上部でアークブレージング(MIG溶接様にブレージングろう材が自動供給されるもの)が行われていたが、最終仕上げでサイダーリングが必用などのネックがあった。VWのルーフアークブレージングも、ロボットでのサンダリングを経て、塗装工程に廻るのだと想像するが、タクト工数としては有利とは云えない様に思える。
なお、アフターリペアとしての補修工程となると、同ブレージングを剥がす作業は、後のパテ付け整形処理などから膨大な工数が予想され、採用メーカーでは(VWの他ホンダ)では、同ブレージング部を避け近接部位での接着工法を修理書に記載している。
LSWの話しに戻るが、トヨタではLSW採用で接合点数を30%アップすることで、ボデー剛性(主に捻り剛性だと推察)を60%アップしたと述べている。(あくまでトヨタの主張)
なお、LSWの補修だが、補修用のレーザービーム溶接機というのは市販されていない、これはレーザーの世界的な安全規格の問題もあり、将来的にもないのではないかと思える。そこで、補修の場合の、切り離しは従来のスポットカッター(ドリルの切削面が平面状で中央のピーク部だけが横滑りしない様に突き出した形状のキリ)で行うのだが、近年の超高張力鋼(主にサイドパネルの中間に挿入されるリインホースメント材などに多用)には、あっと云う間に旧来のスポットカッターが鈍ってしまうという問題がある。超高張力対応のスポットカッターも市販されているが、高額でなおかつ専用の研ぎ機が必用とか種々問題は多いところだ。
また、新部品の取付については、新部品の該当部予め穴(8Φ前後程度)を開けておき、その穴を埋める様にMIGトーチを円形に動かして行う俗称プラグ溶接という工法を取る必用がメーカー修理書では案内されている。このプラグ溶接の場合、ある程度盛り上がりだとかスパッタも付着するので、サンダーリングおよびポリパテ付の仕上げを要するので、スポット溶接より大幅に工数は増す要素が多い。
【参考Youtube LSW工程動画】
レーザースクリューウェルディング
https://www.youtube.com/watch?v=v93MZXeFN5E
39,863 回視聴 トヨタ自動車
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、2011年3月に策定した「トヨタグローバルビジョン」に基づき、「持続的に成長し続ける企業」を目指し、「もっといいクルマづくり」に向けた取り組みを進めている。
※コメント:溶接ロボットの動きの速さに驚かされる。なお、この前工程(タクト)にて、予め精密ジグで位置合わせした後、仮固定のスポット溶接をまばらに行い、パネル間の密着を高めた上で、本LSW工程となるのだと想定される。
#トヨタ LSW