約3年程前の私の横浜勤務時代の2年間、毎日の通勤の行き帰りに東海道新幹線を40分程乗車するという体験をしました。この新幹線という電車について若干記してみます。私が通勤乗車したのは「こだま」ですが、乗車期間では既に初代の0(ゼロ)系は退役済みであり、一部に100系とほとんどが300系で、少ないものの700系に乗車する機会もありました。(100系も私の横浜勤務中に退役となりました。)
この新幹線という列車は、室内は非常に静粛で乗り心地も良いものですが、やはり時代の進化に従って、300系より700系は抜群に静粛性を増しています。九州へ災害応援に行った際、500系にも乗車しましたが、静粛性と室内の広さで700系の方が明らかに優れていると感じました。なお、昨今登場のN700系という新型車両では、従来の700系をさらにバージョンアップし静粛性および乗り心地を改善している様です。
ところで、メカ好きな私として若干講釈を記してみます。300系以降の車両では、車両外板がアルミ合金製として軽量化がなされています。そして、駆動モーター(3相交流モーター)をVVVFインバーター制御で周波数を連続可変制御する方式となっています。また、減速時はモーターを発電機として使用して、電力を回生し架線を通して戻す方式としている様です。ところで、新幹線の乗り心地の大きな要素として、車両以前の問題としてレール路面の管理があります。あまり見掛けることはありませんが、黄色車体の6両編成の試験車両(ドクターイエローと呼ばれる)が、毎日の営業運行の終了後等に走行し、路面や架線の状態をモニタリングしているのです。そして、その結果を真夜中に行われる保守工事に反映しているのです。また、鉄道車両ではクルマと異なり鉄製車輪が使用されるのですが、通常列車では時々フラットスポットが発生しているらしく、列車速度に同期した異音(ゴトン、ゴトン音)を発している車両が経験されることがあります。しかし、2年間毎日の様に乗った新幹線でこの様なフラットスポット様の異音を感じたことはありませんでした。(希にモーター系の異音を発していることなどは経験しましたが。)この様な車輪のラジアルランアウト(真円度)補正も、通常列車以上に定期的に行っていることにより防いでいるのだと思います。
ところで、新幹線の車両は、日本車輌製造(豊川製作所)、川崎重工業(兵庫工場)、日立製作所(笠戸事業所)のほぼ3社で製造されています。先頭車両のエアロ形状の製作等は、結構に工数を要するところだと想像します。しかし、車両の側面は先に述べたとおりアルミ合金の押し出し材が採用されている様ですが、クルマに比べると平滑度が悪いのが気になります。塗装(多分ウレンタン塗料)も大してツヤのない塗装ですから遠目には目立ちはしませんが、近くで透かして見ると私には気になる仕上げだと感じられます。1両の長さが25m程度ありますから、平滑に仕上げるのは困難なのかもしれませんが、日本の優秀な工業製品として見た場合ちょっと残念です。大型観光バスで12m程度の車長で、サイドパネル外板はほとんど平滑化されていますから、もう少し何とかなるのではと感じられます。16両編成400mが速度300キロで走行する訳ですから、例え側面であっても空気抵抗に結構効いてくる様にも思われます。
追記
東海道新幹線は1964年(S39年)に開業しました。しかし、あまり知られていませんが、この「新幹線」というのは、太平洋戦争中にいわゆる「弾丸列車計画」というのがあって、そこで既に名付けられていた名称なのです。弾丸列車は、東京から下関までを最高速度200キロで9時間で走破するものを目指すものでした。そして、戦中の1940年に工事を着工していたのでした。その時、新丹那トンネルや日本坂トンネル(共に静岡県)も工事が開始されたのですが、戦局の悪化と共に工事は中断し計画は頓挫したのです。しかし、これらのトンネルは、新たな東海道新幹線として、そのまま再利用されたのです。ちなみに、静岡県田方郡函南町には「新幹線」という名称が残された地がありますが、これは東海道新幹線の開通前から存在していたのです。