黒川賭け麻雀問題だが、黒川の咎は、単なる「訓戒」(注意)であり、検察管という極刑たる死刑までの求刑を求められる絶大な権限を付与された国家官僚と比較すると、あまりに軽微過ぎるとう意見が沸き起こるのも当然だろう。
一方、擁護する意見として「仲間内の安価なものだから」などという意見がある。ここで引っ掛かるのが「仲間内」ということだ。つまり、検事と新聞屋は仲間内の関係であることが正常なものなのかということを思う。つまり、検事は自己の職務について厳重な守秘義務を課されているのであって、例え付きまとい顔見知りになった新聞屋といえども、捜査関連情報を漏らす様なことは許されるものではない。だからして、幾ら麻雀が好きだからと、新聞屋と一緒の卓を囲むこと自体が大きな倫理違反だろう。
また、新聞屋も、検事に付きまとうのは、何とか知古を得て、捜査の欠片でも得たいとの手柄を求めてというのが動機となると想像できる。
そんな、検事側の趣向と、それを受けた新聞屋の接待的な思いが合致したのが、今回の黒川事件の本質なのだろうと想像される。
新聞報道によると、黒川と新聞屋の賭け麻雀は、今次の5月の2回が初めてのものではなく、過去10年近い期間の中、月に2ないし3回の卓を囲んできたという。これは、明らかに常習性を示すものだろう。
ところで、黒川への咎めは訓戒で済まされた訳だが、今回の賭け麻雀を行っていた新聞屋は、サンケイ新聞2名、朝日新聞1名と報じられている。各新聞社で、どの様に社内処分がなされたのか気になり、それぞれ新聞屋の相談室から聴取してみた。その結果以下である。
サンケイ新聞
今のところ社内で処分の発表は聞いていません。困った問題で恥ずかしく思っています。
朝日新聞
処分は停職1ヶ月と公表されています。紙面にも陳謝していますとのことであった。当方より、そんなの見ちゃいないし、社長名で今後この様な不始末は一切許されないとの決意表明を行い給えと述べた。
ちなみに、今回事件が身内の山(事件)でなく、彼らの認識する社会正義を通そうとするものだとしたら、以下の様なストーリーを直ちに作り、それに合わせ別件も含めとことん深掘りし、立件して法律条文に決められた罪状で起訴することだろう。
ターゲット咎人Aと新聞屋B、C、Dは、Aから秘密情報を入手する目的を持って、B、C、Dは連携してAが麻雀好きだとしてアプローチし、恒常的に賭け麻雀を繰り返した。その中で、1回5、6時間におよぶ麻雀中の食事や飲料などの供応を繰り返しつつ、深夜の帰宅のタクシー(ハイヤー)の手配などを行い、都度その費用をB、C、Dの社費で負担していた。これらの関係を持つことで、Aの負い目を付くことで、B、C、Dの各新聞屋は情報を入手していたものである。
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第186条
常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
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常習性
判例・通説によれば、賭博を反復累行する習癖ある者を指し、必ずしも博徒又は遊人に限られない(最判昭和23年7月29日刑集2巻6号1067頁)。常習かどうかは賭博行為の内容、賭けた金額、賭博行為の回数、前科の有無などを総合的に判断して決せられる。
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黒川前検事長が新聞記者と賭け麻雀していた本当の理由
5/30(土) 20:03配信 webマガジン mi-mollet
東京高検の黒川弘務検事長が、産経新聞記者や朝日新聞社員と賭け麻雀をしていたという報道を受けて辞任しました。安倍政権は今年1月、安倍氏に近いとされる黒川検事長の定年を半年延長するという前代未聞の閣議決定を行いましたが、この閣議決定については違法ではないかとの指摘が相次ぎました。
このため安倍政権は3月に入って、検察官の定年引き上げや、内閣や法相が必要と認めた検察幹部については任期を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法の改正案を国会に提出し、事後的に黒川氏の定年延長にお墨付きを与える算段でした。ところがネットを中心に反対意見が続出したことから、結局は今国会での成立を断念しています。
安倍政権は次の国会での成立を望んでいましたが、ここで飛び出してきたのが、渦中の人物である黒川氏の賭け麻雀スキャンダルです。結局、黒川氏は検事長を辞任しましたから、安倍政権にとっては、目論見のすべてが瓦解してしまった格好です。
黒川氏は犯罪行為を行っていながら、辞任だけで済み、刑事処罰の対象にならないことについては多くの国民が憤慨していると思いますが、今回のコラムで取り上げるのはこの話題ではありません。検察の幹部がなぜ、新聞記者と懇意にして、賭け麻雀に興じていたのかという話です。
当然ですが、取材される側とする側である検察幹部と新聞記者がズブズブの関係になることは、原則としてあってはなりません。しかしながら、今回の件に限らず、検察幹部と新聞記者はかなり親密な関係を構築しているというのが現実です。今回は黒川氏が麻雀好きだったということで賭け麻雀でしたが、様々な形で、検察幹部と新聞記者は常に個人的に情報交換をしていると思ってよいでしょう。
ではなぜ検察幹部と新聞記者と親しい関係を構築するのでしょうか。
ネットなどでは、情報が欲しい新聞記者が検察幹部を接待し、黒川氏は接待攻勢に負けたなどと言われていますが、それはあまりにもナイーブな見方であり、現実はまったく異なります。新聞記者は情報を取ってくるのが仕事ですから、検察幹部と関係を作ろうとするのはその通りですが、検察幹部にとって、単に「接待されたので付いていきました」ということではリスクしかなく、メリットがまったくありません。関係がバレれば大騒ぎになるわけですから、普通はそうした関係を回避するものです。
実は、検察幹部の方も新聞記者との関係を強く望んでいるのです。その理由は、親しい新聞記者に独占的に情報を流すことで、世論をコントロールできるからです。
2018年に日産元会長のカルロス・ゴーン会長が東京地検特捜部に逮捕されたことは皆さんの記憶に新しいと思います。新聞やテレビでは、勾留中のゴーン氏について「自分は無実であると主張している」「反省の様子はない」など、本人の様子が報じられています。多くの人は、何も考えずにこのニュースを聞き流しているかもしれませんが、東京拘置所に勾留されていて、誰もその姿を見ることができないゴーン氏の様子がなぜ外から分かるのでしょうか。
それは検察官が新聞記者に情報を提供し、記者はその情報をもとに報道を行っているからです。これをマスコミ用語ではリーク報道と呼びます(リークとは、公開されていない情報を意図的に特定の記者などに漏らすこと)。
しかし、本当にゴーン氏がどのような様子なのかは、外部の人には絶対に分かりません。検察はしばしば、国民が反感を持ちそうな情報をあえて新聞記者に流し、世論を誘導して裁判を有利に進めようとします。日本では容疑者がなかなか保釈されないのは、容疑者の本当の姿を一般国民に見せないようにする狙いもあるのです(当然ですが、先進諸外国ではこうした行為は人権侵害と見なされます)。
つまり検察にとってはマスコミというのは、世論を誘導し、捜査や裁判を有利に進めるための最強のツールですから、個人的な関係構築を強く求め、新聞記者と仲良くなろうとします。記者も検察の意図は分かっており、情報操作の一部に加担していることは理解しつつも、有力な情報が欲しいという気持ちがあり、場合によっては、検察からの情報をそのまま記事にしてしまいます。
もちろんこうした関係性はよくないことですが、現実には、私たちが日常的に見聞きしている報道の多くは記者へのリーク情報で成り立っています。警察や検察は公式発表はほとんど行いませんから、こうしたリーク報道をなくしてしまうと、世の中では多くの事件がそもそも存在していないという状況になってしまうでしょう。
世の中ではマスコミの報道を声高に批判している人が多いのですが、実は自分たちも、検察とマスコミが流した情報に踊らされているということになかなか気がつきませんし、それこそが検察側の狙いです。
筆者は、こうした新聞記者と検察(あるいは警察)の関係は見直していくべきだと考えますが、まず、私たちが知っておくべきなのは、世の中で公式な情報と思われているものの多くが、実は特定の人や組織の意図を反映したものであるという現実です。
世の中では報道を見聞きして、怒ったり、反発したりしていますが、情報リテラシーが高い人は、そのような反応はしません。良い悪いはともかくとして、まずはその情報が、誰が何の目的で流したのかを考え、その背景にある事情を考えます。こうした一歩引いた対応ができるようになると、政治や経済の見方も大きく変わってくるでしょう。加谷 珪一
一方、擁護する意見として「仲間内の安価なものだから」などという意見がある。ここで引っ掛かるのが「仲間内」ということだ。つまり、検事と新聞屋は仲間内の関係であることが正常なものなのかということを思う。つまり、検事は自己の職務について厳重な守秘義務を課されているのであって、例え付きまとい顔見知りになった新聞屋といえども、捜査関連情報を漏らす様なことは許されるものではない。だからして、幾ら麻雀が好きだからと、新聞屋と一緒の卓を囲むこと自体が大きな倫理違反だろう。
また、新聞屋も、検事に付きまとうのは、何とか知古を得て、捜査の欠片でも得たいとの手柄を求めてというのが動機となると想像できる。
そんな、検事側の趣向と、それを受けた新聞屋の接待的な思いが合致したのが、今回の黒川事件の本質なのだろうと想像される。
新聞報道によると、黒川と新聞屋の賭け麻雀は、今次の5月の2回が初めてのものではなく、過去10年近い期間の中、月に2ないし3回の卓を囲んできたという。これは、明らかに常習性を示すものだろう。
ところで、黒川への咎めは訓戒で済まされた訳だが、今回の賭け麻雀を行っていた新聞屋は、サンケイ新聞2名、朝日新聞1名と報じられている。各新聞社で、どの様に社内処分がなされたのか気になり、それぞれ新聞屋の相談室から聴取してみた。その結果以下である。
サンケイ新聞
今のところ社内で処分の発表は聞いていません。困った問題で恥ずかしく思っています。
朝日新聞
処分は停職1ヶ月と公表されています。紙面にも陳謝していますとのことであった。当方より、そんなの見ちゃいないし、社長名で今後この様な不始末は一切許されないとの決意表明を行い給えと述べた。
ちなみに、今回事件が身内の山(事件)でなく、彼らの認識する社会正義を通そうとするものだとしたら、以下の様なストーリーを直ちに作り、それに合わせ別件も含めとことん深掘りし、立件して法律条文に決められた罪状で起訴することだろう。
ターゲット咎人Aと新聞屋B、C、Dは、Aから秘密情報を入手する目的を持って、B、C、Dは連携してAが麻雀好きだとしてアプローチし、恒常的に賭け麻雀を繰り返した。その中で、1回5、6時間におよぶ麻雀中の食事や飲料などの供応を繰り返しつつ、深夜の帰宅のタクシー(ハイヤー)の手配などを行い、都度その費用をB、C、Dの社費で負担していた。これらの関係を持つことで、Aの負い目を付くことで、B、C、Dの各新聞屋は情報を入手していたものである。
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第186条
常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
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常習性
判例・通説によれば、賭博を反復累行する習癖ある者を指し、必ずしも博徒又は遊人に限られない(最判昭和23年7月29日刑集2巻6号1067頁)。常習かどうかは賭博行為の内容、賭けた金額、賭博行為の回数、前科の有無などを総合的に判断して決せられる。
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黒川前検事長が新聞記者と賭け麻雀していた本当の理由
5/30(土) 20:03配信 webマガジン mi-mollet
東京高検の黒川弘務検事長が、産経新聞記者や朝日新聞社員と賭け麻雀をしていたという報道を受けて辞任しました。安倍政権は今年1月、安倍氏に近いとされる黒川検事長の定年を半年延長するという前代未聞の閣議決定を行いましたが、この閣議決定については違法ではないかとの指摘が相次ぎました。
このため安倍政権は3月に入って、検察官の定年引き上げや、内閣や法相が必要と認めた検察幹部については任期を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法の改正案を国会に提出し、事後的に黒川氏の定年延長にお墨付きを与える算段でした。ところがネットを中心に反対意見が続出したことから、結局は今国会での成立を断念しています。
安倍政権は次の国会での成立を望んでいましたが、ここで飛び出してきたのが、渦中の人物である黒川氏の賭け麻雀スキャンダルです。結局、黒川氏は検事長を辞任しましたから、安倍政権にとっては、目論見のすべてが瓦解してしまった格好です。
黒川氏は犯罪行為を行っていながら、辞任だけで済み、刑事処罰の対象にならないことについては多くの国民が憤慨していると思いますが、今回のコラムで取り上げるのはこの話題ではありません。検察の幹部がなぜ、新聞記者と懇意にして、賭け麻雀に興じていたのかという話です。
当然ですが、取材される側とする側である検察幹部と新聞記者がズブズブの関係になることは、原則としてあってはなりません。しかしながら、今回の件に限らず、検察幹部と新聞記者はかなり親密な関係を構築しているというのが現実です。今回は黒川氏が麻雀好きだったということで賭け麻雀でしたが、様々な形で、検察幹部と新聞記者は常に個人的に情報交換をしていると思ってよいでしょう。
ではなぜ検察幹部と新聞記者と親しい関係を構築するのでしょうか。
ネットなどでは、情報が欲しい新聞記者が検察幹部を接待し、黒川氏は接待攻勢に負けたなどと言われていますが、それはあまりにもナイーブな見方であり、現実はまったく異なります。新聞記者は情報を取ってくるのが仕事ですから、検察幹部と関係を作ろうとするのはその通りですが、検察幹部にとって、単に「接待されたので付いていきました」ということではリスクしかなく、メリットがまったくありません。関係がバレれば大騒ぎになるわけですから、普通はそうした関係を回避するものです。
実は、検察幹部の方も新聞記者との関係を強く望んでいるのです。その理由は、親しい新聞記者に独占的に情報を流すことで、世論をコントロールできるからです。
2018年に日産元会長のカルロス・ゴーン会長が東京地検特捜部に逮捕されたことは皆さんの記憶に新しいと思います。新聞やテレビでは、勾留中のゴーン氏について「自分は無実であると主張している」「反省の様子はない」など、本人の様子が報じられています。多くの人は、何も考えずにこのニュースを聞き流しているかもしれませんが、東京拘置所に勾留されていて、誰もその姿を見ることができないゴーン氏の様子がなぜ外から分かるのでしょうか。
それは検察官が新聞記者に情報を提供し、記者はその情報をもとに報道を行っているからです。これをマスコミ用語ではリーク報道と呼びます(リークとは、公開されていない情報を意図的に特定の記者などに漏らすこと)。
しかし、本当にゴーン氏がどのような様子なのかは、外部の人には絶対に分かりません。検察はしばしば、国民が反感を持ちそうな情報をあえて新聞記者に流し、世論を誘導して裁判を有利に進めようとします。日本では容疑者がなかなか保釈されないのは、容疑者の本当の姿を一般国民に見せないようにする狙いもあるのです(当然ですが、先進諸外国ではこうした行為は人権侵害と見なされます)。
つまり検察にとってはマスコミというのは、世論を誘導し、捜査や裁判を有利に進めるための最強のツールですから、個人的な関係構築を強く求め、新聞記者と仲良くなろうとします。記者も検察の意図は分かっており、情報操作の一部に加担していることは理解しつつも、有力な情報が欲しいという気持ちがあり、場合によっては、検察からの情報をそのまま記事にしてしまいます。
もちろんこうした関係性はよくないことですが、現実には、私たちが日常的に見聞きしている報道の多くは記者へのリーク情報で成り立っています。警察や検察は公式発表はほとんど行いませんから、こうしたリーク報道をなくしてしまうと、世の中では多くの事件がそもそも存在していないという状況になってしまうでしょう。
世の中ではマスコミの報道を声高に批判している人が多いのですが、実は自分たちも、検察とマスコミが流した情報に踊らされているということになかなか気がつきませんし、それこそが検察側の狙いです。
筆者は、こうした新聞記者と検察(あるいは警察)の関係は見直していくべきだと考えますが、まず、私たちが知っておくべきなのは、世の中で公式な情報と思われているものの多くが、実は特定の人や組織の意図を反映したものであるという現実です。
世の中では報道を見聞きして、怒ったり、反発したりしていますが、情報リテラシーが高い人は、そのような反応はしません。良い悪いはともかくとして、まずはその情報が、誰が何の目的で流したのかを考え、その背景にある事情を考えます。こうした一歩引いた対応ができるようになると、政治や経済の見方も大きく変わってくるでしょう。加谷 珪一