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寺子屋指南 その11 紛争解決を弁護士に任せることが最善か?

2021-04-10 | 賠償交渉事例の記録
 後輩(事故調査員)だとかおよそ紛争の弱者となりがちな一般人向けたこの寺子屋指南であるが、11回目を迎えてしまったが、まだまだ伝えたい話題は次々と出てくる。今回は、交通事故や様々な産業事故などに置いて、双方の言い分が異なる紛争が生じた時、まずは弁護士に委任するのが最善なのかということについて書き留めてみたい。なお、誤解なき様に、まずは記しておくが、これは弁護士否定論ではない。世には有能な弁護士が存在するのは確かだが、これは医師や教授など、一種の権威というものを与えられた職種にはありがちなことなのだが、有能と無能の落差は極めて大きく、そのことを意識せぬ情報弱者にとっては、弁護士委任がまるで意味のない、むしろ弁護士費用に費消される金額だけが増えてしまうことになりかねない。

 ところで、NetCMなどを見ていても、過払い金返還だとか交通事故専門の弁護士だけとかの弁護士もしくは弁護士法人のものが増えたと思える。一方、事件として、預かり金の横領だとかで、弁護士自身が逮捕される事件が増えている様にも感じられる。

 医師なども、昨今は医療過誤だとか診断ミスなどで、その責任を問われる場合があるが、これは後刻において専門業における記録だとか事実関係の物証から立証が可能だからだろう。ところが、仮に無能な弁護士というか、正義感の欠落した弁護士と知らずに委任した場合、有能な弁護士なら勝てる訴訟も、まるで敗訴となったり、相手の言い分もあることだしなどを前言しつつ無闇に譲歩し、双方主張の妥協値だけを追い求める事例というのも良く聞く話しではある。

 さて、世に事件には、ご存じのおとり刑事と民事に分けられ、法律もそれぞれ区分されている。刑事事件としては、個人がある人間を刑事事件として告訴することは出来るが、一般には警察を代表とする捜査期間もしくは大型犯罪などでは検察が直接捜査を行い訴追することもある。それに対して、民事事件とは個人もしくは法人間の、権利侵害による金銭賠償を求めるものである。法律的には、下記の民法709条が基本となる。

民法 第709条【不法行為による損害賠償】
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 なお、警察を代表とする捜査機関や検察などは、刑事事件が原則専門で、民事事件については、あえて関わらないことになっている。

 ということで、民事紛争が生じた場合には、その当事者の代理人となって紛争の解決に直接介入することを法律で許された業が弁護士ということになる。また、弁護士でないものが、業として代理人相当の行為を行うと非弁活動として弁護士法違反に問われる。

 ところで民事紛争が生じた、すわ弁護士事務所に駆け込むなりコンタクトを取って相談することが最善なのかということが今回の本論となる。例えば、一定の業容を持った法人であれば、顧問弁護士を要しており、その者にことをどう進めるべきか打ち合わせとなるであろうけど、一般人に顧問弁護士を持つ場合は極めて少なかろうから、何処をたずね代理人として専任すればベストなのか迷うのは当然だろう。

 これは、愛する愛車が不幸にも事故で損壊し、限りなく完璧に復元したいと思うオーナーが、修理業者として何処を選択すれば良いのか迷うのと似ている。何故、こういう問題が起こるのかと云えば、家電製品とか新車なら、余程特殊なものでない場合だが、一定のブランドというものがあり、その品質や保障も相当程度に確保されているから、何処を選択してもさほど大きな問題は生じないだろう。

 ところが弁護士の行う業は、一種のサービス業というか最近の流行言葉で言えば「ソリューション業」(解決の意)となる訳で、先にも述べた様に、その担当者の正義感、熱意、人に対する愛情などと共に、総合的に戦う戦略眼とか戦闘力といったものに大きく作用されて品質に大きなバラツキが生じるのは宿命的な問題となろう。

 そこで、考えなければならないのは、例えば交通事故であれば、その種の解決に長年の業を行って来た者だとか、その種の入口に立って全体を俯瞰し、どういう解決が方向としてベストなのか提案出来る人物がいないかを探して見るという手がある。そして、その人物はその事件に代理人相当として直接関わることは出来ないのだが、一定以上の説明力があり、文章として書き表せる能力があると云うところがポイントとなろうかと考える。

 案件もよるだろうが、的を得たその様な人物に巡り会い、それなりの意見書を作成してもらうことにより、対相手側はこの筋が通った論理では負けると引っ込まざるを得ない、もしくは解決を故意的に遅延させ、事実上時効にしてしまったり(これは無用の請求を受けた場合)、このままではマズイと今まで動こうともしなかったのが、相手からアタッチして来るということになる。(これは相手が請求に応じない場合)

 なお、その様な相談者との打ち合わせにおいて、弁護士を選任したとして、その選任時には、その意見書を提示することで、弁護士の同意が得られるなら、証拠書類の一つとして訴状と共に提出もらうことは価値あることだろう。

 と書き述べて来たが、現職の損害保険調査員の方も、所属する企業により差異ははあるのかもしれないが、弁護士に委任する案件は、以上のことを念頭に置いてことを進められることを願う。かくいう拙人は、現職時代に弁護士委任となる案件は決して多いとは云えなかったが、それでもこれでも弁護士かと見下げざるを得なかったり、私の意見を重視し主張して下さり、満足の出来る価値ある委任だったという案件もあったことを思い出す。

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