私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

メルセデスベンツ社のこと

2018-04-30 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 ちょっと下らない私見として記します。メルセデスベンツ(正式名:ダイムラー)というブランドは、世間一般には高級車としての感があります。しかし、戦前より自動車用だけでなく、戦車や航空機等のエンジンを作り、戦後も現在に至るまで、乗用車用エンジンを圧倒する数の商用車用エンジンを作り続けているのです。具体的にいえば、ベンツ自社の大型トラックであるアクトロスシリーズ用エンジンだけでなく、他社用(たとえばMAN社)のエンジンや、ネオプランという名の大型デラックスバス用エンジンなどにも同社エンジンは搭載されているのです。ベンツ社は、現在日本の「ふそう」を子会社化しており、同社の小型ディーゼルエンジンの供給を受ける方向とのことがアナウンスされていました。また、「ふそう」社の現行キャンターシリーズのエンジンは、イタリア・フィアット社の基本エンジンが利用されているとのことです。乗用車の世界もそうですが、商用車部門でも、世界中を巻き込んだモノ作りが行われていくのでしょう。

 さて、私の中でベンツ車というと、ある1台のクルマと一人の人物の名が浮かんできます。そのクルマは、俗称300SLR(正式型式W196S)であり、人物名はルドルフ・ウーレンハウトということになります。

 ベンツSLシリーズといえば、ベンツ社の歴史の中でも最も歴史を持ったスポーツカーであり、過去に300SLというクルマがありましたが、このSLRとは直接的な関係は無いようです。ただ、スタイリングの類似性だとか、市販車のイメージアップのために付与された名称であったということです。

 300SLR(W196S)の話に戻りますが、元々F1マシンとして設計されたのがW196Rで、これをスポーツ・プロトタイプ・レーシングカーとして開発したのがW196Sな訳です。排気量はF1用の2.5Lから3.0Lにアップしていますが、直列8気筒(4気筒づつを前後配列し、センター部よりアプトプットする)、デスモドローミック・バルブ(バルブ強制開閉機構)、シリンダー内直接噴射、等々当時の技術として凄まじいばかりのものがあったと想像します。

 そして、人物であるウーレンハウトですが、このW196シリーズの設計者であると共に、当時のレーシングドライバーに少しも引けを取らないドライビングセンスを持っていたことが伝わります。すなわち、自らが設計し、テストドライブして評価し、更に高度な性能に煮詰めていくという、一種の職人芸みたいなものを持っていた方と想像されるのです。

 現在のクルマ開発では各種計測機器やシュミュレーションにより、またレースではテレメトリー(ホンダチームが最初に使ったといいいます)による諸データ解析から、セッティングを煮詰めて行くのでしょう。しかし、人の感じるすべてをデータ化することは不可能なはずですので、テストドライバーやレーシングドライバーの伝える評価の価値が無くなる訳ではありません。ただ、人の評価を伝える場合、コミュニケーション能力やドライバーの有しているメカニカルなスキル、つまり「この問題はこうすれば改善する」等の問題は大きな問題としてあるものと思われるのです。その点で、W196開発における設計者がレーシングドライバー相当の評価能力を有していたことは、大きな強みとなったことでしょう。

※写真はW196Sと専用のトランスポーター(エンジンは300SLものらしい)



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