私の思いと技術的覚え書き

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ボディの寸法精度を考察する

2015-02-03 | 技術系情報
 クルマのボディ寸法の精度について若干講釈をたれてみます。現在のクルマは各フタ物パーツ(ドア等)と隣接パネル間の隙間(チリ)も少なく均一さが保たれています。そして、これらフタ物パネルを固定するボルトも根本部がテーパー状となったセンタリングボルト(国産車)が使用されていたりと、ボディの基本骨格となる内板骨格(モノコックシェル)の寸法精度は相当な許容誤差の範囲で管理されているものであることが判ります。一昔前(20年程以前)で、ボディー寸法の誤差は±2mmと聞いていましたが、よりチリ隙間の少ない現在車では、より寸法誤差が少なく作られているのだと想像されます。

 しかし、どんなに高精度なクルマでも、衝突によるボディ変形により各部の寸法は原寸から外れてきますし、見た目でも各パネル間のチリの狂いとなって表れてきますし、それを見逃さずに読み取り観察し、内板骨格の損傷を読み取るというのが事故車見積技術の根本であり、コンピューターにはできないことなのですが・・・。コンピューターさえあれば、素人でも見積はできると軽率な考えを持つ者が多いのには腹の立つこともあります。

 ところで、クルマの品質とか魅力がボディ寸法の精度だけによるものでないのは当然です。輸入車の中でも高品質を評価されるドイツ車であっても、ヘッドライトの取り付けボルト(3~4本)は、内径16mmの外ネジ付きスリーブに大平ワッシャ付きの6mmボルトを介して固定される構造となっており上下左右に5mm、スリーブがねじ込み式ですので、スリーブ高さも±5mm程度は可動できる構造となっています。これを見ると、現代日本車のヘッドライトでこの様な調整代を持つクルマはありませんから、寸法精度としてみれば国産車より劣るものと想像します。また。この様な調整代を持つことは、製造ラインにおいて例え専用治具を使用したにせよ関連作業時間(タクトタイム)を増加させる、すなわちコスト高となってきますからメーカーとしてはできれば調整機構は避けたいところでしょう。

 私見ですが、どうもホイールアライメントまで調整機構を持ち、製造ラインにおいて同調整をおこなっているクルマは、国産車でも輸入車でもない様に見受けられます。ですから、輸入車においてもアンダーボデーの寸法精度は国産車に遜色はないはずです。しかし、アッパーボデーの寸法精度は、国産車に若干劣ると考えられるのです。但し、幾ら寸法精度が正しかろうと、走行中のクルマには静的にも動的にも各種荷重を受け、寸法の狂いを生じると考えられます。そして寸法の狂いが運転車に関知された時、剛性の低いクルマだという評価になると思います。このボディ剛性についても、近年の衝突安全性能の副次的効果により、一昔前のクルマから著しく向上したところでしょう。

 この国産車と輸入車のボディ寸法精度の差異は、プレス金型の精度や溶接にあるのではなく、各パネルを寸法通りに組み合わせ固定する治具だとか組立順序などから生じるのではないかと私見では睨んでいます。しかし、工業製品としては均一な寸法に短時間で組み立てることが優れているのでしょうが、クルマ全体の評価となるとデザインとか剛性や諸性能(動力や音振)等々が加味されてきますから、必ずしも国産車が優れているとは思えないところなのです。

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