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佐高節【トヨタ化するホンダ】

2022-05-20 | コラム
佐高節【トヨタ化するホンダ】
 以下は日刊現代5/16付けのNet記事に掲載していた、佐高信氏が故本田宗一郎氏の逸話を、おそらくだいぶ以前聞いていて、昨今のホンダやパナソニックという企業の低迷という現象を表現したものだと想像する。

 佐高信氏(77)、さまざまな日本の論客は居る訳だが、大勢に流されずに云うべき主張を行う大衆迎合でないところが魅力の言論人で、何時もその発言に注目してきた一人だ。

 以下の論評で、佐高氏は「いまはホンダのトヨタ化、ソニーのパナソニック化という憂うべき事態が進行している」と結語している訳だが、それが同氏に取って否定すべきことだという論点が明確になっている点で正に賛同すべき発言として、紹介するものだ。

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トヨタ化するホンダ…創業者・本田宗一郎の理念はどこへ(佐高信)
日刊ゲンダイDIGITAL 5/16(月) 16:30配信

【佐高信「この国の会社」】
 「お前たち、ホンダが何をやっているのか知ってるか?」
 ホンダF1総監督をやることになる桜井淑敏が入社してまもなくの社員研修に突然現れた本田宗一郎はそう声をかけ、みんなが答えられずにいると、「ここは人間を研究するところだ。なぜなら人間のことを分からない奴にいい商品は作れない」と言い放ったという。

 『文藝春秋』の2022年1月号で、桜井は本田についてこう語り、「これは普通じゃないな」と思うと同時に「ああ、この人には嘘はつけないな」と思ったと述懐している。

 桜井は25歳の時、世界一厳しいと言われたアメリカの排ガス規制法をクリアするための低公害エンジン「CVCC」開発の設計チームのリーダーとなった。その時、本田は、「お前たち、これ、何のためにやっているかわかるか?」と問いかける。そして、「ここでホンダが他社に先駆けて低公害エンジンを開発すれば、最後発だったメーカーが世界のトップになる。ホンダにとってこんなチャンスはないんだぞ」とハッパをかけた。

 それを聞いて桜井は「社長!」と、帰りかけた本田を呼び止める。そして、「僕は、会社ではなく人類のためにやっているんです」と続けた。のちに知り合うことになる桜井は私と同い年で、決して頭でっかちの人間ではない。必死に努力していた心からの叫びだったのだろう。

 ホンダはジーッと桜井の顔を見つめ、何も言わずに帰って行った。「これはヤバイ。クビになるかも」と桜井は思ったが、もちろん、そんなことにはならず、本田はその1年半後くらいに引退する。その際に出した本の中に「自分が引退を決意したのはこういうことがあったから・・・・」と桜井とのヤリトリが記されていた。

 異論を大事にするホンダはソニーと共に、いわゆる「日本的経営」の和の会社ではない。

 本田には二度インタビューしたが、経営のことは藤沢武夫に任せて、銀行の通帳も見たことがないと言っていた。ソニーが井深大と盛田昭夫のツートップ経営だったように、ホンダもワンマン経営ではないのである。

 本田は社名を本田技研工業としたことを悔いていた。ソニーという社名はいいじゃないかと羨ましがっていた。

 会社は社会のものであり、創業者一族のものではない。企業を家業としたくはないと考えて息子を会社に入れなかった。

 日本では、本田より松下幸之助の方が人気が高い。しかし、結局、松下電器(現パナソニック)を家業化した松下より、私は本田の方がずっと尊敬されて然るべきだと思う。そうなった時、日本の会社も、そして日本も変わるだろう。ただ、その日が来るかどうかは疑問であり、いまはホンダのトヨタ化、ソニーのパナソニック化という憂うべき事態が進行している。(敬称略:佐高信/評論家)


#ホンダとソニー #異論を大事にし、いわゆる「日本的経営」の和の会社でない


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