私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

板金の話し

2011-02-10 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 つい最近のことですが、知り合いの板金屋さんで軽自動車のリヤドアの板金の粗修正作業を見る機会がありました。昔は仕事上のこともあり、工場を訪問する都度、目的対象車以外ですが、多くを見続けてきたつもりです。
 板金の作業者や仮にも事故車見積を行おうとする者なら、言わずもがなのことを記します。変形損傷部位には、塑性変形と弾性変形があって、板金作業とは塑性変形を修正する作業です。これにより、弾性変形はいわゆるスプリング現象の範囲ですから、自動的に直るのです。
 ですから、作業者や見積者は、変形損傷部内の塑性域と弾性域を見極める目利きが必用となります。仮にも、弾性域の変形を叩いたりして変形を直そうなどとすると、変形は直らず鋼板の伸びが生じて、これを除去するのに苦労することとなります。
 と、ここまでの話しを聞いた、若い衆アジャスター等の中には、「そんなの関係ないですよ。板金指数があって、これには平均的な塑性域と弾性域が織り込みですし・・・」みたいな返事が返ってくるのかもしれません。
 私に言わせりゃ、指数は一つの指標値であって絶対性はないということです。それと、この損傷は直せるのか、直せないのかという視点において、指数信奉者の子供には判じることなど出来ないことでしょう。え、それは工場とユーザーが決めることだから・・・。それも、違いますよね、工場、ユーザー、修理費の負担者(保険会社)の3者の折り合いによって決まる問題でしょう。
 さて、最初の軽自動車のリアドア板金に話を戻します。損傷範囲はドア下部1/3くらいの範囲で、損傷部の凹損深さはそれ程ではないものの、プレスラインがあり、しかも内部のドアインパクトビームの丸パイプの形が多少表出しているという状態です。
 この様な損傷を見て、これは結構手間取るだろうななどと想像しながら作業者と話しますと、「こんなの大したことないよ~」との弁と共に、実作業を実演してくれました。手法はドアの凹損部にバキュームカップを吸い付けて左手で引いて保持し、右手で損傷部外周の折れ込み部分(塑性域)をハンマリングして行きます。バキュームカップの位置を変えながらこれを繰り返し、僅か15分に満たない時間で粗修正作業は完了したのでした。インパクトビームの痕跡も、まったく判らなくなりました。当然、この期に中仕上げ、最終仕上げというパテ付け、パテ研ぎ作業がありますが、+60~90分と云ったところでしょうか。


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