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寺子屋指南 その6 作業の想定

2021-04-02 | 賠償交渉事例の記録
 第6回目の本シリーズだが、従前、事故車の見積作成は、マクロ的およびミクロ的観察、損傷診断などのことを書き記してきた。これからいざ、見積作成に入ることになるのだが、その前段階として、作業の想定ということを考えなければならない。

 ここでの作業の想定とは、例え自らが自動車板金のプロだったとして、その自己流の手法を想定すると云うのではなく、広く世の一般的な科学的な事故修理として想定される普遍的な手法を想定すべきだろう。

 作業指数だとか工数には、いわゆる標準条件という前提があり、車両程度が錆など少なくさほど程度が悪くないこと、メーカー指定の作業要領に沿っていること、作業者が特に急いだりしないで作業を進めることなどが前提として上げられているが、これと同様に世の標準的な作業を前提とした上での、作業の想定と云うことになる。

 ここで考慮すべきは、個別部位の板金とかなら、裏から手が入る構造なのか(いわゆる袋構造か)とか、車体全体の変形の場合は、フレーム修正機を必用とするのかということになるのであろう。

 また、作業を分類すると、以下の3つに区分けできるが、これを適宜把握しなければならないだろう。
・主体作業:目的の作業で見積書に工賃を計上する。
・付帯作業:目的の作業に含まれるもので、見積書には主体に含まれるとして工賃計上しない。
・付随作業:主体を行うために、作業上から別途に必要となる作業で、見積書に工賃計上する。

 また、付随作業については、その工場の作業方針などから、意見が割れる場合もあるのかもしれない。しかし、ここでは、先の標準的な作業を前提とし、作業の精度や安全性や仕上がりに影響する部位を優先して付随作業を見極めることが大切だと思える。なお、例えば、フロントサスペンションクロスメンバーを脱着もしくは取替る主体作業が想定できたとして、その上に搭載されているエンジンは付随作業として必ずしも脱着が必用かと云えば、世間一般の工場を見廻しても、それだけの理由でエンジンまでを下ろしている場合は少ないだろう。予め、クレーンや下からのジャッキによりエンジンを経度に持ち上げておいて、サスペンションクロスメンバーと切り離すという作業は、極普通に行われている実態にあり、その当たりも見積担当者は知る必用があるだろう。

 しかし、この作業の想定だが、昨今の損害保険の調査担当者や修理板金工場でも二代目となると、車体修復の実態にあまりにも無知ということを知る機会は多い。つまり、見積作成はコンピューター技術の発達により、選択部品の取替や修理として、任意選択出来るが、付随作業の範囲だとかも含め、作業の想定ということまでをコンピューターが出来るはずもない。そこで、それなりの優秀な見積担当者が見たら、「この辻褄が合わない見積は何だ!」という事態が起きてくる。こういうのを、私は過去から「コンピューターが走る」などと表現してきたのだが、ゲーム感覚でコンピューター操作には習熟しているが、作業の実務にまるで無頓着と云うか、無知過ぎるのである。

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