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欧州車のFMCサイクルが異常に短縮

2021-06-15 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 世の車は、モデルチェンジを経て刷新するのが一般的だ。
 しかし、クルマの歴史を紐解いてみると、世界初の量産車たるフォード・モデルTは、1908年に販売開始し1927年まで19年間もモデルチェンジしないまま製造し続けたという。一方、VWビートル(タイプ1)は、1938年の生産開始から、種々の小変更を繰り返しながらも2003年までという65年も作り続けた。

 世にはこういうクルマもあるが、フォードより後発となるGM社では、4年ほどのFMCを挟んで中間にマイナーチェンジを行うという手法を取ることで、市場の購買意欲を高めフォードを追い越したという歴史がある。

 我が日本の車両メーカーも、昭和40年代中頃の爆発的なモーターリゼーションの時代を迎え、GMに習って、4年毎のFMCと中間でのマイナーチェンジを行う量産車は多かった。ただし、不人気車種だとか商用車については、この限りではなく、10年を超えるライフサイクルを持つクルマもある。

 しかし、同時期の欧州車はと云えば、FMCサイクルが8年、中間の4年毎にマイナーチェンジを行う例が多かったと記憶する。これは、ベンツ、BMW、VWなど、多くの量産車でそうであった。しかも、FMCなどしても、各社において、独自のブランドイメージを維持できる様に、一部のデザインモチーフを継承することが多かった。つまり、ベンツの3ポイントスターのエンブレムだとか、グリル形状だとか、テールランプの段付き形状、BMWでいえば、キドニーグリルとかリヤドアサッシュの形状などだろう。この欧州車のFMCサイクルの長さとか、例えFMCしたとしても直ちに製造メーカーが判るブランド性から、欧州車には魅力を感じていたものだった。

 ところが、我が国では平成の時代を迎える頃から、車両プラントを世界中に展開することにより、生産数では世界No1となったが、内需としての販売台数は失われた20年とか30年といわれる低成長時代に入ったこともあり、相当な売れゆき好調な量販車でない限りFMCのサイクルは長期化しつつある様だ。販売不振なモデルなど、1世代限りで消滅するクルマも結構あって、特にニッサンにはその手のモデルが多かった。

 さて、近年に至って、欧州量産車のFMCサイクルが異様に短くなっていることを感じる。これは、かつての我が国のFMC4年を下回る様な事例も見られる様になって来たのが、最近の欧州車の傾向ではなかろうか。図はVWゴルフの世代間の製造期間を表すために作成した表だが、ゴルフは今年8世代目が本国で販売開始されたそうだが、7世代目はたったの2年、6世代目は4年、5世代目は6年と段々モデルサイクルが短縮化していることが判る。

 ところで、30年ほど前にニッサンが有利子負債2兆円とかを抱え倒産の危機を迎え、自らより余程小さいルノーというフランスの田舎メーカーの出資を仰ぎ、その傘下に属せねばならなくなったのは、車両メーカーというのは多大の投資を行い、その車両がヒットするかしないかで、投資額が回収できるかどうかという、結構大きなリスクを抱えている業種であることを感じる。

 一般に、FMCを行う場合に、例えプラットフォーム(車体の床など基本となる部位)は共通でも、車体外板や内装の生産治具などを主体として数百億単位の投資を要すると云われている。例えば、現在のボデーは、その素材が鋼板、アルミ、樹脂と異なれども、すべて金型というものが必要となるが、バンパーとかインストルメントパネルなどの大型部品の金型となると、1機製作するのに数億単位の製造費を要すると聞く。

 つまり、短期間のFMCでは、投資額を回収して利益を出すのが困難になることは明白だ。世界のメーカー別の利益率は、ポルシェが十数%と高いが、これは量産台数が少ないものの、相当な付加価値を付けたプライスで成立している特殊な事例だろう。ここでは記憶の話しだが、トヨタで10%前後、VWやホンダで5%程度しか利益は出ていないのが現実なのだ。




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