私の思いと技術的覚え書き

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国産車と輸入車のボディ寸法精度のこと

2016-02-03 | 技術系情報
 一年前の記事を若干校正し、再掲載してみます。
 クルマのボディ寸法の精度のことについて、国産車と輸入車を比較しながら若干講釈を記してみます。
 現在のクルマは、各フタ物パーツ(ドア等)は隣接パネル間の隙間(チリ)も小さく均一さが保たれています。そして、国産車に限りますが、フタ物パネルを固定するボルトの根本部がテーパー状となったセンタリングボルト使用されています。これは、ボディの基本骨格となる内板骨格(モノコックシェル)の寸法精度が、相当小さな許容誤差の範囲で管理されていることが判ります。国産車では、今から20年程前で、ボディー寸法の誤差は±2mmと聞いていましたが、よりチリ隙間の少ない現在では、さらに寸法誤差が少なく作られる様になっていることが伺えるのです。

 ところで、どんなに高精度な寸法精度のクルマでも、衝突によるボディ変形により各部の寸法は原寸から外れてきます。そして、見た目でも各パネル間のチリの狂いとなって表れてきますので、それらを観察し内板骨格の変形具合を読み取るというのが、事故車見積技術の根本であり、コンピューターにはできないことなのですが・・・。しかし、コンピューターさえあれば素人でも見積はできるなんて、軽率な考えを持つ者(それと宣伝)が多いのは笑止と感じます。※1

 ところで、クルマの品質とか魅力がボディ寸法の精度だけによるものでないのは当然です。その前提で、輸入車のヘッドライトとドアの取り付けについて記してみます。

 ヘッドライトの取り付け構造ですが、高品質を評価されるドイツ車ですが、ボルト(3~4本)でボディ本体(コアサポート等)に固定される構造は国産車と同様です。しかし、各取付ボルトが、内径16mmの外ネジ付きスリーブに大平ワッシャ付きの6mmボルトを介して固定される構造となっており、上下左右に最大5mm、スリーブがねじ込み式ですので、スリーブ高さも最大10mm程度は可動できる構造となっています。

 ドアヒンジ部で同じくドイツ車(欧州車といっていいかも)では、ヒンジピン部(上下)のボルトを弛めることで外せますから、脱着はし易い構造とされています。また、、ヒンジのボディー本体側は溶接構造となっており、寸法精度がそれなりに高いとを伺えさせます。しかし、ドア側のヒンジを外すと、国産車と違いセンタリングでない通常ボルトが使用され、しかも多くがシム(スペーサ-)が挿入され高さの調整がなされているのを見掛けるのです。 

 以上のヘッドライトとドアの事例ですが、現代日本車のヘッドライトでこの様な調整代を持つクルマは極少ないですし、ドアヒンジに関わらずボディパネルをシムで高さ調整しているのを見ることはありません。従って、ボディ寸法精度としてみれば、国産車より輸入車が劣ると想像します。そして、この様な調整を生産ラインで行うについては、当然専用治具を使用した上であろうが、作業時間(タクトタイム)を増加させるでしょう。すなわちコスト高となってきますから、メーカーとしてはできれば調整機構は避けたいところでしょう。ついでに、街の板金屋さんの声と私自身の経験からも感じることですが、欧州車は調整代が多すぎて逆に合わせるのが大変で手間を要すことです。

 ところで、一部クルマを除き、ホイールアライメントの調整機構(除くトーイン)を有し、製造ラインにおいて同調整(除くトーイン)をおこなっているクルマは、国産車でも輸入車でも少ない様に見受けられます。ですから、輸入車においても、アンダーボデーの寸法精度は国産車に遜色はないと推察するのです。しかし、アッパーボデーの寸法精度は、国産車に若干劣ると考えざるを得ないのです。

 但し、幾ら寸法精度が正しかろうと、走行中のクルマは、静的にも動的にも各種荷重を受け、寸法の狂いを生じると考えられます。そして、寸法の狂いが、もし運転車に関知された時、剛性の低いクルマだという評価にもなると思えます。このボディ剛性についても、近年の衝突安全性能の副次的効果により、一昔前のクルマから著しく向上したところでしょう。

 この国産車と輸入車のボディ寸法精度の差異は、プレス金型の精度や溶接にあるのではなく、各パネルを寸法通りに組み合わせ固定する治具だとか組立順序などから生じるのではないかと想像しています。しかし、工業製品としては均一な寸法に短時間で組み立てることが優れているのでしょうが、クルマ全体の評価となるとデザインとか諸性能(動力、操安、音振等)、衝突安全、等々が加味されて来ますから、必ずしも国産車が優れているとは思えないところなのです。

※1
 チリが狂っているから、その取り付け骨格が動いているとは即断できないことを認識することです。アジャスターの新人教育などで、そういうバカの一つ教えを受けた者を時々見掛けたものです。その損傷パネル自体が変形するに留まっている場合もあり得るのです。具体例を記せば、フロンドドアの前端に12時近い入力を受けドアが後方に下がってリヤドアと接触している事例です。ドアのインナーパネルが変形し、ドアが後退しており、フロント(A)ピラーは変形なし(あってもヒンジ後方が僅かに沈む程度)というのを、フロン(A)トピラー変形大きい3h分みたいな見積を作っちゃうのです。

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