私の思いと技術的覚え書き

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難しい冠水車の値踏み

2014-11-16 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 昨日(土)は、午後一杯掛けて損傷車両の引き取り保管業者を廻りつつ、6台程の車両を見て来ました。これは良い出物があれば、仕入れたいという思いからです。

 予想していた通り、この二ヶ月くらいの間に各地で生じた大雨による水害車両が多数を占めていました。この水害車両というのは、なかなか修理費の値踏み(見積)をするのが難しいものだと思わされます。一般の事故車と違い外観は良好でも、電装系のパーツや内装の布や皮革関係のトリム類の交換が必要になったりと、カーディーラーなどで修理見積を積算すると、優に新車価格を上回るなんてこともざらにあります。

 それと駐車状態で冠水したのか、冠水水位はどのレベルであったのか、水質は塩水か淡水かなどより損害は変わってくると想像されます。そして、幾ら室内への浸水がなくても、走行中に深い水たまりに飛び込んでエンジンが急停止、つまりエアクリーナーからの大量の水吸い込みによる液圧縮を起こすという、いわゆるウォーターハンマーを生じている様な場合は、コンロッドの曲りやバルブ系の曲りなど、エンジン本体内部の損壊に至りますから、エンジン交換を前提に考える必用もあるでしょう。

 今回見て廻ったクルマは比較的低いレベル(シート座面下くらい)のものが多かった(というかそれ以上のものは価値なしと判断して見るつもりなし)のですが、それでもエンジン始動は可能であったり不可であったりと、それぞれです。数少ない検分車ですが、どちらかと云うと輸入車の方が冠水に弱い傾向があるのかとも思えました。このことはだいぶ以前に当ブログでも記した、輸入車の室内マット下にECU(コントロールユニット)が装着されていたりというクルマを時々垣間見ることからも頷けます。

 ウォーターハンマー案件は今回の中にもありました。一部分解を行った様でヘッドカバーのネジが外れていましたので開いたところ、タイミングチェーンがスプロッケットから外れそうになっているではありませんか。どの様な原理でそうなったのか良く判りませんが、液圧縮からコンロッドを曲損させその時割損したピストンとバルブがクラッシュし、カムに過大な負担を生じたのかもしれません。それともバルブトロニック仕様でしたので、その辺りの制御が影響したのかもしれませんが・・・。

 水位がシート座面下でエンジン始動可能車両であっても、だいたいがエアバッッグ警告灯が点灯している
場合が多い様でした。これはエアバッグ用ECUの取付位置が、ほとんどの車両においてシフトレバーの前側付近のセンターフロアパネルに直付けされているからなのです。これにより室内乗員に作用するGを検出し、エアバッグの作動を決定しています。ですから、浸水水位は少なくともこれに達していたと判断できますし、プロペラシャフトのあるFR車より、ないFF車の方がセンターフロアが浅いですから、より浸水水位は低くなるのでしょう。

 何れにしても、水害車の値踏みは改めて難しいと改めて思います。部品取り可能な同型事故車両を保有している等、特別の条件が揃わないと、なかなかリスクが高過ぎて簡単に値付けできるものではありません。


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