指数の疑問 その7【稼働率が与えるレートへの影響】
先日(6/1)の記事で「レバーレートを損保が決める」で記したが、整備工場の思考として、損保と巧く付き合って行こうという思考を一概に否定するものではないが、自己の立場に立脚した論理的な思考を十分保持している必用があると思える。そんな中思うことが、賃金センサスなどの官公庁資料から採用される消費者物価指数と稼働率の2つの変動要素について考え方を記してみたい。
1.消費者物価指数
とかく損保主導の計算だとかでは、昨年のレバーレートが良しとして、消費者物価指数がどうだから今年はこの値みたいな論があるが、これには大きな問題が内在すると思っている。と云うのは、レバーレートは、基本は以下の算式で計算される。
レバーレート=(年間もしくは一定期間の)工賃総原価(直接工員1名当り平均)/(年間もしくは一定期間の)実働時間×稼働率)
ここで、工賃総原価とは、同期間の工員給与(1名当り平均)+工場費+一般管理費となる。
このために、現在のレバーレートに原価計算上合わない部分が仮にあったとして、そこに消費者物価を勘案しても、その不合理は何時までも解消できないことになるだろう。ただ、消費者物価には、多項目の物価があり、例えば工場費の各費目において、原価が明確でないとか、他工場と比べてどうなのかとかを検討する場合に、参考とすることはあり得るが、昨年対比でこれを係数で乗じるのは、売り手側の思想ではなく買い手側の思想だと思えてしまう。
2.稼働率の問題
稼働率の問題は、拙人の私見だが、およそ半世紀前に何処かの大学教授などが見出した数値である68%が永年準用され続けているのだが、果たして何処まで現状に合っているのかということを思う。ただし、先の計算の通り、実働時間は比較的捕まえやすいが、その中に占める直接作業時間(有償作業時間とも云える)の比率は、工場毎に大きなバラツキがありそうだと思えるし、そもそも十分な工場運営の自助努力とか管理が杜撰であれば稼働率は低下して行くであろう。その結果として、仮に稼働率が半減したとすれば、分母側の直接作業時価値も半減することになるので、分子側の工賃原価が同一だとすればレバーレートは倍になってしまう。
ただ、云えるのは、純な製造業で、同じものを反復生産している様な工場では、稼働率というのは、かなり限りなく100%に近づいて行くことは容易に想像できる。例えば大企業となる車両メーカーの流れ作業などで云えば、始業時間直後に、職場長の今日の生産計画だとか作業上の注意などの短い伝達があり、その後は黙々と製造ラインは流れ続ける。こういう職場では、稼働率95%とか十分あり得るのだろうが、一般的な自動車整備BP工場での業務を眺めると、そこまでの稼働率があり得ないことは容易に想像ができる。
先に記した通り、稼働率はむやみに現場の実態だからといえ、十分な企業努力もなく管理不足の放任経営を行っていて、これが実態だからと採用できるものではないという前提でだが、実態の自動車整備BP工場の現実は50%前後で推移している工場が多い様にも見えてしまう。このことは、実のところ工数の策定において、準備時間だとか正味作業時間、余裕時間などの要素が加味されているとはいうものの、例えば作業にあたり指示命令を打ち合わせる時間、必用なマニュアルとか諸データを読み取る時間、作業を終了し報告を行い最低限の打ち合わせを行う時間などは、ほとんど現状の工数には加味されていないと云うのが実態なのである。それと、マスプロダクションのライン作業では、極短い作業単位(タクトタイム)で繰り返し作業を行うことで、そこには迷いとか試行錯誤という要素を事実上排除できるのだが、自動車整備BP業では、作業の単位も総じて長いし、繰り返しの反復作業でないことから、作業には相当に迷いとか試行錯誤の時間、云って見れば時間に計測しがたい不確定要素が入り込んで来ると云う問題がある。そういう点では、そもそも工数自体を見直す必用も感じるところだが、その問題は別の機会に記すこととして今回は除外する。
ここで、ある工場がレバーレート6,500円で行っていると仮定し、その場合に稼働率68%で算出されているとして、稼働率が8~10%づつ減じて云った場合に、レバーレートがどのように変動するか試算を以下に記す。稼働率以外の要素は変化がないものとするが、年間拘束時時間は2,000hだとすると以下の算式で、工賃総原価は算出できる。
➀稼働率 68%の場合 レバーレート(¥6,500)=工賃総原価(8,840,0000)/2,000×0.68
②稼働率 60%の場合 レバーレート(¥7,367)=工賃総原価(8,840,0000)/2,000×0.60
③稼働率 50%の場合 レバーレート(¥8,840)=工賃総原価(8,840,0000)/2,000×0.50
※年間拘束時間の2000hは以下の計算による。
年間365日(52週に相当)で、土曜は隔週休日(52+26日休日)、年間祭日16日、夏期休暇および正月休みはそれぞれあるが、ここでは労基法で定められた年間有給休暇20日として、年間休日114日(52+26+16+20と仮定した。となると年間稼働日数を251日とし、1日の拘束時間を8hとすると、年間総労働時間は2,008hとなる。計算簡略化のため切り捨て、年間総労働時間を2,000hと仮定した。
#稼働率がレバーレートに与える効果
先日(6/1)の記事で「レバーレートを損保が決める」で記したが、整備工場の思考として、損保と巧く付き合って行こうという思考を一概に否定するものではないが、自己の立場に立脚した論理的な思考を十分保持している必用があると思える。そんな中思うことが、賃金センサスなどの官公庁資料から採用される消費者物価指数と稼働率の2つの変動要素について考え方を記してみたい。
1.消費者物価指数
とかく損保主導の計算だとかでは、昨年のレバーレートが良しとして、消費者物価指数がどうだから今年はこの値みたいな論があるが、これには大きな問題が内在すると思っている。と云うのは、レバーレートは、基本は以下の算式で計算される。
レバーレート=(年間もしくは一定期間の)工賃総原価(直接工員1名当り平均)/(年間もしくは一定期間の)実働時間×稼働率)
ここで、工賃総原価とは、同期間の工員給与(1名当り平均)+工場費+一般管理費となる。
このために、現在のレバーレートに原価計算上合わない部分が仮にあったとして、そこに消費者物価を勘案しても、その不合理は何時までも解消できないことになるだろう。ただ、消費者物価には、多項目の物価があり、例えば工場費の各費目において、原価が明確でないとか、他工場と比べてどうなのかとかを検討する場合に、参考とすることはあり得るが、昨年対比でこれを係数で乗じるのは、売り手側の思想ではなく買い手側の思想だと思えてしまう。
2.稼働率の問題
稼働率の問題は、拙人の私見だが、およそ半世紀前に何処かの大学教授などが見出した数値である68%が永年準用され続けているのだが、果たして何処まで現状に合っているのかということを思う。ただし、先の計算の通り、実働時間は比較的捕まえやすいが、その中に占める直接作業時間(有償作業時間とも云える)の比率は、工場毎に大きなバラツキがありそうだと思えるし、そもそも十分な工場運営の自助努力とか管理が杜撰であれば稼働率は低下して行くであろう。その結果として、仮に稼働率が半減したとすれば、分母側の直接作業時価値も半減することになるので、分子側の工賃原価が同一だとすればレバーレートは倍になってしまう。
ただ、云えるのは、純な製造業で、同じものを反復生産している様な工場では、稼働率というのは、かなり限りなく100%に近づいて行くことは容易に想像できる。例えば大企業となる車両メーカーの流れ作業などで云えば、始業時間直後に、職場長の今日の生産計画だとか作業上の注意などの短い伝達があり、その後は黙々と製造ラインは流れ続ける。こういう職場では、稼働率95%とか十分あり得るのだろうが、一般的な自動車整備BP工場での業務を眺めると、そこまでの稼働率があり得ないことは容易に想像ができる。
先に記した通り、稼働率はむやみに現場の実態だからといえ、十分な企業努力もなく管理不足の放任経営を行っていて、これが実態だからと採用できるものではないという前提でだが、実態の自動車整備BP工場の現実は50%前後で推移している工場が多い様にも見えてしまう。このことは、実のところ工数の策定において、準備時間だとか正味作業時間、余裕時間などの要素が加味されているとはいうものの、例えば作業にあたり指示命令を打ち合わせる時間、必用なマニュアルとか諸データを読み取る時間、作業を終了し報告を行い最低限の打ち合わせを行う時間などは、ほとんど現状の工数には加味されていないと云うのが実態なのである。それと、マスプロダクションのライン作業では、極短い作業単位(タクトタイム)で繰り返し作業を行うことで、そこには迷いとか試行錯誤という要素を事実上排除できるのだが、自動車整備BP業では、作業の単位も総じて長いし、繰り返しの反復作業でないことから、作業には相当に迷いとか試行錯誤の時間、云って見れば時間に計測しがたい不確定要素が入り込んで来ると云う問題がある。そういう点では、そもそも工数自体を見直す必用も感じるところだが、その問題は別の機会に記すこととして今回は除外する。
ここで、ある工場がレバーレート6,500円で行っていると仮定し、その場合に稼働率68%で算出されているとして、稼働率が8~10%づつ減じて云った場合に、レバーレートがどのように変動するか試算を以下に記す。稼働率以外の要素は変化がないものとするが、年間拘束時時間は2,000hだとすると以下の算式で、工賃総原価は算出できる。
➀稼働率 68%の場合 レバーレート(¥6,500)=工賃総原価(8,840,0000)/2,000×0.68
②稼働率 60%の場合 レバーレート(¥7,367)=工賃総原価(8,840,0000)/2,000×0.60
③稼働率 50%の場合 レバーレート(¥8,840)=工賃総原価(8,840,0000)/2,000×0.50
※年間拘束時間の2000hは以下の計算による。
年間365日(52週に相当)で、土曜は隔週休日(52+26日休日)、年間祭日16日、夏期休暇および正月休みはそれぞれあるが、ここでは労基法で定められた年間有給休暇20日として、年間休日114日(52+26+16+20と仮定した。となると年間稼働日数を251日とし、1日の拘束時間を8hとすると、年間総労働時間は2,008hとなる。計算簡略化のため切り捨て、年間総労働時間を2,000hと仮定した。
#稼働率がレバーレートに与える効果