私の思いと技術的覚え書き

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ショックなボルト折損とその復旧

2015-12-21 | 技術系情報
 整備作業でボルトの締め弛めは日常茶飯事のことですが、稀に妙な手応えと同時にボルト折損を認識することがあります。まったく嫌な瞬間です。しかも、折れ残ったボルト残部が、簡単には取り除けそうもない場合、これからの追加作業を想像しつつ、途方に暮れるなんてことは、作業の経験者なら良く判ることでしょう。

 昨日のこと、件(くだん)のボルト折れが生じたのです。クルマと部位は、大型バスのオルタネーターアジャスト側固定ボルト(軸径M14)と結構太いボルトです。ボルト折れは、緩んだ状態でせん断荷重を繰り返し受けた場合や、整備中なら締め付けの際の過大トルクで起こることが多いのでしょう。しかし、今回の場合は緩める際に、何時まで廻し緩めても軽くならず、とうとうねじ切れてしまったというものです。こういった状況は、ボルトが腐食し固着しているなどが大半ですが、今回は腐食の形跡はありません。当然、一方的に緩め方向へ回した訳でもなく、浸透潤滑剤を流しつつ、締込み側と緩め側を比較的軽く動く範囲で繰り返し反転させながら、緩めを拡大しようとしていたのです。しかし、何時まで繰り返しても一向にボルトが軽く回る状態に至らず折損(ねじ切れ)が生じてしまったのです。この原因ですが、たぶんインパクトによる過大トルクでボルトに相当な伸びを生じていたとものと想像されます。

 さあ、大変なことになったと気落ちします。しかし、なんとか復旧させねばなりません。ボルト自体は代用品はなんとかなるでしょうが、折れ残ったボルト残部をどう除去するかが肝心なところとなります。あいにく日曜のことで、提携の整備工場も休み、手近にドリルやマッチする径のキリもないので、まずはオルタネーターを取り外します。乗用車に比べ5、6倍の重さ(たぶん20kg以上)ありますから、抱える様に移動クルマに積み込みます。向かったのは、日頃付き合う板金工場です。そこで、ドリルやキリを借りて、自ら行おうという訳です。ところが、到着し道具を探しているところ、主が帰宅し本件に取り組んで戴けることになりました。小径ドリルでの下穴開けですが、センターポンチも打たずに刃先角のコントロールでなるべく真心に穴あけ貫通させます。そこから、なるべくねじ山を削り取ることなく、ぎりぎり大きな径のキリで貫通させます。裏側でちょっとズレましたが、ほとんどネジ山は残って穴開けに成功しました。自らやったら、とてもここまで巧く行かなかったと感心されられました。

 この後は、マッチするタップを掛けてやれば良い訳ですが、あいにくとM14でピッチまで一致するものはなく、近くにの内燃機屋さんへ廻ります。ここで、ちょっと太めのノックピン押し(丸径タガネ?)みたいな刃先で、筒状に残った残部を内側に押し倒し出す様にはつります。これで、ほぼオリジナルのネジ溝が露出しました。後は、マッチする径とピッチのタップを掛けてOKとなりました。ボルトは近くの大型ホームセンターで、ボルト頭部の強度表示が同じでサイズ、ピッチ、首下がマッチするものが入手できました。

 ボルト折損が15時頃ですが、それからオルタネーターを外し移動しつつ、残部除去して新ボルト購入して現車に戻ったのが19時頃となってしまいました。そこから組み付け作業を開始、大重量のオルタネーターのセット(特に下部のスルーボルトの貫通)に手間取りましたが、なんとか組み付け、外したベルトを調整しつつ完成です。間違いがないか再確認後、エンジンを始動後、異状がないかを見て停止、再度外したベルトの張りを再確認するということを2度繰り返し完了です。時間は21:30頃となってしまい、誠に疲れた、もう経験したくはない1日となりました。

※翌日朝、前日夜間作業でしたので見落としがないか、広く周辺を含めて再確認しました。当該車はこの日の11時に運行を開始し16時に帰社します。作業者としては、間違いはないと確信はしているものの、やはり気になるものです。16時、車庫に帰ってきた運転手から、まったく異音も聞こえず(Rrエンジンですから聞こえたとしたらえらいことが生じている訳ですが)調子も問題なしと聞き、やっと心が落ち着いたというのが本日の感です。


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