ルポルタージュ・損害調査員 その25【貨物車積み荷損害(精密機器)】
今回紹介する対物賠償の物品はクルマではなく、特殊な精密機械となるものだ。私が横浜勤務時代のことで、事故現場は東北自動車道の福島辺りではなかったかと思う。そこで、神奈川県内内にある大手企業で特殊一品物製品を貨物屋に載せ納入先まで搬送注意追突事故の被害を受け、その製品製作会社と賠償工場を行った次第なのだ。
こういう、いわゆる物件損害で標識だとか電柱などは結構多頻度にあり、通常の調査員がその損害認定を行うケースは現在でもままあると思えるが、想定損害額1千万を超えるという物件損害を、何故私指名で担うことになったのかだが、福山の損害調査センターでは手に余ると云うことと、何れにしても物品製造企業は神奈川県内で横浜損害調査課のエリアになることと、たまたま福山を統括している宮城損害調査課に私の性状を良く知っている人物が居たと云うところが大きな要素になったと思える。通常ない変わった損害、それは適任は横浜の私だと指名して仕事の依頼を受けることになったという訳だ。
もし、その様な指名もなければ、総合職職員がおっとり刀で対応し、訳も判らず逃げの一手で弁護士依頼案件になっていたとことであろうと想定できる。
事故の概要としては、一品物特殊機械を積載搬送中に追突事故を起こされ、積んでいた製品にも被害がおよんでいたと云うことで、極限的な話としては、新品価格を賠償(残余価値分の控除を検討するのは当然)し、その納期が遅延した費用等、相当因果関係のある間接的な損害を賠償すれば済むという、まあ云って見れば賠償事故として一般的に良くある事故なのだろう。
ところが、今回事故では、その特殊な機械には直接的な損傷が余り生じていなかったこともあったと想像されるが、製造メーカーはそのまま現品を納品し、今後の性能保証の確保する意味も含め一部部品の取替をしたり、その他の関連費用が生じたので、これら損害の賠償要請を受けたというものなのだ。その、賠償総額は約1千万円になるということであった。この理由の一つとして、特殊な機械で一品物特注製品なので、代替機械を作るにもその納期は1年とかの単位になり、それでは到底納入先に対する契約不履行で、もっと莫大な遅延損害金が生じてしまうと云うこともあったと想像できる。
ところで、従前の「その22」とか「その23」で述べた横浜損害調査課の最上職はK課長なのだが、今まで述べて来た様に何かに付け私と意見の相違が出がちなのだが、この宮城損害調査課から一調査担当者を指名しての依頼にまず面白くないという思いを抱いた様だ。そんなこともあり、私の方から「こういう依頼が入ったのですが、損害調査課として不本意なら、それなりの物件鑑定なり職員に対応してもらったらどうですか?」と半分イヤミも込めて質して見た。例によって渋い顔で、指名なら致し方なかろうというものであった。
さて、この様な東北の地で生じた交通事故の損害賠償を、当時神奈川県に勤務する私が担当することに、何故なったのかという所から話を進めてみたい。
事故は、東北に地で生じ、加害者も被害者の運輸会社および積荷の納品先も現地近くな訳だが、製品は納入なされたものの、積荷の特殊な精密機器の納入メーカーは神奈川であった。この特殊な機械の損害調査は、現地にて社外調査会社によりなされてはいた。しかし、その調査調査報告書を見て私には、何か精密そうな結構大きな機械に損害が生じている様だが、その中身はほとんど判らないと云うのが実感といったものであった。ただ、相手の損害賠償請求総額としては1千万円だというものだった。
この様に、遠隔地から、損害賠償の請求権者の所在地へ、賠償交渉の依頼がなされるということは、何処の損保でも、良くある話しであろう。ところが、今回の特異性として、担当者に私個人を指定して来たことにあったと思う。その理由は、宮城の損害サービス課の責任者の補佐役が、この様な何が何だか判らないけど、精密そうな機械で神奈川だったら、私が適任(きっと私の偏執性を理解しているのだろう)とアドバイスしたことにあった様だ。
そんな訳で担当することになった訳だが、ある意味期待されて指名依頼を受けた訳であり、頑張らなければならないと思いつつ、間もなく送られてきた書類を熱心に見るものの、さっぱり判らないというのが実感であった。この様な、いくら考えても方針も定まらない案件というのは時々あるものだ。こういう案件は、会って、見て、聞いて、質してみることが、唯一の道であると考えてる。
そこで、早速相手会社に連絡し、アポを取り面談を行うことで段取りを付けた。訪れたのは、広大な敷地を有し正門に守衛所がある様な大工場だ。招かれた会議室にて打合せに入るが、私一人に対し、相手側は担当部長、課長、その他で5名位の方々が勢揃いして待ち受けていた。
さて、書類を見てもさっぱり判らんと感じつつ、お会いして、聞いて質したのだが、ある程度の質すべき内容は意識して掛かったのは当然のことだ。
まず、問い質したのは、この製品の目的・機能と価格のことだ。この価格が判らないことには、そもそも修理額となる賠償額の妥当性に疑問を生じてしまう。これは、クルマの賠償における時価額と修理費の関係と同様のことだろう。
そんな質問への回答は、製品の目的・機能だが、有機ELディスプレイ(2022年現在では、通常の液晶モニターと拮抗する程度に普及しているが、当時は時代の最先端アイテムだった)の開発実験用の装置だとのことであった。そして、その納品納入価格は約5,300万円だとのことだ。訪問するまでは、恐らく数億円はするのものだろう等と想像していたので、こんなこと云いはしないが、「何だ、フェラーリ・エンツォより安いじゃない」なんて思ったものだった。そんなことを思いながら、幾ら特注の精密機械としても、それ程に高度で高価格なものではないことを意識したのであった。
次に、質問したのは、こんな事故があって納品先ユーザーから代替え新品の要求はなかったのかと云うこだ。クルマの場合で云えば、新車要求というものに相当する問題だ。この回答は、その様な要請も受けたが、特注1品製作の機械であり、再制作するにしても数ヶ月以上の納期を要することもあり、止むなくユーザーの理解を何とか得たのだとの返事であった。その代わり、損傷の懸念を持つ部品を含めた取替や、保証期間の延長を契約条件として追加することになったのだということであった。
そんなことを質し聞きながら、相手の賠償請求の内訳となる根拠を質して行ったのであった。相手の賠償請求総額である約1千万だが、その内訳は以下の3つに分けられる。
①取替部品費 約100万円
②作業費用と出張交通費 約560万円
③ストックパーツの購入費 約340万円
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合 計 約1千万円
まず、1つ目の項目となる取替部品費として約100万円が計上されている。これは、損傷の懸念のある部品を含み、実際に取替を行った部品代としての計上だろう。その内容は、専門的過ぎて門外漢の私には判断しかねるところだが、まあ実際に取替ているんだから問題ないものと判断せざるを得ないだろう。
賠償請求の内訳の2つ目の項目となる作業費用と出張交通費だが、これが最大額となる560万円が計上されている。この内訳を質し聴取して行くのだが、作業費用として先の取替部品の作業費用は理解されるが、保証期間を延長するために、通常必要となる試運転期間(機器操作方法の指導期間を含む)の延長等が行われていることであった。
さらに、計上された作業時間当たりの単価(いわゆる工員の時間単価)を算出して見ると、自動車修理における同様単価に比し、その2倍程度と高額なものと感じられた。まあ、大企業故に固定費も大きくなり高額となるのは判るが、そもそも自製BP業の単価が安すぎるのかもしれない。
なお、出張交通費には、損害確認のためや、納品先に理解を得ることを目的とした折衝のための交通費等が含まれている事などが判明したのであった。これらは、通常の企業活動における活動と合わせ、賠償理論として相当因果関係として考えて見る必要もありそうだ。
3つめの賠償内訳として、ストックパーツの購入費として340万円が計上されてる。この計上理由を質し聴取した訳だが、ユーザーとの保証期間の1年間延長という契約追加を通じ、想定されるどの様な故障に対しても即応できる様にするとの目的での、ストック部品として購入し用意した費用との回答であった。これについては、通常の製品であれば、例えストック品として用意したとしても、使用しない部品は他の製品に転用できると思われることから、その主旨で質した。この回答は、この項目の内、100万円程度は、転用可能かもしれないが、その他は1品製作品であり転用したくとも出来ない部品なのだとの説明であった。
そんな、話を聞きながら、事故から約半年を経過しているが、ストック品で使用した実績はあるのかと質してみた。この回答は、現在のところ、使用実績はないとのことであった。
こんな第1回目の面談と聴取打合せを行い、有機ELとは何ぞやと思いながら、関連本を購入しつつ帰宅したのであった。
ここからは、大幅にはしょり概要のみを記載したい。以上の様な面談による質問と聴取を約1年間の期間におよび都合4回程の面談を繰り返したのだが、最終的な妥結可能額として330万円という段階に至ったのであった。ここに至るまでの交渉内容は、その都度親会社であるK課長に報告しつつ進めて来た訳だ。
しかし、この最終額の妥当性について、必ずしも私の本心として自信と持ってと云ったものではなかったことも、専門外の製品という理由から生じた。しかし、この最終的な妥結可能額について、結果としてそのまま承認を受け賠償交渉は完了する次第となった次第なのだった。
今回の記事で、私が言いたいことを最後に記したい。例え、どの様な未知の領域であれ、その現場に入り、見て、聞いて、質して、考えて見ることを繰り返して行くことが如何に大事なことかと強く思うのだ。我々は、単なる評論家であってはならず、実務家であらねばならないと何時も強く念じることなのだ。
余話
本件に関し感じたことを3つ記したい。
まず1点目だが、今回は被害者が大会社だったから、この様な感情を押し殺した建前としての損害賠償理論に立脚した対応を出来たものと思っている。これが、数人の零細企業等であって、今回の損害によって、その会社の命運が左右されうることが認識されたとしたら、この様な対応は私的には不可能であったと思うところだ。
2点目だが、弁護士の援助を受ければどうだったかということだが、単に情報が整理しきれておらず一切を依頼したとしたら、弁護士の対応はどの様になっただろうか。弁護士とは社会的な地位や権力を有してはいるが、その能力はピンキリなもの知見している。それと、得られるであろう報酬額に大小によっても、本領を発揮して戴けない先生もおられることを垣間見るところだ。であるから、弁護士を頼る場合であっても、少なくとも情報の整理は担当者が行う必要があるのであろう。
3点目だが、これは私の愚痴となるべきことだ。決して今回の請求額1千万が330万円になったから偉いだろうという気持は一切ないし、そもそもその妥当性自体に自信が持てない。しかし、この様な賠償を通じて、何ら有益な指示もできず、最終的な妥結額を報告しても冷ややかに聞くだけのK課長とはなんぞや。そして、そのK課長とその下位職員とのヒソヒソ話が聞こえて来た。その内容は「困ったな、300万超だから部長決裁だよ。どう書いたらいいのかなー」等というものだ。期待はしてもいないが、「ご苦労さん」の一言位云えんのかと、無念の思いを持つのは私だけであろうか。
#K課長よ君が示談したら1千万要求を330万まで減額出来るか考えて見ろ
今回紹介する対物賠償の物品はクルマではなく、特殊な精密機械となるものだ。私が横浜勤務時代のことで、事故現場は東北自動車道の福島辺りではなかったかと思う。そこで、神奈川県内内にある大手企業で特殊一品物製品を貨物屋に載せ納入先まで搬送注意追突事故の被害を受け、その製品製作会社と賠償工場を行った次第なのだ。
こういう、いわゆる物件損害で標識だとか電柱などは結構多頻度にあり、通常の調査員がその損害認定を行うケースは現在でもままあると思えるが、想定損害額1千万を超えるという物件損害を、何故私指名で担うことになったのかだが、福山の損害調査センターでは手に余ると云うことと、何れにしても物品製造企業は神奈川県内で横浜損害調査課のエリアになることと、たまたま福山を統括している宮城損害調査課に私の性状を良く知っている人物が居たと云うところが大きな要素になったと思える。通常ない変わった損害、それは適任は横浜の私だと指名して仕事の依頼を受けることになったという訳だ。
もし、その様な指名もなければ、総合職職員がおっとり刀で対応し、訳も判らず逃げの一手で弁護士依頼案件になっていたとことであろうと想定できる。
事故の概要としては、一品物特殊機械を積載搬送中に追突事故を起こされ、積んでいた製品にも被害がおよんでいたと云うことで、極限的な話としては、新品価格を賠償(残余価値分の控除を検討するのは当然)し、その納期が遅延した費用等、相当因果関係のある間接的な損害を賠償すれば済むという、まあ云って見れば賠償事故として一般的に良くある事故なのだろう。
ところが、今回事故では、その特殊な機械には直接的な損傷が余り生じていなかったこともあったと想像されるが、製造メーカーはそのまま現品を納品し、今後の性能保証の確保する意味も含め一部部品の取替をしたり、その他の関連費用が生じたので、これら損害の賠償要請を受けたというものなのだ。その、賠償総額は約1千万円になるということであった。この理由の一つとして、特殊な機械で一品物特注製品なので、代替機械を作るにもその納期は1年とかの単位になり、それでは到底納入先に対する契約不履行で、もっと莫大な遅延損害金が生じてしまうと云うこともあったと想像できる。
ところで、従前の「その22」とか「その23」で述べた横浜損害調査課の最上職はK課長なのだが、今まで述べて来た様に何かに付け私と意見の相違が出がちなのだが、この宮城損害調査課から一調査担当者を指名しての依頼にまず面白くないという思いを抱いた様だ。そんなこともあり、私の方から「こういう依頼が入ったのですが、損害調査課として不本意なら、それなりの物件鑑定なり職員に対応してもらったらどうですか?」と半分イヤミも込めて質して見た。例によって渋い顔で、指名なら致し方なかろうというものであった。
さて、この様な東北の地で生じた交通事故の損害賠償を、当時神奈川県に勤務する私が担当することに、何故なったのかという所から話を進めてみたい。
事故は、東北に地で生じ、加害者も被害者の運輸会社および積荷の納品先も現地近くな訳だが、製品は納入なされたものの、積荷の特殊な精密機器の納入メーカーは神奈川であった。この特殊な機械の損害調査は、現地にて社外調査会社によりなされてはいた。しかし、その調査調査報告書を見て私には、何か精密そうな結構大きな機械に損害が生じている様だが、その中身はほとんど判らないと云うのが実感といったものであった。ただ、相手の損害賠償請求総額としては1千万円だというものだった。
この様に、遠隔地から、損害賠償の請求権者の所在地へ、賠償交渉の依頼がなされるということは、何処の損保でも、良くある話しであろう。ところが、今回の特異性として、担当者に私個人を指定して来たことにあったと思う。その理由は、宮城の損害サービス課の責任者の補佐役が、この様な何が何だか判らないけど、精密そうな機械で神奈川だったら、私が適任(きっと私の偏執性を理解しているのだろう)とアドバイスしたことにあった様だ。
そんな訳で担当することになった訳だが、ある意味期待されて指名依頼を受けた訳であり、頑張らなければならないと思いつつ、間もなく送られてきた書類を熱心に見るものの、さっぱり判らないというのが実感であった。この様な、いくら考えても方針も定まらない案件というのは時々あるものだ。こういう案件は、会って、見て、聞いて、質してみることが、唯一の道であると考えてる。
そこで、早速相手会社に連絡し、アポを取り面談を行うことで段取りを付けた。訪れたのは、広大な敷地を有し正門に守衛所がある様な大工場だ。招かれた会議室にて打合せに入るが、私一人に対し、相手側は担当部長、課長、その他で5名位の方々が勢揃いして待ち受けていた。
さて、書類を見てもさっぱり判らんと感じつつ、お会いして、聞いて質したのだが、ある程度の質すべき内容は意識して掛かったのは当然のことだ。
まず、問い質したのは、この製品の目的・機能と価格のことだ。この価格が判らないことには、そもそも修理額となる賠償額の妥当性に疑問を生じてしまう。これは、クルマの賠償における時価額と修理費の関係と同様のことだろう。
そんな質問への回答は、製品の目的・機能だが、有機ELディスプレイ(2022年現在では、通常の液晶モニターと拮抗する程度に普及しているが、当時は時代の最先端アイテムだった)の開発実験用の装置だとのことであった。そして、その納品納入価格は約5,300万円だとのことだ。訪問するまでは、恐らく数億円はするのものだろう等と想像していたので、こんなこと云いはしないが、「何だ、フェラーリ・エンツォより安いじゃない」なんて思ったものだった。そんなことを思いながら、幾ら特注の精密機械としても、それ程に高度で高価格なものではないことを意識したのであった。
次に、質問したのは、こんな事故があって納品先ユーザーから代替え新品の要求はなかったのかと云うこだ。クルマの場合で云えば、新車要求というものに相当する問題だ。この回答は、その様な要請も受けたが、特注1品製作の機械であり、再制作するにしても数ヶ月以上の納期を要することもあり、止むなくユーザーの理解を何とか得たのだとの返事であった。その代わり、損傷の懸念を持つ部品を含めた取替や、保証期間の延長を契約条件として追加することになったのだということであった。
そんなことを質し聞きながら、相手の賠償請求の内訳となる根拠を質して行ったのであった。相手の賠償請求総額である約1千万だが、その内訳は以下の3つに分けられる。
①取替部品費 約100万円
②作業費用と出張交通費 約560万円
③ストックパーツの購入費 約340万円
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合 計 約1千万円
まず、1つ目の項目となる取替部品費として約100万円が計上されている。これは、損傷の懸念のある部品を含み、実際に取替を行った部品代としての計上だろう。その内容は、専門的過ぎて門外漢の私には判断しかねるところだが、まあ実際に取替ているんだから問題ないものと判断せざるを得ないだろう。
賠償請求の内訳の2つ目の項目となる作業費用と出張交通費だが、これが最大額となる560万円が計上されている。この内訳を質し聴取して行くのだが、作業費用として先の取替部品の作業費用は理解されるが、保証期間を延長するために、通常必要となる試運転期間(機器操作方法の指導期間を含む)の延長等が行われていることであった。
さらに、計上された作業時間当たりの単価(いわゆる工員の時間単価)を算出して見ると、自動車修理における同様単価に比し、その2倍程度と高額なものと感じられた。まあ、大企業故に固定費も大きくなり高額となるのは判るが、そもそも自製BP業の単価が安すぎるのかもしれない。
なお、出張交通費には、損害確認のためや、納品先に理解を得ることを目的とした折衝のための交通費等が含まれている事などが判明したのであった。これらは、通常の企業活動における活動と合わせ、賠償理論として相当因果関係として考えて見る必要もありそうだ。
3つめの賠償内訳として、ストックパーツの購入費として340万円が計上されてる。この計上理由を質し聴取した訳だが、ユーザーとの保証期間の1年間延長という契約追加を通じ、想定されるどの様な故障に対しても即応できる様にするとの目的での、ストック部品として購入し用意した費用との回答であった。これについては、通常の製品であれば、例えストック品として用意したとしても、使用しない部品は他の製品に転用できると思われることから、その主旨で質した。この回答は、この項目の内、100万円程度は、転用可能かもしれないが、その他は1品製作品であり転用したくとも出来ない部品なのだとの説明であった。
そんな、話を聞きながら、事故から約半年を経過しているが、ストック品で使用した実績はあるのかと質してみた。この回答は、現在のところ、使用実績はないとのことであった。
こんな第1回目の面談と聴取打合せを行い、有機ELとは何ぞやと思いながら、関連本を購入しつつ帰宅したのであった。
ここからは、大幅にはしょり概要のみを記載したい。以上の様な面談による質問と聴取を約1年間の期間におよび都合4回程の面談を繰り返したのだが、最終的な妥結可能額として330万円という段階に至ったのであった。ここに至るまでの交渉内容は、その都度親会社であるK課長に報告しつつ進めて来た訳だ。
しかし、この最終額の妥当性について、必ずしも私の本心として自信と持ってと云ったものではなかったことも、専門外の製品という理由から生じた。しかし、この最終的な妥結可能額について、結果としてそのまま承認を受け賠償交渉は完了する次第となった次第なのだった。
今回の記事で、私が言いたいことを最後に記したい。例え、どの様な未知の領域であれ、その現場に入り、見て、聞いて、質して、考えて見ることを繰り返して行くことが如何に大事なことかと強く思うのだ。我々は、単なる評論家であってはならず、実務家であらねばならないと何時も強く念じることなのだ。
余話
本件に関し感じたことを3つ記したい。
まず1点目だが、今回は被害者が大会社だったから、この様な感情を押し殺した建前としての損害賠償理論に立脚した対応を出来たものと思っている。これが、数人の零細企業等であって、今回の損害によって、その会社の命運が左右されうることが認識されたとしたら、この様な対応は私的には不可能であったと思うところだ。
2点目だが、弁護士の援助を受ければどうだったかということだが、単に情報が整理しきれておらず一切を依頼したとしたら、弁護士の対応はどの様になっただろうか。弁護士とは社会的な地位や権力を有してはいるが、その能力はピンキリなもの知見している。それと、得られるであろう報酬額に大小によっても、本領を発揮して戴けない先生もおられることを垣間見るところだ。であるから、弁護士を頼る場合であっても、少なくとも情報の整理は担当者が行う必要があるのであろう。
3点目だが、これは私の愚痴となるべきことだ。決して今回の請求額1千万が330万円になったから偉いだろうという気持は一切ないし、そもそもその妥当性自体に自信が持てない。しかし、この様な賠償を通じて、何ら有益な指示もできず、最終的な妥結額を報告しても冷ややかに聞くだけのK課長とはなんぞや。そして、そのK課長とその下位職員とのヒソヒソ話が聞こえて来た。その内容は「困ったな、300万超だから部長決裁だよ。どう書いたらいいのかなー」等というものだ。期待はしてもいないが、「ご苦労さん」の一言位云えんのかと、無念の思いを持つのは私だけであろうか。
#K課長よ君が示談したら1千万要求を330万まで減額出来るか考えて見ろ