私の思いと技術的覚え書き

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こんな儲からないことよくぞやりだした・立派

2017-10-11 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 マツダのことであるが、初代ロードスター(以下NA)のレストアをメーカー自身が行うという。そして、復刻版のリペア部品まで販売するという。この報を知り、数で勝負の自動車メーカーが、たかが知れた台数しか見込めないNAを対象に、「よくぞやりだした、立派なことよ」と思うのだ。

 当方は数千の自動車板金工場において、多くのレストアなる作業も観察する機会があった。その作業と、該当板金工場の経営者と話をして思うのは、レストアとは、商売として極めて難しいものだということだ。今回のNAでは、塗装の下処理工程にカチオン電着塗装が実施された以降のクルマだから、それほどの深刻な錆の問題は少ないのかもしれない。それでも、寒冷地のクルマや過去の修復歴によっては、腐食部位の復元に多くの工数を要することだろう。

 ちなみに、60年代のイタリア車の事例だが、ボデーを丸裸にし、すべての塗装面を剥離し、フロア床面やロッカーパネル、ドアパネルの下部など、水たまりから腐食し孔食している鋼板面を広く切り取る。そして平板鋼板から曲面やビードラインの板金整形を行いつつ切り取り部位に合わせて突合せ溶接し、サンディング後にポリパテ付け整形する。ボデーの内外すべての錆を除去した上で、ウレタンサフで包む。仮にここまでの作業を連続したとして、1日8h、月25日、12カ月を要したとしたら、延べ作業時間は2,400hとなり、レバーレート(1時間当たりの工賃売上単価)を6千円とすると14,400,000円となる。これはボデーだけの工賃でのことだ。レストア工場の経営者は、要した作業時間が請求しきれないと嘆く訳だ。

 ということで、今回のマツダが、恐らく利益が生めないレストアをやろうというという意欲は立派と思うところだ。なお、メーカーだから立派な機械も多く合理的で短時間で出来ると思う方もいるのかもしれないが、メーカーの立派な機会は生産システム用で、補修作業用の設備はほとんどないはずだし、補修作業が出来る人員も皆無だ。生産プラントの塗装ラインから人選してなんて考えも、最終上塗り工程は対応できるだろうが、レストアの肝はその上塗り塗装工程前の下処理までなのだ。想像するに、パートタイマーの元板金経験者を雇って対応するのだろう。


マツダ、初代ロードスターのレストアサービスを正式発表 年内に受付開始


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