私の思いと技術的覚え書き

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オーバーレブについて(P964事例)

2016-12-23 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 今のクルマは、ガソリンエンジンでも(ディーゼルはかなり昔から噴射ポンプのガバナ制御により最大回転数が制限されていた)、基本的に設計時に設定された最大回転数を制限する機構(レブリミッター)がエンジンECUに組み込まれている。従い、無負荷ニュートラルで、目一杯スロットルを全開にし続けても、レブリミッターで最大回転数で燃料カットするので、それ以上の回転になることはない。中には、停止時の無負荷レブリミットを恣意的にもっと下げて、例えば負荷状態なら7千rpmがレブリミットだが、4千rpmそこそこでカットさせる安全策(あくまでメーカーとしての自己防衛的な保証に備えるものであろう)を取っている場合もある。

 ということで、正常な運転をする限りにおいては、エンジン回転数が許容値を上回ることはない。ところが、AT(ディアルクラッチなどのAMT含む)ではあり得ないが、MTではオーバーレブする場合があり得るのである。それは、シフトダウン時のミスシフトであって、4速から3速にシフトダウンしようとして、誤って1速にシフトダウンするとか、5速から4速にシフトダウンしようとして2速に入れた様な場合なのだ。例えば、1速(ローギヤ)で最大レブ7千rpmで60km/hとなるクルマを例とする。4速で100km/hで走行中、中速コーナー手前で3速にシフトダウンしようとして.1速にシフトしてクラッチを繋いだ瞬間、エンジンは瞬間的に9,800rpm(実際にはタイヤがスリップ状態になるからもう少し下がるだろうが)と、レブリミットを40%も越えた回転に達するのだ。

 車両メーカーのエンジン設計においては、経時的なエンジン内部機構の劣化とか安全率を見込んで設計するだろう。しかし、ここまでのオーバーレブとなると、まず起こるのがバルブがカムプロフィールに追随できず、ジャンピングを起こし、その結果としてバルブとピストンが接触し、ピストンの破壊によるロックから、コンロッドの折損、折れたコンロッドはシリンダーブロックを突き破り(通称:足出し)エンジンが壊滅的に破壊するという現象を生じることになる。こうなると、エンジンを構成する主要部部品のほとんどが、何らかの破壊もしくは変形を生じて、エンジン・コンプリート取替が必用となり、かなりの費用を要することになる。

 写真は、ポルシェ911(964型)のものであるが、ロッカーアームの割損は、つまりピストンとバルブがクラッシュした結果であろうし、ピストンの破壊からコンロッドの折損、ブロックおよびポルシェの場合はシリンダー部が別部品であるのでシリンダーが、それらが典型的なオーバーレブの結果として破壊されていることが判る。

 このシフトミスによるオーバーレブだが、燃焼室が狭く、ほぼバルブが直立せざるを得ないディーゼルエンジンにおいては、特に生じ易いといえる。積荷を満載しているトラックなどで酷い場合、後輪がスリップしない理由もあるのだろうが、クラッチディスクがバラバラで、おまけにフライホイールのセットボルト全数(8とか10本)が剪断されてまでしまった事例を知る。

 なお、車両保険(エコノミーではない一般型)に加入していれば、いわゆるエンジン内部の故障ではあるが、シフトミスという運転操作の誤りによる偶発的事故であって、保険で対応できる損害となるだろう。








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