私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

保険金詐欺について

2020-10-22 | 事故と事件
 たまたま韓国の事例であるが、自動車事故を利用した保険金詐欺の記事を目にしたので、関わることごとを記して見たい。そもそも、韓国の事例みたいな保険金詐欺は、先進国日本では何十年も前から繰り返し起きている実態にある。

 そもそも世に保険という制度があるからこそ、これだけ日常的に生じる自動車の運転が行えるのだろう。池袋の上級国民事故は、本人はクルマの故障だと宣っているが、既に事故から1年を経て一部被害者への賠償金も支払われ示談も済んでいるものと思える。過失がなく、自動車製造者が悪いと確信するなら、保険を使う意志を否定し、自動車製造者を訴え戦うのが筋だろうが、そうしていないところにも勝手なことを云うな「じいさんよ」といいたい。もっとも、そんな頭から自らの責任を否定し、いたずらに車両メーカーと戦う姿勢を見せれば、もの凄い世間の非難を浴びることだろうが・・・。

 さて、保険という制度は、自動車、火災、船舶、各種機械、障害、などなど、世の様々な危険に備えるものとして販売されている。これら保険の大前提として、保険者(保険会社)は、被保険者(保険契約者)が善良な市民であることを前提に保険料を設定している。そのことも含め、どの保険でも対象なる事故を「急激かつ偶然外来の事故」という一文が前提となっている。つまり、故意に起こした偶然性のない事故だとか、事故後に保険契約をなしたとか、自動車などで使用損耗による故障に起因する事故は対象外となるのだ。

 この善良な契約者を対象とした保険販売であるが、保険金詐取を目的とした不良分子が紛れ込むのはどの世界でもあり得ることだが、損害保険の分野も同様だ。特に普及が著しく事故も多く、その賠償金も高額となりがちな、自動車に関わる損害保険においては、保険金詐欺の問題は業界内では軽んじられない問題のはずだ。

 保険詐欺は、以下の4区分程度に分類出来るだろう。
①保険者自体の内部に生じる犯罪。(いわゆるテーブルファイアーと云われるもの)
②保険契約者もしくは共謀者が起こす保険金詐欺。
③必ずしも保険金狙いとは限らないが、事故を作ることにより賠償金を狙う詐欺。
④いわゆる仲介人もしくは仲介人を装った詐欺。(具体例とする仲介人としては代理店とか修理工場)

日本警察による摘発
 保険金詐欺など交通特殊事件における保険金詐欺の取締状況は別添表の通りだが、これはあくまで摘発された氷山の一角に過ぎない。なお、日本での保険金詐欺は、個別の法令はなく、刑法246条詐欺罪が適用される。他国では保険金詐欺罪が規定される国(米国など)もある。


 なお、保険法では、第30条で、重大理由による保険契約の解除が、第31条で解除した保険契約では保険金を支払わない(てん補しない)。

第三十条 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、損害保険契約を解除することができる。
一 保険契約者又は被保険者が、保険者に当該損害保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として損害を生じさせ、又は生じさせようとしたこと。
二 被保険者が、当該損害保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者又は被保険者に対する信頼を損ない、当該損害保険契約の存続を困難とする重大な事由
(解除の効力)
第三十一条 損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。
一 第二十八条第一項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
二 第二十九条第一項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
三 前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害

 この様な保険金詐欺を抑止するため、損保協会では保険金不正請求ホットラインが設置されている。

保険金不正請求ホットライン(損保協会)
https://www.fuseiseikyu-hl.jp/

 また、保険契約内容、保険金請求歴、不正請求について、各損保間で情報交換する制度が設けられ、特に保険金請求歴については全種目で情報交換している。しかし、如何にIT技術を駆使したところで、そのすべてを駆逐することは困難だろう。今回の韓国の事例もそうだし、過去の我が国の大規模な保険金詐欺も、数名から数十名におよぶ犯人が、加害者になったり被害者になったりとでっち上げ事故を繰り返し作り上げ、その不自然さに気付いたことが端緒となって、一網打尽で摘発されるという場合が多い様に思える。

 一方、損害保険の車両調査を行う者(いわゆるアジャスター)には、その規則(アジャスター規則)において、業務内容を「保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認並びにそれらに付随する業務を行なう。」と規定している。非常に判り難い説明だが、アジャスターの業務は損害額だけが調査業務じゃない、事故の原因調査とか、損傷部位の技術的因果関係の調査と付随した調査も含むと規定している。ここで、損傷部位の技術的因果関係と云うのは、いわゆる整合性というもので、本当にそのクルマ同士もしくは物と、申告の通り衝突しているのかを指しているのだと理由付けられるが、この規則を記載したものの文才のなさを感じてしまうところだ。そもそも本格的保険金詐欺を目指す輩は、実際にそのクルマ同士をぶつけているし、いわゆる整合性の視点だけでは、保険金詐欺は排除できはしないと思うところだ。しかし、今日のアジャスター諸君の挙動をチラと眺めると、そもそも不正事案を排除しようという思いを持っているのか疑問を感じるところではある。
-----------------------------------------------------------------------------
BMWで故意に接触…保険金詐取36人摘発
10/22(木) 15:40配信 日本テレビ系(NNN)
Nippon News Network(NNN)

韓国で高級輸入車でわざと接触事故を起こし、保険金をだまし取っていた詐欺グループが摘発されました。故意に起こした事故は300件あまり、被害総額は1億円近くにのぼります。

高級車BMWが速度を上げ前を走行する車にぶつかります。実はこの事故、運転手が車線変更しようとする車などを狙って、故意に起こしたものです。

韓国メディアによりますと、相手に落ち度があるように事故を繰り返し、保険金をだまし取ったとして韓国警察はあわせて36人を摘発しました。

2018年3月から1年半の間に故意に起こした事故は300件あまり、被害額は日本円で1億円近くにのぼるということです。

事件を主導した男は、保険金が多く出る高級輸入車7台を中古で仕入れて犯行に及んでました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。