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20年8月の首都高川崎のポルシェ暴走追突2名死亡事故経過

2023-05-22 | 事故と事件
20年8月の首都高川崎のポルシェ暴走追突2名死亡事故経過
 2020年8月の首都高川崎でのポルシェ暴走運転による追突事故で、無辜の被害夫婦(70と60)を死亡させたと云う事故のことは過去何度も記してきた。この事故、事故から2年を越えて昨年(20年)12月に横浜地検がポルシェ運転の彦田嘉之(現在52)をやっと危険運転致死罪(最高刑懲役15年)で起訴しているのだが、警察や検察は忙しくて、なかなか事件の処理が遅延するのだろうか。外部関心者としては、あまりの処理の遅さに苛立たしくも感じるところだ。

 ところで、検察の危険運転立証の根拠として、彦田ポルシェの事故直前速度が268km/hだったとしているらしいが、これは現代車ならほぼすべての車両に装備されている、エアバッグシステムに付帯内蔵されるEDR(イベントデータレコーーダー)の記録値に基づくものと想定される。つまり、EDRでは、エアバッグ起爆(衝突)5秒前までの車速(スピードメーター指示値と同意)を0.2秒間隔で記録する規格となっており、この記録の最大値を採用しているのだろう。

 ただし、このEDR装置のデータ読み出し装置として、ほぼ業界デファクトスタンダートとしての地位を持つのが独ポッシュ社で、国内でもEDRアナリストなる社内資格とか用具を用意しており、警察関係者とか損保調査員にも、同アナリスト資格者が存在する様だ。特にある損保では、20名近いEDRアナリストを要していると聞くが、この加入費用(用具および研修費用など)で150万、毎年追加車種のデータ更新料などで50万程度をボッシュ社代理店では提示している様に聞き及ぶ。

 それと、有資格者なら当然判っていると思うが、このEDRのプリクラッシュデータ(衝突前5秒間の速度指示値)は、必ずしも実車速を示さない場合があり得ることを意識しなければならないだろう。つまり、車両が横滑りしていて、例えば真横にサイドドリフトしている状態では、車輪はほとんど回転せず、著しく過小な速度を記録することになる。また、現代車はABS+VSCなどの急減速時の車輪ロックを防ぎ操舵性能を喪失させないとか、スピンなどの車両姿勢の不安定を回復させる個別車輪だけの制動を行うが、この場合にも速度計指示値(車輪回転数)との乖離は大きく生じて来る。

 また、車検などの際もスピードメーターの誤差は一定範囲で許容されているが、これは車輪の摩耗による外径の差異だとか、接地加重の変動による有効回転半径の差異や、メーター機能そのものが持つ、精度としての限界がある。

 従って、EDR記録値が何時でも正しいとは限らないことを、分析者は意識しつつ、事故時の車両姿勢とか速度計が内在する誤差を十分以上に認識していることが肝要だろう。




追記
 キチガイに刃物という言葉があるが、幼児に高性能車を委ねることは、ほぼ同意語となる様に思える。幾ら高性能を持つ機会も、人としての理性とか抑制力がない者に委ねることは、極めて危険であり、許されざる結果を招くのは理の当然だろう。


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