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リニア幻想

2020-05-24 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 昨年(2019年)から品川から名古屋間のリニア新幹線の工事が始まっている。この新リニアは、全国JRでも収益率トップのJR東海が単独で9兆とも云われる総工費を負担するそうだ。当然、一時金で支払うことなどできまいから、何年から何十年かで償還して行くつもりだろう。しかし、今次病変は、全国新幹線でも群を抜く乗車率で儲けていた東海道新幹線も、一次は対前年比-90%とかに陥ったと報じられていた。現在全国で自主体制は解除それつつあるが、それでも襲来よりビジネス及びレジャーとも出控える傾向は長く続くだろうから、JR東海の儲け過ぎの状態は相当に影響を受けざるを得ないだろう。

 ここでは、18年前になるが山梨県にあるリニア実験船を見学した際の写真を紹介すると共に、リニア新回線のネガティブな側面を素人ながら記してみたい。なお、ここでは下記リンクに示す「エネルギー問題としてのリニア新幹線」の内容を参考とした。

 まず、リニア新幹線の走行原理のことを素人として把握している範囲で記してみたい。一般の鉄道では、レールは鉄路と表されるがごとく単純な走行路だ。その上空3m程に架線が張られ、各列車に給電を行い、列車に備えられたモーターを制御して運行している。新幹線も1964年の開業で走り始めた0系から次作の200系までは、変圧機から分巻き線を取り出しそれを切り替えて出力制御を行うタップ制御という純機械・電気的な制御で運行を始めた。それが、300系以降で、VVVF制御という可変電圧可変周波数を行えるパワー半導体によるものになったり、減速時にモーターを発電機として余剰電力を架線を通して戻すなどの高率アップが図られると共に、最高速度や乗り心地や騒音低減などの諸性能を向上してきた。

 一方リニアの走行原理だが、車両には液化ヘリウムなのか液化チッ素なのか知らぬが、超低温にすることで超伝導化したコイルに電流を瞬時に流し、回路を外部と切断してしまう。超伝導状態が続く限り、車両側としては駆動用電力は以後使用しない。ところが、通常のモーターで云うところのフィールドコイルは線路に並べられていることになる。その路盤側コイルの電流制御を列車全長の何倍かのセクションを順次移動させることで成立している。つまり端的に云うと、モーターの本体は、列車側でなく路盤側にあることになる。

 もし、セクションという概念をなくしたとすると、品川と名古屋間400kmとすると、その総ての路盤側コイルに電力供給することで、とんでもない電力が消費されることになる。しかも、その上で走れる列車は1編成(400m)だけということになってしまう。そこで、セクションという1列車毎に区切り(各1km)を作り、それを列車の動きに合わせて移動していくという緻密な外部制御が必要になる。そこで、先に述べたセクションの範囲が列車全長の何倍かしなければならない(7倍ほどという)ことが問題になる。例えば、7倍のセクション超があるとすれば、実に90%のコイルにムダな電流が流れてしまうというのだ。

 それと、クルマでも同じだが、速度を上げるに従って空気抵抗は指数関数的(二乗)で増える訳だが、消費電力としては三乗となるという。つまり、300km/hを500km/hにする電力は、(5/3)^3=4.63倍の電力となるそうだ。

 このことは、例えば過去のコンコルドがマッハで飛ぶが、細い胴体で乗客定員が少なく燃料の使用量も群を抜いて多く、ロンドン(またはパリ)とニューヨーク間を3時間で飛べるが、その運賃がクイーンエリザベス相当と同じになったという。それでも採算が取れなく、たったの16機しか作られなかったと同じことだろう。いったい、JR海はリニア新幹線の料金を従来新幹線の4倍取るのだろうか。それでなくても、新幹線の料金は高すぎる、儲け過ぎと感じている方は多いと思える中で、4倍取ったら始めの1回はともかく、継続的に乗ろうというのは、上級国民(官僚上級職含む)だけだろう。

 「エネルギー問題としてのリニア新幹線」でも文末に記しており、他の書評でも記してあったことだが、JR東海はリニアじゃなくて、従来同様の新幹線を通し、値段も下げて乗車客を増やすことが有用だと思える。

 なお、超伝導リニアのテクノロジーは、列車でなくずっと短距離の、例えば電磁砲だとか電磁カタパルトとして有効だろうと思えるのだが・・・。








エネルギー問題としてのリニア新幹線
http://web-asao.jp/hp/linear/%E9%98%BF%E9%83%A8%E8%AB%96%E6%96%87%EF%BC%88%E7%A7%91%E5%AD%A6%EF%BC%89.pdf


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