私の思いと技術的覚え書き

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目立つ色差に関連して

2007-10-30 | 車両修理関連

 写真は過日の立会の際に見掛けた一コマです。Alphard
 アルファードのフロントバンパーとフロントフェンダー部分の写真です。無事故車ですが、酷い色差が生じています。色味も違いますし、近寄って見るとメタル粒子の粒状感もまるで異なっています。カラーコードは1D2の様ですが、新車でここまで異なっていて、よくクレームにならないものだとなぁと感心してしまいました。おいおいトヨタさん、しっかりクルマを作れよなぁと云いたくなる状態です。また、これがフロント部分の鈑金修理後であれば、クレームになる可能性が高いとも感じられます。
※過去に新品の塗装済みカラーバンパーに交換した際に、色差が目立つので色を塗らしてくれと云われ困ったことがありました。

 この様にボデー部分とバンパー部分の色差が生じているのは、このクルマやメーカーに限らず結構あることです。これは、ボデー部分は、熱硬化型塗料(メラミンまたは熱硬化型アクリル)であるのに対し、バンパーはウレタン塗料であり、それぞれ別々に塗装しているからなのです。それにしても、合わせようと思えば技術的にはもっと近似色に持って行けるはずなのですが、この様にいい加減な作りをしているクルマが結構あるのです。特に近年は、このクルマの様にバンパーとボデーが同一平面上に密着して装着される構造が増えていますから、従来よりも余計に目立つのでしょう。
※当ブログの8月16日付けで記した「くるまはかくして作られる」で紹介されているセンチュリーの製作では、ボデー塗色ともっとも色差が一致するバンパーを多数の中から選択して組み付けているということが記されています。

 ところで、人間の目はいい加減なもので、同じボデー部分での色の差異があっても結構気が付かないものです。例えば、車体の比較的下部の方(ドアの中央部にプロテクターモールが装着されているクルマであればその下側等)に多いのですが、塗装が透けている(上塗り塗膜が薄く下色の影響が出ている)場合が結構あります。もっと酷い例では、輸入車でしたがルーフ部分に透けが生じているクルマを見たこともありました。しかし、これらのことにクルマのオーナーは気が付かないでいるのです。なぜ気が付かないのかといえば、途中にモール等での区切りがあったりする場合や、区切りがなくても色差が急激でなくゆっくりと変化している場合、人間の目はごまかされてしまうのです。まあ、このことを利用して、いわゆるボカシ塗装の技術を含み車体修理での塗装作業は行われているのですが。

 なお、上記の様な透けが生じている部分の塗装作業では、正常な部分で幾ら厳密に調色(多数の原色を混合して色を合わせること)をしても色は合いません。また、通常の塗装作業で透け具合までを再現することは困難ですから、広めに塗り込みつつボカシ作業でカバーするしかない訳です。この辺りが、塗装作業の大変な所でもあり、また腕の差が出るところでもあると思います。

 この様なボデーカラーの色差ですが、淡色(白っぽい色)と濃色(黒っぽい色)では、淡色の方が圧倒的に色差が目立ち易い特性があります。従って、淡色の方が、より調色に厳密さが要求されることとなります。しかし、計量調色(0.1g単位まで計測出来る計量機による調合)のみで、微調色をせずにボカシを広めに取り施工されている工場さんもある様です。なお、調色を含んで塗装技術の難易度としては、一般的にソリッド→メタリックおよび2コートパール→3コートパールの順に高くなると云われています。しかし、私が触れあう工場さんの大多数が、3コートパールよりシルバーメタリックの方が難しいという感想を述べています。シルバーメタリックは、私も大好な色ですがメタル粒子の差異やムラが目立ち易く、ボカシ目の差異も現れやすいという特性があります。また、全塗装を行う場合を想定すれば、シルバーメタリックを一切の欠点なく吹き上げるのは至難のことであるとも感じます。
 また、シルバーメタリック以外での、メタリックや2コートパールでも、下色の影響を強く受ける塗色(いわゆる止まりの悪い色)や、明暗の環境での反射光による色相の変化の度合いの大きい塗色(室内と屋外で色差の異なる色)等は、その補修塗装は結構大変だと感じます。さらに、マジョーラ系の顔料がちょっとでも入った塗色は、例え数グラムの微々たる顔料のために、100gで25千円位の費用を投じなければならないのは、大変なことだとも感じます。

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