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現代戦闘機の制御ECUは4時間毎に再起動が必要

2021-10-22 | 技術系情報
現代戦闘機の制御ECUは4時間毎に再起動が必要
 ちょっと前の、現代最新の戦闘機に関するコンピューターシステムのことを記した長い記事を転載するが、様は複雑で膨大な記述のプログラム故に、ある程度の制限時間で再起動させないとフリーズ(再起動)を起こす恐れがあると云いたいのだろう。

 私はコンピューターの専門家でもないが、現在のコンピューターはマルチタクスと呼ばれる複数以上のプログラムの処理を行っていることを意識する。それらの現在処理中のプログラム処理データそのものや、各種多種のセンサーで把握した指示値だとか座標値なども、素早く処理するために外部記憶装置(HDDなど)に書き込んでおくんでなく、CPUに直結したRAM空間に展開して、タイムラグ少なく参照、書き換えなどの処理を繰り返していると想像する。

 そうした動作の中で、これはPCでも起こり得ることだが、ソフトウェアの作り込みが悪かったり、走るソフトのアンサーバックが返って来ないだけで、そのソフトはフリーズしてしまうことがある。

 また、PCでもあり得ることだが、あるプログラムの処理を終了しても、必ずしもRAM空間に展開したデータが開放されないと云う現象がある場合があり、これが累積すると、有効な空きRAM空間が少なくなり、他のプログラムの動作が遅くなったり、全体としてキーボードの入力だとかマウスの動作が遅延したりという現象までが起きる場合がある。

 こういう症状が出た場合には、PCを再起動すれば直るんだが、場合によっては、いわゆるブルーバックと呼ばれる青い画面で、OS自体がフリーズして再起動を選ぶほかなくなることも時々ある。

 想像するに、それに近い状態が起きる恐れがあるから4時間毎の限界が生じるのだと想像するが、一般的な戦闘機だと、1つのミッションで3時間も飛び続ければ燃料も尽きる故、さほど大きな問題にはならないのだろう。しかし、旅客機だとか輸送機の場合は、連続運行10時間を越える様な空路を飛ぶ場合もあるが、これはあくまでも運行用のコンピューターの話しではなく、ミッションシステムという対戦用コンピューターシステムの話しだろうと思う。

 話しは飛ぶが、現在のPCなどパワースイッチをONしから、OSが立ち上がり、一般的なアプリケーションプログラムを使用できるまでの時間は結構時間を要する。近年HDDの代わりSSDという不揮発性メモリー素子の外部記憶装置が普及してきてある程度改善されたが、それでも瞬時にとはいかない。これはPCでなく、スマホを再起動した場合でも同じことだろう。ところが、昔のガラケーを希に古い電話帳データを見ようとして、充電して電源投入すると、ビックリする程早く各種操作ができる状態になる。

 このことは何を指しているかといえば、OSのプログラムデータ量が小さくその読み込み時間が短い故だろう。特にPCでもスマホでも、現代電子機器で表示機能のあるものは、必ずしもWindowsでなくとも何らかもウインドシステムが、下層に存在するカーネル(核)プログラムの上で走る仕組みになっているので、OS全体としては、極めて膨大なプログラムデータ量となることがあるのだろう。

 もし、WindowsOS上で動作するエンジンECUなど作ったら、IGスイッチを入れてからスタートするまで数分以上待たないと車はエンジンすら始動できないことになってしまう。現代車のECUがどんなOSの上で動作しているのか公表されていないし不詳なのだが、少なくともオーバーレイレイヤーとしてのウインドシステムは不要なのでカーネル(核)プログラムだけの読み込みでレディ状態になるので、ほとんど瞬時に起動できる。


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現代戦闘機、宿敵は「フリーズ」? 4時間に1回、シャットダウン
2016.05.21 関 賢太郎(航空軍事評論家)
航空自衛隊も導入する予定のF-35Aが、当初の予定より3年遅れて実用化される見込みです。その最大の理由はソフトウェア。「4時間に1回、シャットダウンが必要」という状況がありました。

F-35A実用化、遅延の最大理由は「ソフトウェア」
 航空自衛隊が次期主力戦闘機として導入予定のロッキード・マーチンF-35A「ライトニングII」が、2016年8月から12月のあいだにアメリカ空軍で「初期作戦能力(IOC)」を獲得すること、すなわち実用化されることがほぼ確実になりました。

 F-35Aの初号機は、2009(平成21)年11月14日に初飛行。当初、初期作戦能力の獲得は2013年ごろが見込まれていましたが、これまでたび重なるスケジュールの遅延に見舞われており、実に3年遅れの実用化になります。

 実用化の見通しが立ったのは、F-35に搭載されるコンピューターのOS上で動く「ブロック3i」ソフトウェアの開発が完了したことに由来します。

「ブロック3i」とは、パソコンやスマートフォンでいう「ブラウザ」や「ゲーム」といったアプリケーションに該当するもので、F-35Aの「ミッション(戦闘)システム」ソフトウェアです。F-35の開発が遅延した最大の理由は、このミッションシステムが原因でした。

4時間に1回、シャットダウンが必要な戦闘機
 F-35Aに搭載されるソフトウェアは、レーダーや多数のセンサーを統制し、周囲の監視に至るまでを自ら行い、集積した情報を処理したうえでコックピット内の大きなタッチパネルや、ヘルメットのバイザーに映像として投影します。

 たとえば、現代の炊飯器は人間が熟練の業でいちいち火加減を調整しなくとも、ソフトウェアが全自動でふっくらご飯を炊きあげてくれるため、そのあいだに我々はおかずの準備などができますが、これと同様に、現代の戦闘機に搭乗するパイロットもソフトウェアによって、わずらわしい雑務を行う必要がなくなりました。そしてパイロットは“人間にしかできない判断”に専念することで、搭乗する戦闘機の戦闘能力をより高く引き出すことができます。

 F-35は、既存の戦闘機よりもはるかに高度な、センサーなどの電子機器を搭載しています。そのぶんソフトウェアは極めて複雑で高度な処理をしており、「ブロック3i」のプログラムソースコードは800万行にも達しています。

 この「ブロック3i」は、2014年より「システム開発実証機(SDD)」と呼ばれるF-35の試作機に搭載され、飛行テストが行われていましたが、特に動作の安定性において大きな問題を抱えており、センサーシステムやレーダーを4時間に1回シャットダウンしなければなりませんでした。パソコンがフリーズしたならばその場で再起動すればすみますが、作戦中に戦闘機のミッションシステムがフリーズしてしまえば命にかかわるため、安定性の確保は極めて深刻な課題です。

そこにある、現代戦闘機の根本的な問題
 しかしながら2016年5月現在、「ブロック3i」は大幅に改善され、当初の3倍という安定性を確保することに成功したと、アメリカ国防総省のF-35統合プログラムオフィスは伝えます。一般的な戦闘機の任務はどんなに空中給油を重ねても、通常は8時間から10時間程度が限度なので、12時間に1度の再起動ならば許容範囲とみなすことができます。

 既存の量産型F-35Aは、ミッションシステムに「ブロック2B」を搭載していますが、今後「ブロック3i」へアップグレードが行われる見込みであり、それが完了した段階で「F-35Aの初期作戦能力獲得」が宣言されることになるでしょう。

 ミッションシステムのソフトウェアは現代の戦闘機にとって「キモ」ともいえる最も重要な部分であり、同時に最も開発が困難な要素です。F-35の開発スケジュール遅延は、“F-35という機体”そのものの設計が問題であったわけではありません。

 もし仮に、アメリカやイギリスなどの国々を中心に行われた「統合打撃戦闘機(JSF)計画」の機種選定において、このF-35ではなく、その座を同機と争ったボーイングX-32が採用されていたとしても、全く同じ問題に見舞われていたに違いありません。

「ミッションシステムの開発によるスケジュールの遅延」は、現代の戦闘機が抱える根本的な問題といえるでしょう。そして戦闘機が退役するまで半永久的に、ソフトウェアの改善は行われ続けます。【了】


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