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コストダウンと付加価値の創造に込められた思想

2021-10-22 | 問題提起
コストダウンと付加価値の創造に込められた思想
 これは世のあらゆる商品だとかサービスにも云えることだろうと考えるが、クルマの事例で考えてみたい。

1.コストダウンの事例

①プラットフォームの共有化
 プラットフォームと云えば、車体の床部分全体を含める場合も多いが、必ずしもそうとばかりはいえない。つまり、車体の床前部からセンターフロア辺りまで同じで、後部が異なるとか、ダッシュパネル前の基本骨格が同じだとか、前後は同じでセンターフロアーの長さが違いホイールベースが異なるなど様々なパターンが考えられる。

 これにより、旧来のセダンベースのプラットフォームを基本として、1BOXだとかSUVに類する多車種を作るなんてことも多用されている。

 また、特にセンターフロア辺りのプラットフォームが共通もしくは近似している場合、プラントでの製造ラインは、いわゆる混流生産という、多車種を同一ラインで流すことも多用されている。

 一方、車体前部の基本骨格を共通化することで、完成車としての前部衝突安全性能の基本が要素が決まってくると云う点も見逃せない要素だろう。何しろ、現在のクルマでは、設計はCADで、それを加工する金型(プレス、ダイキャスト、樹脂車種成形など)の製造もCADデータを転用してのCAM(コンピュータ支援製造:computer aided manufacturing)で作るのが基本だ。現在でも試作と云うことは行われているのだろうが、昔と異なり3次元CADで、ティア1サプライヤーまでが新型車製造にネットワークを介して介在し、なるべく試作回数を少なくしして、開発機関を圧縮しコストも低減する。また、試作車なりが完成したら、そのテストも、実走での官能評価も皆無ではないだろうが大幅に減り、各種台上試験でのシミュレーションテストで済ます。

 当ブログでも過去に記しているが、トヨタが世界に流行らせたエンジンカバーだが、これなども昔は、エンジン本体と車体の前部骨格の形が固まった後、各補機サプライヤーだとかワイヤリングサプライヤーなどが、配線や配管の経路だとかを、その見てくれだとか、長期耐久性も睨んで試作しつつ最終設計に至っていたと思える。と云うことで、新型車の開発にはその開発機関をそれなりに用意する必用があったのだが、今は大幅に試作を減らし、3次元CADで協力メーカーと同時に設計を開始する。だから、基本的には最終の試作で問題ないことを確認するレベルまでに至っている様に想像する。

 なぜ、こういうことが想像できるかだが、件のエンジンカバーを外して見れば良く判るが、そこに現れるのは、機能としては問題はないか、見てくれの美しさとは丸で縁のない姿となって表出してくるということがある。つまり、昔のクルマなどのエンジンルームで感じられた、整理された機能美という感じはおよそ感じられないものとなる訳だが、これもコスト圧縮という大命題の前では致し方ない問題なのであろう。

②ソフトウェア制御だから可能となったハードウェアの共有化
 例を上げれば、同じエンジンだが、グレードによって、エンジン本体はほとんど共通だが、最高出力だとか最大トルクが異なるという事例は多い。NAエンジンでもあるが、ターボ付きエンジンでは、エンジン基本形式は同じでもT1、T2・・・という例の様に、ターボ加給圧およびターボチャージャーだけが異なるだけで、制御するソフトウェア(つまりECUに内蔵)だけで、大幅に異なる性能の違いを出している事例は、中・大型トラ、バスなどに多い。当然、加給圧を高めた高出力エンジンでは、油温上昇とか水温上昇に備えて、その冷却系の細部は異なる場合もあるが、おおむねエンジン本体は共通化している場合が多い様だ。

2.付加価値の創造

①外観および内装意匠の変更によるブランド価値の創造
 これはレクサスが果たして成功したのか対して成功しなかったのか判らないところであるが、多くの少なくとも日本人および米国人としては、レクサスすなわち高級というブランド価値を生み出したと云うことなのだろう。

 しかし、その実態は多くの場合、他の車種と基本プラットフォームは同一で、従ってサスペンションなどの構成部品も共通だが、その上物デコレーションだと内装の高品質感の演出により、そのコスト上昇分よりさらに高いプライスを付けて利幅を上げるという戦略の商品だろう。

 このブランド戦略は、元々米国が早くから取り入れていて、同じGMだとキャデラックとシボレーとか、フォードだとフォードとリンカーンに分けている事例に習ったと云うところだろう。

②ハードウェア共通でソフトウェアでの差別化
 これは、PCだとかコンピューター機器では当たり前のことなのだが、ソフトウェアも技術発展しているので、同じPCでもソフトウェアのバージョンアップで機能が増えたりというのがある。それをクルマで行うことが、現状の日本車ではあくまでソフトの欠陥(バグ)を修正する程度だが、米テスラなどは別料金チャージで、ソフトウェアで新たな機能が付加されるという戦略を取っている。

 通常の設計者の考え方だと、そのハードウェアで得られるだろう最高の性能を引き出す目的でソフトウェアの設計も行うというのが当たり前の様に思う。しかし、あえて、ハードウエアとしては十分な余裕を与えておき、別料金のソフトウェアによる付加価値を生み出そうというビジネス戦略なんだろう。

 ただ、この米テスラに見られるビジネス戦略だが、今後の日本車にも現れる予兆が見られて来ている。それは自動運転絡みの問題で、現在はレベル2の自動運転レベルだが、ハードウェア的にはあえて、その設計や装備にレベル3相当に対応できるべき余裕を与えておいて、将来それはマイナーモデルチェンジの際かもしれないが、ソフトウェアのバージョンアップだけでレベル3になるとう事例が予想される。それと、こういう承知をすることとして予想できることだが、選ばれた者に、バーションアップしたレベル3相当のクルマをリアルワールドで走らせて、そのレポートを得るということが内在している様にも思える。



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