私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

鉄道車輪のこと

2008-07-30 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 昨日の事件で心穏やかでない時を過ごしております。そうは云いつつも、あれやこれやと為すべきことも多く、忙しくはしているのです。


 さて、先日のことですが、JR東海が企画主催する「新幹線なるほど発見デー」というイベントに、浜松にあるJR東海・浜松工場を見学してきました。今回は、その際のことを記してみます。

 JR東海・浜松工場は、JR東海が運行する東海道新幹線車両を中心に、その整備を行う工場です。東海道新幹線車両は16両連結の編成で、その全長は400mにもなります。従って、これを収納し整備する工場も、それだけの建屋長さを持ち、それが多数並列しています。従って、相当に広大な敷地面積を持っています。

 同イベントは、親子連れのお子様を対象としたイベントで、予想を超える来訪者の多さに驚きました。新幹線車両本体や、運転席の見学コーナー等は、凄い人だかりです。しかし、私の興味は、工場そのものや、どんな風に整備を行っているのか、使用工具はどんなものを使用しているのか等々で、一般の来訪者の興味とは異なります。まあ、仕事がらと云うものです。

 一番興味を感じたのは、車輪の整備する関係です。 ここは、一般来訪者用に特に見学の配慮はなされていませんが、その一部でしょうが見学することが出来ました。鉄道車輪は、総て鋼製ですが、たぶんクルマで云えば、クランクシャフトやコンロッド等と同様の型鍛造という製法によると思います。クルマのタイヤも走行距離に応じて摩耗して行きますが、果たして新幹線車両の鋼製車輪がどの程度の走行距離で、摩耗限度に達するのでしょうか。また摩耗限度に至らなくとも、車輪の踏面の偏摩耗という問題も生じることと想像されます。新幹線車両では経験しませんが、一般路線車両では時々ですが、ゴトンゴトンと回転に同期した音と振動を生じていることを経験します。これは、車輪踏面にフラットスポット等の偏摩耗を生じているのでしょうが、著しく乗車品質を損なってしまいます。新幹線車両で、その様な現象を経験しないと云うことは、それだけ新幹線車両の整備が行き届いているのだと思います。

 今回の新幹線整備工場では、車輪旋盤というSyarin専用の旋盤が幾つか目に付きました。機械が離れていたので目視では見えませんでしたが、家に帰って写真を見ますと、処理時間でしょうが、40分/軸、16軸/日と表示されています。専用旋盤でしょうが、結構に時間を要するものだと感じます。なお、この鉄道車両の車輪踏面ですが、ただ平滑になっていれば良いだけでなく、車輪外側から内側(フランジ側)に向かってなだらかな傾斜が付けられています。これにより、カーブを走行する際に、外側車輪がカーブ外周側に移動することで、外側車輪の径が大きく、内側車輪の径が小さくなり、スムーズな旋回を可能にしています。

 それと、高速車両では特に重要なことだと思いますが、車輪関係の亀裂等の欠陥検査が特に重要なことだと思います。長走行を行う新幹線車両では、万一にも高速走行中に疲労破壊等で車輪が割損したとすれば、とんでもない大惨事になることでしょう。

 この高速鉄道車両での大惨事のことで思い出すIce_5 のは、1998年6月に生じた独高速列車ICEの事故のことがあります。このICEでは、車輪を全鋼製ではなく弾性車輪という中間にゴムを挟んだ鋼製のリング状の車輪がレール面に接する構造のものが採用されました。これは、乗り心地やコスト面で有利な様です。しかし、ICEの事故では、外側車輪(リング)がそのたわみ変形により急速に疲労し、破壊してしまったのが事故原因となった様です。この事故により、ICEの車輪は急遽全鋼製のものに取替られたと云います。

 その他、今回の新幹線整備工場の見学では、日頃見慣れない種々雑多のことごとが、非常に興味深く見学することが出来たのでした。




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