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プッシュスタートの害(電動コラムロック機構は寿命がある)

2023-04-19 | 車両修理関連
プッシュスタートの害(電動コラムロック機構は寿命がある)
 今でのクルマに普及したプッシュスタート式のエンジン始動および停止スイッチだが、クルマと触れ合い40年を越え、そのメカニズムにも一応知悉して来たと自覚する筆者の意見としては、端的に述べればアホなメカニズムだと思っている。

 このアホと決め付ける理由はさまざまにあるのだが、そもそもプッシュスタート以前の従来型だと、ステアリングコラム軸に垂直にイグニッションキーをさして回すというものが、極常識的に採用されてきた。この理由だが、盗難防止機構としてステアリングロック機構は最低限の必須システムとなるが、このロック機構を機械的に信頼度高くしかもコスト的にも、ステアリングコラム軸に垂直の位置にイグニションキーを設置しし、そこにキーを指し廻すという合理性があった故のことだ。

 それを、プッシュスタート式にすると云うことは、特別キーを指すとかを要さず近隣に存在することで、車両によりマチマチの位置に設置されるプッシュスタートボタンを押すということになる訳だ。この車種によりマチマチの位置にあるプッシュスタートボタンだが、初めてのクルマに乗り込むと、何処あるのか戸惑うということがある。

 さて、本論だが、プッシュスタート式でもステアリングロック機構がなくなった訳でなく、その機構は装備されているのだが、従来の様にメカニカルなキーの廻す操作と連動させることは不可能となるので、別途のステアリングロック機構がコラム部に設置されており、ほぼ電動モーター駆動でロック機構の施錠をONもしくはOFFにしている訳だが、従来の極単純なメカニカルダイレクト式に比べると、その信頼性が低下するという問題がある。この信頼性低下として、走行中に勝手にロックされる様なことが起こり得れば大変な問題になるのだが、その機構からして、そういうことはないのだが、ロック施錠が開放されないというトラブルは結構起きていることが知られている。

 このロック施錠が開放されないと云うトラブルだが、それを意識するより、そもそもロック施錠が開放されないと、プッシュスタートによるエンジン始動ができうる条件の一つとしてエンジン始動ができないトラブルとして認知される場合が多いと云えるだろう。

 今回実際に知見したのワゴンR(詳細型式年式不明)だが、エンジン始動方式はプッシュスタート式だ。エンジンが始動不能となり、希に始動できる場合もあるという様な不具合だ。相談を受け、軽く見廻したが、プッシュスタートでセルモーター駆動を行う始動要件の内の何かが不具合を起こしているだろうことは予見したが、スズキ車用のOBDスキャンテスターを持っていないので、今回の様な再現性あるトラブルなら、メーカー純正のスキャンテスターを接続すれば即回答は出る。ついては、スズキ自販ディーラーへ入庫し、診断してもらったらとアドバイスするのであった。

 その後、今次不具合の原因はステアリングロック機構の不具合と判り、メーカー純正パーツを入手(5万位したらしい)して交換することで解決したという。なお、ディーラー担当者の説明によると、このステアリングロック機構は、他社の中古部品に付け替えても、正常に動作はせず、交換する場合は必ず純正新品にしなければならないとのことを云われたそうだ。このことは、おそらくロック機構の制御ロジックとして、内蔵されたSRAM(スタティックRAM(SDカードの様に記憶された認証符号を記憶するデバイス)が未記録の場合、エンジンECU等の固有識別符号(おそらく車体番号他)をロック機構のSRAMに書き込み保持し、始動時など以後の一致を常に監視するアルゴリズムがあると云うことであろう。似た様な、ロジックにABSとか主要デバイスに、エンジンECUとの一致を常に監視していて、不一致だと異常ランプを点灯させると共にそのデバイスの動作を止めるという機能があり、この場合には専用スキャンテスターでその不一致デバイスの記録コードをコーディング(書き直し)することで、正常化させることが知られている。ただし、このコーディングとかDTC(異常コード)の消去も、最近のセキュリティ強化された車両電装系(CANバスシステム)では、特定の認証コードがない限り消去や書き換えができない様にはなされているというが、CAN信号で盗難多発の現状などを鑑みるに何処までセキュリティが確保され続けるのか疑問のことではあるが・・・。

 ちなみに、何時ものことで今回トラブルを生じたプッシュスタート式ステアリングロック機構のデバイスをもらい受け、分解し何処が壊れているのかを確認してみた結果をお知らせしたい。

 このステアリングロック機構は、ステアリングコラムシャフト部に横着され、本体取り付けボルトが、規定トルクで締め込むとボルト頭がねじ切れて、簡単には緩められない機構を採用されている訳だが、こんなロックは実のところ極めて脆弱なもので、パイプレンチを噛ませてある程度の長さのパイプで延長させて廻せば、簡単にロック爪が折れてしまうというのが現実なのだ。

 同ロック機構は、上蓋もネジを使用せず、代わりにピンを4カ所程圧入してカバーを固定しているが、このピン部をドリルドして切削して削り取ることで、容易に分解できた。一番疑わしいロック機構を動かす駆動小型モーターの付近を観察すると、基板とモーターの接続部が黒く煤けている。つまりこの煤けは繰り返しの作動時に、それなりの駆動電流が断続することで、微少なアークが発生し続け生じたものであろう。そこで、モーター単体にして、12V電源に接続すると、同モーターは極ゆっくりか細いトルクで弱々しく廻る様な状態だ。そこで、さらにモーターエンドのブラシ部を外して内部を確認すると、ブラシは摩滅してほとんど残量がなく、ブラシが接触するコンミュテーター(銅)部は、摩耗して正規軸径より直系で1mm程度は細くなっている状態だ。これでは、モター制御用信号が来ても、到底モーターは正規に動作できず、今回の不具合が生じたのも理解できる。ちなみに、デバイスケーシングには”u・shin"と打刻があるが臼井国際産業だろうか?、としてもモーターは別の専業サプライヤーだろう。




 ちなみに、FAINESで幾らか調べてみると、何時ものことながら、記載内容とか説明がヘタクソで、およそ調べる者に対して教えようという気力が感じられないものなのだが。ただ、そこにスキャンテスターで読み取れるデータとしてロック作動回数があり、5千~20万超まで、表示があり、つまり、内蔵回路にカウンターが組み込まれている様だ。このカウンターは、作動回数が幾ら以上で作動を止めるというロジックは持たない様に想像できるが、今回の様なモーター内部の摩滅を想定できるということだろう。しかし、そういうことが、一言も記されていない、この修理書原文を作った、そして管理者として許諾した者は、アホでおよそ自らの業が誰のためかという意識が欠落していることが現れている。




【過去参考記事】
ソフトウェアスイッチの害
2015-11-08 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/da4c66be90383e51047a0b68afc3b7ac


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