ドアチリ狂いのことを記そうとしたら、(何時もの如く)長駄文となってしまった。クルマのボデーに感心ある方のみ読んで戴ければ・・・。
この版だとか様々に触れあう知人などから聞く内容で、現在の新車ディーラーの作業を区分すると、車検とか点検が多いのは当然のこととして判るが、リコール修理の比率が私が実体験した遙かな(ちょっとオーバーか)昔とは異なり、格段に増えている様子が伺える。私のディーラー時代の体験としては、いわゆるクレーム修理というのは結構多かったが、リコール修理というのは、それ程多くはなかったという思いだ。これは、一つはリコールしないで点検とかで入庫した際、内緒でやっていた外秘改修も入れての話だ。それでは、その昔どんなクレームが多かったのかと云えば・・・。
①ビビリ音とか風切り音などノイズ。
②雨漏れ。(トランク内とか多かった。)
③ドアとか、いわゆる蓋物パーツのチリ狂い。
などが多かった様に思い出される。この内、ドアの狂いのことだが、これは新車から狂っているのは、新車発売から半年ぐらいのクルマが多くて(つまり初期ロット)、生産行程での品質管理不安定が要因だったと感じる。ところで、これはクレームではないが、新車から4、5年経過し走行も5、6万キロ走るとドアが下がって、閉める際にドアロックとストライカーが当たり、閉まりが悪いという現象は結構あった。この原因だが、ドアヒンジのピンの摩耗もあるが、ドアパネル本体の剛性が低いことによる垂れという問題もあったことを回想する。とにかく、比較的最近(20年程以前)まで、板金作業で新品ドアに交換したら、当然チリ合わせを行うのだが、内蔵(ガラス、モーター、ロックなど)付けると下がるから若干上に合わせるのがコツだと云う板金屋さんが多くいたものだ。これだから、新車プラントでも、ドア内蔵付ける前に塗装するから、最終的にドア垂れでチリが狂いクレームになる事例となったのだろう。
ところが、現在はこのようなドアの剛性に起因したドア垂れはなくなった。この理由は、テーラードブランク鋼板にあるのだということが、今回の主旨なのだ。テーラードとは洋服で「仕立てる」とかの意味だが、背広などで、「吊るし」と「仕立て」(テーラー××店など)があるが、それぞれ別厚板の鋼板を溶接してブランク(打ち抜きの意)したものだ。つまり、ドア開時の剛性の大きなウェイトを占めるドアインナーパネルのヒンジ装着部から15cm前後を厚い鋼板にして、その後部は薄い鋼板で過大に重量増加を防ぐというものだ。このテーラードブランク鋼板は、現在の一体式サイドアウターパネルでは、極めて高品位な溶接が可能なレーザービーム溶接で接合されるが、ドアインナーの場合、トリム装着で隠れる部位なので、下記写真の様に明らかに溶接されていると判るものだ。ちなみに、このドアは至近にあったBMWミニ(R50)のもので、ドア各部の板厚を計測すると、ドアアウター0.9mm、ドアインナー前1.6mm、ドアインナー後0.9mmで、ドアインナー前部は後部より1.8倍近く板厚を上げていることが判る。なお、現代車では乗用および商用トラック関わらず、ドアインナーは、テーラードブランクが使われている。もし、今回初めて聞いたという方は、機会があったら観察して確かめて欲しい。
更に最近のこと
昨今ボデー関係のアルミ材の比率は増えつつあるが、かなり昔から、それなりの輸入車だとか、国産車でのオールアルミのNSXは別格として、R32のフロントフェンダーなどにも使われてきた。これらのアルミ材は、製法として引き抜き(押し出し)材もあるが板材としてのものが多数だった。しかし、近年のアルミ化で見逃せないのは、板材に加えてキャスト材(ダイキャスト)が増えていることを知っておきたい。例えばR35(現行GTR)のドアは、アウターパネルは板材だが、インナーパネルはキャスト材(米アルコア社製と公表)となっている。このキャスト材は、金型設計によって、必要な板厚に自由自在に変えることができる訳で、ドアインナー前部の板厚と後部では当然異なっているだろう。また、シリンダーブロックなどで見られる要所のリブ補強なども自在だ。更に、R35も含め、最近のベンツやレクサスLCなど、ストラットタワー部がアルミキャスト製になっているのも同様なのだ。従来の鋼板だと2~3枚を重ねて補強するなどしていたのが、キャストだとシミュレーション計算で最適解が得られるということだろう。なお、ストラットタワーと記したが、このキャスト製はストラット式には使われない。ハイマウントタイプのアッパーアームの位置剛性を高めるのが目的なのだ。従来のストラット型でも、アッパーマウント部をチューニング用品としてピロー化したり、タワーバーを装着したりと、それなりの剛性アップはあるのだろう。しかし、アッパーマウントの位置の狂いが寄与するアライメント変化は、ロワジョイントとのスパンが長いがため、それ程に大きな影響は受けないのだ。
この版だとか様々に触れあう知人などから聞く内容で、現在の新車ディーラーの作業を区分すると、車検とか点検が多いのは当然のこととして判るが、リコール修理の比率が私が実体験した遙かな(ちょっとオーバーか)昔とは異なり、格段に増えている様子が伺える。私のディーラー時代の体験としては、いわゆるクレーム修理というのは結構多かったが、リコール修理というのは、それ程多くはなかったという思いだ。これは、一つはリコールしないで点検とかで入庫した際、内緒でやっていた外秘改修も入れての話だ。それでは、その昔どんなクレームが多かったのかと云えば・・・。
①ビビリ音とか風切り音などノイズ。
②雨漏れ。(トランク内とか多かった。)
③ドアとか、いわゆる蓋物パーツのチリ狂い。
などが多かった様に思い出される。この内、ドアの狂いのことだが、これは新車から狂っているのは、新車発売から半年ぐらいのクルマが多くて(つまり初期ロット)、生産行程での品質管理不安定が要因だったと感じる。ところで、これはクレームではないが、新車から4、5年経過し走行も5、6万キロ走るとドアが下がって、閉める際にドアロックとストライカーが当たり、閉まりが悪いという現象は結構あった。この原因だが、ドアヒンジのピンの摩耗もあるが、ドアパネル本体の剛性が低いことによる垂れという問題もあったことを回想する。とにかく、比較的最近(20年程以前)まで、板金作業で新品ドアに交換したら、当然チリ合わせを行うのだが、内蔵(ガラス、モーター、ロックなど)付けると下がるから若干上に合わせるのがコツだと云う板金屋さんが多くいたものだ。これだから、新車プラントでも、ドア内蔵付ける前に塗装するから、最終的にドア垂れでチリが狂いクレームになる事例となったのだろう。
ところが、現在はこのようなドアの剛性に起因したドア垂れはなくなった。この理由は、テーラードブランク鋼板にあるのだということが、今回の主旨なのだ。テーラードとは洋服で「仕立てる」とかの意味だが、背広などで、「吊るし」と「仕立て」(テーラー××店など)があるが、それぞれ別厚板の鋼板を溶接してブランク(打ち抜きの意)したものだ。つまり、ドア開時の剛性の大きなウェイトを占めるドアインナーパネルのヒンジ装着部から15cm前後を厚い鋼板にして、その後部は薄い鋼板で過大に重量増加を防ぐというものだ。このテーラードブランク鋼板は、現在の一体式サイドアウターパネルでは、極めて高品位な溶接が可能なレーザービーム溶接で接合されるが、ドアインナーの場合、トリム装着で隠れる部位なので、下記写真の様に明らかに溶接されていると判るものだ。ちなみに、このドアは至近にあったBMWミニ(R50)のもので、ドア各部の板厚を計測すると、ドアアウター0.9mm、ドアインナー前1.6mm、ドアインナー後0.9mmで、ドアインナー前部は後部より1.8倍近く板厚を上げていることが判る。なお、現代車では乗用および商用トラック関わらず、ドアインナーは、テーラードブランクが使われている。もし、今回初めて聞いたという方は、機会があったら観察して確かめて欲しい。
更に最近のこと
昨今ボデー関係のアルミ材の比率は増えつつあるが、かなり昔から、それなりの輸入車だとか、国産車でのオールアルミのNSXは別格として、R32のフロントフェンダーなどにも使われてきた。これらのアルミ材は、製法として引き抜き(押し出し)材もあるが板材としてのものが多数だった。しかし、近年のアルミ化で見逃せないのは、板材に加えてキャスト材(ダイキャスト)が増えていることを知っておきたい。例えばR35(現行GTR)のドアは、アウターパネルは板材だが、インナーパネルはキャスト材(米アルコア社製と公表)となっている。このキャスト材は、金型設計によって、必要な板厚に自由自在に変えることができる訳で、ドアインナー前部の板厚と後部では当然異なっているだろう。また、シリンダーブロックなどで見られる要所のリブ補強なども自在だ。更に、R35も含め、最近のベンツやレクサスLCなど、ストラットタワー部がアルミキャスト製になっているのも同様なのだ。従来の鋼板だと2~3枚を重ねて補強するなどしていたのが、キャストだとシミュレーション計算で最適解が得られるということだろう。なお、ストラットタワーと記したが、このキャスト製はストラット式には使われない。ハイマウントタイプのアッパーアームの位置剛性を高めるのが目的なのだ。従来のストラット型でも、アッパーマウント部をチューニング用品としてピロー化したり、タワーバーを装着したりと、それなりの剛性アップはあるのだろう。しかし、アッパーマウントの位置の狂いが寄与するアライメント変化は、ロワジョイントとのスパンが長いがため、それ程に大きな影響は受けないのだ。