私の思いと技術的覚え書き

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圧入部品の取替について

2019-05-29 | 車両修理関連
 これは、整備のプロに伝えるべき話ではないことを重々承知で、これからスキルアップを欲する方向けに記す内容です。そういう訳で、何を今更などと思わず、見て戴ければ幸いに思います。

 つい先日、車検整備に出したクルマを引き取りに訪れた整備工場で見た油圧プレス整備機器(写真1と2)です。油圧プレスは、指定や認証工場に法令上で最低限求められる機器ではありませんが、その有用性から保有していない整備工場の方が少ないことでしょう。

 さて、該当の油圧プレス機器は作業後の放置状態ですが、そのセットされた受け治具や、下部に転がってる部品(大型車のトルクロッドブッシュ)を見れば、この取替を行ったことは一目瞭然です。この大型車用トルクロッドブッシュは、径100mm弱もある様な大きなもので、ロッドAssyで多分20kg近くはあるのだと思います。それを、明かな自製手作りの受け治具と圧入(インサート)および抜き取り(リプレース)に利用して行っていることが判ります。このブッシュはアウターリングとインアーブッシュ部の間をゴムで加硫接着されており、リプレースおよびインサート時には、ロッドのブッシュ嵌合部を治具で受け止め、アウターリングをプレスすることで行える訳です。インナーブッシュ部を押しても、ゴムの弾力がありますから強い力は働かず、ゴムが断裂してしまうことでしょう。

 ところで、ラバーブッシュの作業と共に油圧プレスを使う作業として、圧入されたベアリングの取替が行われるケースは多いことでしょう。FF車のステアリングナックルに使用されている複列ボールベアリングなど、昨今はユニットベアリングで、ハブ付きで補給されボルト固定されていますから、油圧プレスを使う機会は減っていると思います。しかし、ちょっと以前のクルマなど、圧入されスナップリングで最終固定されている場合も多く、ヘタクソ(表現が悪いですが力の作用を理解しない者のこと)が作業すると、ナックル本体を曲げてお釈迦にしてしまったという話しは時々耳にします。

 ということで、ベアリングなどを取替る際に、最低限意識しなければならぬ本当に基礎的な内容を記してみます。なお、これはあくまで原理原則で、構造によっては、抜き取り時にベアリングボールに負荷を与えざるを得ない場合もありますので、その様な場合はベアリングの取替が原則となります。要点としては、以下の様な内容となるでしょう。(写真3を参照)
①抜き取り(リプレース)時にアウターレースのみを加圧すること。(止むなくインナーレースを加圧する場合は、ボールに打痕もしくは変形を生じる可能性がありますから、ベアリングは取替が原則です。)

②圧入(インサート)時も、アウターレースのみを加圧すること。なお、インアーレースを加圧して圧入する構造は、通常はあり得ないハズです。

③リプレースもしくはインサート時は、油圧プレスの圧力計に注意を払うこと。正常にリプレースされれば、それ程油圧は立ち上がらず、適当な油圧の範囲で留まるハズです。これが異常に高圧になるということは、治具のセットが間違っていないか要確認でしょう。

④インサート時は、挿入されたベアリングなりが正規の位置に着底すれば、油圧は急激に立ち上がります。ハンドポンプの手応えと共に、妥当な油圧の範囲で留め、正規の位置に着底しているのを確認すればこと足りるでしょう。FF車の複列ベアリングなどでは、インナースナップリング溝の位置で確かめられるハズです。

⑤リプレースおよびインサートにおいて、だいたいがメーカーの純正SSTは用意されているものですが、そんなの前部揃えていることは例えディーラーであっても完璧ではないでしょう。適当な代用品(よく利用するのが各サイズのボックスビット)を利用したり工夫が必要でしょう。また、受け具は場合によってはある程度の厚板廃材から冒頭に記した様な自製治具を作る工夫が求められることでしょう。




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