北海道・直線路でセンターラインオーバーしてトレーラー右後輪部と乗用車が衝突・重傷
この事故だが、北海道森町(函館から北方向30キロ程の地)で、センターラインのあるほぼ直線路で、乗用車側がセンターラインオーバーし、対向の大型トレーラーは左方向へ回避動作をしつつ急制動したものの、トレーラー右後輪(前側)に激突したという事故だ。
本事故には、トレーラー後方車のおそらくドライブレコーダーの動画も不鮮明ながら見ることができるが、明らかに乗用車側がセンターラインオーバーしつつ大型トレーラーは左外側線側に避けようとしているのが判る。ぶつかった瞬間は、飛び散る埃などで見難いが、乗用車はオフセットバリア衝突と同様に車両が右廻りほぼ90°近く回転しつつ、乗用車側車線側に跳ね飛ばされている。驚くのはトレーラー側も後方部が衝突の瞬間左方向へ横滑りしている(0.5-1.0m程)のが見て取れる。
現場には大型トレーラー後輪のスリップ制動痕がダブルタイヤの平行した2本がクッキリ残された画像もある。トレーラーは重トレーラーではなく平箱車体で積み荷のホロシートが被されているので積車状態であったのだろう。また、現在はすべての車両にABS(アンチロックブレーキシステム)が義務付けられているが、もっとも最初に法令で装着が義務付けられたのがトレーラーとバスだった。これは、トレーラーがブレーキロックにより方向安定性を失い易いとか、バスの場合は多人数乗車で多人数の負傷者を考慮したことにあるのだろう。ABS付きの場合、今回の様な制動スリップ痕が付き難い(ロックしないから)とされているのだが、今回事故ではほぼロック状態であったことが見て取れる。また、乗用車の衝突で大型車のスチールホイールがここまで曲がるかという該当車輪ホイールの大変形にも驚くが、この変形のしかたからも衝突の瞬間は回転していなかったことが想定できる変形をしている。
乗用車側の損傷写真は少なく、判然としかねる部分もあるが、バリヤオフセット試験(有効衝突速度55キロ)より若干大きいかなと見て取れる。ここで。思考するのは大型車と乗用車など、すなわち大きな重量差がある衝突の場合、伝え合う力の大きさは作用反作用の法則から同一となるが、衝突での運動量(mv)の交換という力学が働くが、その結果として速度変化(⊿V)が大きく異なることを意識しなければならない。この速度変化により、搭乗員に作用する加速度は大きく変わる。
ここで、自己は一次元衝突と二次元衝突があるが、一次元とはXもしくはYの単軸上で生じる(事故の軸線が一直線上ということ)で、二次元とはそれぞれ車両の進行方向がXおよびY軸に別れる(代表的なのは交差路での出合い頭事故)ということになる。今回の事故は、純な一次元かと云えば、僅かに傾斜を持って衝突しているが、ほぼ一次元衝突と見なせると仮定して話を進めたい。
物体の衝突運動では、運動量保存の法則というのがあり、衝突直前の相互の運動量の和は、衝突の短時間(0.1-0.2sec)で運動量の交換という作用がなされるが、その後の運動量の和は衝突前と同じということになる。数式を使うと複雑化するのであまり使いたくないが、最低限として以下のことを云うと理解する。
m1・v1+m2・v2=m1・v1'+m2・v2'
という公式で、mたる質量は変わりようが、衝突後のvはそれぞれ変化するが、運動量の和は変わらないということを表している。すなわち、質量も運動量の和も変わらないと云うことは、速度の交換が成し得ることを示している。
ここで正面衝突というv1とv2の速度が真逆だということを考慮すると以下の算式が相当することが理解できる。つまり、v1とv2は速度ベクトルが真逆だから、引き算となる。
m1・v1ーm2・v2=(m1+m2)・v3
よって、v3を求める式は、以下となることが判る。ここで、v1を正数としてv2を引いているので、v3が整数なら、v1の方向へ、負数ならv2の方向への速度と理解する。
v3=m1・v1-m2・v2/m1+m2
今回の事故をm1とv1をトレーラーとし、m2とv2を乗用車の前提で、双方重量がトレーラー20トン、乗用車1トン、速度はそれぞれ真逆の50kmhという前提でv3(Vc)を代入して求めると、以下の様になる。
前提 20トン=20000hg 1トン=1000kg 50km/h=13.9m/sec
v3(Vc)=(20000×13.9ー1000×13.9)/20000+1000
=(278000ー13900)/21000
=264200/21000
=12.58 m/sec
=46.44 km/h
となり、衝突直後に運動量の交換が行われ、v1方向の速度は46km/hとなる。つまり、v1すなわちトレーラーそ原速度は50km/hだったと仮定したので、僅か4km/hが有効衝突速度となる。一方、v2すなわち乗用車の速度は50km/hが逆方向の46km/hとなるので、合算して96km/hが有効衝突速度となる。
ここで、混乱を生じるのだが、同車両(同質量)で同速度の車両が、一次元正面衝突したとすれば、相互車両が正にその位置で停止するので、衝突速度=有効衝突速度となる。一方、同車両(同質量)が停止車に、一次元追突したとすれば、追突車の速度はVcで一致するのだが、これは1/2となり、有効衝突速度は追突車の速度の1/2となる。これを感覚的に見れば、バリヤの様に質量が無限大相当に大きいほど、衝突速度は有効衝突速度に近づく。一方、軽いものほど、有効衝突速度は小さくなり、速度変化も小さくなることは理解できるだろう。
ところで、乗用車の単独損傷状態からその有効衝突速度を想定した場合、対バリヤオフセット試験(衝突速度55km/h)より幾分大きい様に右側面は写した写真はないが見える。しかし、先の計算で示した96k/mなんていう高速度とは想像もできない。このことは、トレーラーおよび乗用車の速度がそもそも仮定での50km/hであり、しかもトレーラーは危険を感じてホイールロックする制動痕を残しているから、衝突速度がもっと低かったと云う考え方もできる。また、もう一つの考慮点として、トレーラーの右後輪タイヤ前方には長さ3m程に想定できる、荷積み盤木材の収納バスケットがあるが、これが相当程度に塑性変形しつつ、最終的に右後輪タイヤの破裂とホイールの大変形を起こさせていることが判る。ここで、長さ3mの塑性変形を生じせしめていると云うのは、減速加速度を軽減させる大きな影響を与えたと見なすことが想像できる。つまり、次の様に思考すると理解し易いと思うが、オフセットバリヤ試験を行う乗用車で、車体前方に適度な潰れ剛性を持つ長さ3mのクラッシュボックスを付すか、バリヤ側に設置しても等価だが、その状態で55km/hのオフセット試験を行った場合を想定して欲しい。この場合、対バリヤ衝突と云えども、車両の変形量は減じられ、そもそも有効衝突速度の状態とは異なる軽減された車体変形に留まるだろう。
今回の事故、私の経験的見立てとしては、乗用車の有効衝突速度は70km/h相当程度ではないのかと想定できる車体変形を生じているという想像をする。
なお、衝突運動には反発力という要素を考量する場合がある。この反発係数は最小が0で最大値は1までの値を取る。代表例としてゴルフでロングショットする場合にクラブの周速度を仮に100km/hとして、ボールとの反発係数は完全弾性衝突で1だと仮定すると、クリーンショットしたボールの初速は150km/hにもなることになる。ところが、自動車の衝突では、一定以上の塑性変形する衝突では、ほとんど反発せず、事実上反発係数はゼロと見なして良いと云われる。つまり、高速バリヤの特にフルラップバリヤ試験では、試験直後のバリアと衝突車の離れる距離は1m以内に留まる。ただし、オフセット衝突だとかでは、車体は回転しつつ横にすっ飛ぶのだが、これは反発と云うより、衝突の際に生じた偶力により、横とか斜め前方にすっ飛ぶのであって、反発しているのではないと解される。
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「かわしたがぶつかった…」トレーラーと乗用車が正面衝突 乗用車の男性が頭から血を流し病院搬送 森町
HBT北海道ニュース 2023年 5月26日 12:21 掲載
26日朝、北海道森町の国道でトレーラーと乗用車が正面衝突し、乗用車を運転していた62歳の男性が病院に運ばれました。
午前7時前、森町上台町の国道5号で、札幌方向に走っていたトレーラーと対向車線を走っていた乗用車が正面衝突しました。この事故で、乗用車を運転していた62歳の男性がハンドルと運転席の間に挟まれ頭から血を流して病院に運ばれました。意識はあるということです。
現場は見通しの良い直線道路で、トレーラーの運転手は「乗用車側が対向車線にはみ出してきたので、かわしたがぶつかった」と話しているということで、警察が当時の状況を調べています。
この事故だが、北海道森町(函館から北方向30キロ程の地)で、センターラインのあるほぼ直線路で、乗用車側がセンターラインオーバーし、対向の大型トレーラーは左方向へ回避動作をしつつ急制動したものの、トレーラー右後輪(前側)に激突したという事故だ。
本事故には、トレーラー後方車のおそらくドライブレコーダーの動画も不鮮明ながら見ることができるが、明らかに乗用車側がセンターラインオーバーしつつ大型トレーラーは左外側線側に避けようとしているのが判る。ぶつかった瞬間は、飛び散る埃などで見難いが、乗用車はオフセットバリア衝突と同様に車両が右廻りほぼ90°近く回転しつつ、乗用車側車線側に跳ね飛ばされている。驚くのはトレーラー側も後方部が衝突の瞬間左方向へ横滑りしている(0.5-1.0m程)のが見て取れる。
現場には大型トレーラー後輪のスリップ制動痕がダブルタイヤの平行した2本がクッキリ残された画像もある。トレーラーは重トレーラーではなく平箱車体で積み荷のホロシートが被されているので積車状態であったのだろう。また、現在はすべての車両にABS(アンチロックブレーキシステム)が義務付けられているが、もっとも最初に法令で装着が義務付けられたのがトレーラーとバスだった。これは、トレーラーがブレーキロックにより方向安定性を失い易いとか、バスの場合は多人数乗車で多人数の負傷者を考慮したことにあるのだろう。ABS付きの場合、今回の様な制動スリップ痕が付き難い(ロックしないから)とされているのだが、今回事故ではほぼロック状態であったことが見て取れる。また、乗用車の衝突で大型車のスチールホイールがここまで曲がるかという該当車輪ホイールの大変形にも驚くが、この変形のしかたからも衝突の瞬間は回転していなかったことが想定できる変形をしている。
乗用車側の損傷写真は少なく、判然としかねる部分もあるが、バリヤオフセット試験(有効衝突速度55キロ)より若干大きいかなと見て取れる。ここで。思考するのは大型車と乗用車など、すなわち大きな重量差がある衝突の場合、伝え合う力の大きさは作用反作用の法則から同一となるが、衝突での運動量(mv)の交換という力学が働くが、その結果として速度変化(⊿V)が大きく異なることを意識しなければならない。この速度変化により、搭乗員に作用する加速度は大きく変わる。
ここで、自己は一次元衝突と二次元衝突があるが、一次元とはXもしくはYの単軸上で生じる(事故の軸線が一直線上ということ)で、二次元とはそれぞれ車両の進行方向がXおよびY軸に別れる(代表的なのは交差路での出合い頭事故)ということになる。今回の事故は、純な一次元かと云えば、僅かに傾斜を持って衝突しているが、ほぼ一次元衝突と見なせると仮定して話を進めたい。
物体の衝突運動では、運動量保存の法則というのがあり、衝突直前の相互の運動量の和は、衝突の短時間(0.1-0.2sec)で運動量の交換という作用がなされるが、その後の運動量の和は衝突前と同じということになる。数式を使うと複雑化するのであまり使いたくないが、最低限として以下のことを云うと理解する。
m1・v1+m2・v2=m1・v1'+m2・v2'
という公式で、mたる質量は変わりようが、衝突後のvはそれぞれ変化するが、運動量の和は変わらないということを表している。すなわち、質量も運動量の和も変わらないと云うことは、速度の交換が成し得ることを示している。
ここで正面衝突というv1とv2の速度が真逆だということを考慮すると以下の算式が相当することが理解できる。つまり、v1とv2は速度ベクトルが真逆だから、引き算となる。
m1・v1ーm2・v2=(m1+m2)・v3
よって、v3を求める式は、以下となることが判る。ここで、v1を正数としてv2を引いているので、v3が整数なら、v1の方向へ、負数ならv2の方向への速度と理解する。
v3=m1・v1-m2・v2/m1+m2
今回の事故をm1とv1をトレーラーとし、m2とv2を乗用車の前提で、双方重量がトレーラー20トン、乗用車1トン、速度はそれぞれ真逆の50kmhという前提でv3(Vc)を代入して求めると、以下の様になる。
前提 20トン=20000hg 1トン=1000kg 50km/h=13.9m/sec
v3(Vc)=(20000×13.9ー1000×13.9)/20000+1000
=(278000ー13900)/21000
=264200/21000
=12.58 m/sec
=46.44 km/h
となり、衝突直後に運動量の交換が行われ、v1方向の速度は46km/hとなる。つまり、v1すなわちトレーラーそ原速度は50km/hだったと仮定したので、僅か4km/hが有効衝突速度となる。一方、v2すなわち乗用車の速度は50km/hが逆方向の46km/hとなるので、合算して96km/hが有効衝突速度となる。
ここで、混乱を生じるのだが、同車両(同質量)で同速度の車両が、一次元正面衝突したとすれば、相互車両が正にその位置で停止するので、衝突速度=有効衝突速度となる。一方、同車両(同質量)が停止車に、一次元追突したとすれば、追突車の速度はVcで一致するのだが、これは1/2となり、有効衝突速度は追突車の速度の1/2となる。これを感覚的に見れば、バリヤの様に質量が無限大相当に大きいほど、衝突速度は有効衝突速度に近づく。一方、軽いものほど、有効衝突速度は小さくなり、速度変化も小さくなることは理解できるだろう。
ところで、乗用車の単独損傷状態からその有効衝突速度を想定した場合、対バリヤオフセット試験(衝突速度55km/h)より幾分大きい様に右側面は写した写真はないが見える。しかし、先の計算で示した96k/mなんていう高速度とは想像もできない。このことは、トレーラーおよび乗用車の速度がそもそも仮定での50km/hであり、しかもトレーラーは危険を感じてホイールロックする制動痕を残しているから、衝突速度がもっと低かったと云う考え方もできる。また、もう一つの考慮点として、トレーラーの右後輪タイヤ前方には長さ3m程に想定できる、荷積み盤木材の収納バスケットがあるが、これが相当程度に塑性変形しつつ、最終的に右後輪タイヤの破裂とホイールの大変形を起こさせていることが判る。ここで、長さ3mの塑性変形を生じせしめていると云うのは、減速加速度を軽減させる大きな影響を与えたと見なすことが想像できる。つまり、次の様に思考すると理解し易いと思うが、オフセットバリヤ試験を行う乗用車で、車体前方に適度な潰れ剛性を持つ長さ3mのクラッシュボックスを付すか、バリヤ側に設置しても等価だが、その状態で55km/hのオフセット試験を行った場合を想定して欲しい。この場合、対バリヤ衝突と云えども、車両の変形量は減じられ、そもそも有効衝突速度の状態とは異なる軽減された車体変形に留まるだろう。
今回の事故、私の経験的見立てとしては、乗用車の有効衝突速度は70km/h相当程度ではないのかと想定できる車体変形を生じているという想像をする。
なお、衝突運動には反発力という要素を考量する場合がある。この反発係数は最小が0で最大値は1までの値を取る。代表例としてゴルフでロングショットする場合にクラブの周速度を仮に100km/hとして、ボールとの反発係数は完全弾性衝突で1だと仮定すると、クリーンショットしたボールの初速は150km/hにもなることになる。ところが、自動車の衝突では、一定以上の塑性変形する衝突では、ほとんど反発せず、事実上反発係数はゼロと見なして良いと云われる。つまり、高速バリヤの特にフルラップバリヤ試験では、試験直後のバリアと衝突車の離れる距離は1m以内に留まる。ただし、オフセット衝突だとかでは、車体は回転しつつ横にすっ飛ぶのだが、これは反発と云うより、衝突の際に生じた偶力により、横とか斜め前方にすっ飛ぶのであって、反発しているのではないと解される。
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「かわしたがぶつかった…」トレーラーと乗用車が正面衝突 乗用車の男性が頭から血を流し病院搬送 森町
HBT北海道ニュース 2023年 5月26日 12:21 掲載
26日朝、北海道森町の国道でトレーラーと乗用車が正面衝突し、乗用車を運転していた62歳の男性が病院に運ばれました。
午前7時前、森町上台町の国道5号で、札幌方向に走っていたトレーラーと対向車線を走っていた乗用車が正面衝突しました。この事故で、乗用車を運転していた62歳の男性がハンドルと運転席の間に挟まれ頭から血を流して病院に運ばれました。意識はあるということです。
現場は見通しの良い直線道路で、トレーラーの運転手は「乗用車側が対向車線にはみ出してきたので、かわしたがぶつかった」と話しているということで、警察が当時の状況を調べています。