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シビックタイプR納車直前に全損事故で時価額に争い

2022-10-11 | 事故と事件
シビックタイプR納車直前に全損事故で時価額に争い
 今日のYahooニュースで知る、オリジナルソースは"ベストカーWeb"だが、下記に転載した上で過去から類似案件も含め多数の賠償事案に携わった者の私見も含め意見として記したい。

 記事表題は「被害者は泣き寝入りしろと? もらい事故で270万円自腹?? 極上タイプRを襲った保険会社の無情対応」と云うのだが、その概要としては次の様なものだ。
 今回の被害車両はシビックタイプR(FD2型)で、同タイプRとしては三台目モデルで、その販売年は2007-2010年というもので、現在より12年ほど前の車両だ。こんなに古いモデルだが、Goonetで該当車を検索してみると該当車は136台あり、その中古車販売価を確認してみると、その販売価は最高490万、最低186万までと広く分布している。そんな中、今回の事故では件の販売店では450万円で販売契約し、既に販売者名義に名義変更まで済ませ、納車しようとする矢先に信号無視の相手にぶつけられ損害を生じた。

 この事故で対物の賠償保険の保険会社名は伏せられているが、当該保険会社は本件車両の時価額が180万円だと決め付け争いになっていると云う。ここで時価額とは、そのクルマの現在の価値を示す価格で、過去の判例解釈では同種同程度の中古車販売価格に相当するものとされている。

 ところで、今回の記事中に担当弁護士の話しとして、「一部販売金額は入金済みで既に名義変更もなされているが、未だ納車前あるからして、そのクルマの所有権は未だ販売会社にあり、販売会社は販売契約した商品価格の450万円の販売価格を補償するのが当然だと思います。」との旨での意見が記されている。これについて、以下の2つの疑問を生じるものと思っている。

➀どこの損保か知らないが、時価額を180万円と判断した根拠は何処にあるのだろうか?
 先にも記した様に、時価額とは同種同程度の中古車販売店の価格と云うことになっているが、そこにはさまざまな価格分布があり、該当車の車両程度なども配慮勘案しつつ、ある程度相場価格を判断しなければならないだろうが、これも先に記したGoonet検索で得られた価格分布を見ても。180万円という価格が正当なものとは到底思えないところだ。

②販売店が商品に損害を受けた場合、その商品の小売価格すべてが賠償の対象となるべきか?
 これは、車両に限らずあらゆる商品について云えるのだが、販売者が被害を受けた場合に契約した小売価格がすべて賠償の対象と認めれるのだろうかと思考してみたい。
 こういう販売店など事業の中で被害を受けた場合、今回の事故でなくとも、販売者には商品の損失についての根源的なリスクを常時負っている。つまり、今回の事故でなくとも、自らの過失とか予想しない不具合が生じ、契約通りに販売できないリスクが内在するのが商売としての宿命だろう。
 この様な場合と云うか、一般的に小売業でも卸売業でも同様だが、商品に何らかの損失が出て契約通りに売れなかった場合、その損失額として請求できる上限は、原価部分に限定されると考えるのが通常の損害賠償論だろう。もっと端的に私自身も何度か実務で経験して来たのだが、まったくの新車の未登録車をキャリアカーなどで搬送中に被害事故で賠償を受ける際だが、その該当車の仕入れ価格(もしくは蔵出し価格)が該当し、一般的な新車であれば新車小売り価格の80%程度になる。もっと実例を記せば、何百本もの新車用アルミホイールを積載した被害車両の事故で賠償を行う事案も扱って来たが、被害者に提出を求めたアルミホイールの1本当りの蔵出し価格は2千円であったという実例がある。この事案は20年程度前だが、この当時でも新車純正アルミホイールの補給用部品の小売価格は25千円程度であったので、新品定価の10%だったということが判る。
 以上、実例を含め記したが、事業として損失を受けた場合は、その利益部分というのは、何時損失するか未定の未確定なものであり、そのリスクは事業者が負うものであり、一般的な損害賠償に馴染まないものと考えられるのだ。つまり、今回の場合で云えば、450万円という販売価格は、幾らかの利益を見込んだ価格と考えて良いだろうから、賠償請求できうる金額は仕入れ額とか、そこに追加修理とか保守に要した雑費を加算した、あくまでも原価としての額が上限になると考えられるのだ。

 と云うことで、今回事故により、販売店は契約通り販売をできなくなったので損害賠償請求権を持つが、それが契約額たる450万円の全額ではないという考え方ができると判断している。一方、対物賠償の損保は時価額を180万円全損と判断しているが、その妥当性については甚だ不審を感じる。
 ここで妥当な金額が幾らかまでは判断しかねるが、先のGoonet検索での価格分布を見ても、もっと高額であろうことは明かではないだろうか。そして、あくまでも全損とは、判断された時価額を超える修理見積額となる場合(経済全損と呼ばれる)のことで、場合によっては時価額の認定上昇により全損とはならない場合もあり得る様に想定される。




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被害者は泣き寝入りしろと? もらい事故で270万円自腹?? 極上タイプRを襲った保険会社の無情対応
ベストカーWeb 10/11(火) 17:00配信
ソースURL:https://news.yahoo.co.jp/articles/ee7f84f08c7aafa960c06ca2d2e4859ceaff128b
 自動車保険はもしもの際に自身のクルマだけではなく、他者のクルマや財産、医療費などを補償してくれるものだ。年間数万円の支出は任意とはいっても、もはや自動車保険の加入は常識ともいえる存在。

 そんな自動車保険の根幹を揺るがす大きな事故が起きた。赤信号無視のクルマに衝突された栃木県の自動車ディーラー「ホンダカーズ野崎」のシビックタイプR。販売価格450万円という極上個体がなんと時価額180万円と査定されてしまったという。

 今回はホンダカーズ野崎の松本店長にお話を聞いた。被害者が泣き寝入りするケースが増えるのは許せない!!

 文:ベストカーWeb編集部/写真:ホンダカーズ野崎、ホンダ

■希少なシビックタイプRを襲った悲劇
 ホンダカーズ野崎といえば「F1店長」こと松本正美さん(元無限F1エンジンのエンジニア)が店長を務める栃木県のホンダディーラーだ。そしてこのお店の特徴はシビックタイプRにめっぽう強いこと。

 新車販売はもちろん、中古車販売にも力を入れており、内装/外装を仕上げるだけではなく、圧倒的なメンテナンスで極上車両を揃えている。全国からお客さんが集い「タイプRを買うなら野崎」というファンも多い。

 そんなホンダカーズ野崎が販売したシビックタイプRに悲劇がおきた。販売車両はFD2のシビックタイプR。超高回転VTECを搭載するタイプRで、新世代のターボエンジンとは一線を画すファン垂涎の名車だ。

 走行距離4.2万km、販売価格はナビやドラレコなどオプション込みで450万円。近年の国産スポーツカーの高騰も考えればこの価格は妥当で、実際に販売相場でも400万円オーバーの個体が多い。そこにホンダカーズ野崎のメンテナンスが加わるとなれば納得の価格だろう。

 そんな極上タイプRが青信号の交差点を直進中、交差点右方から赤信号を無視した車両に衝突された。しかもこれから納車というタイミングでだ。

■「納車前の車両はあくまでも商品」という弁護士の見解
 最新ナビやドラレコなども装備され「一生モノ」として購入されたであろうタイプR。わくわくしていた矢先の事故、そしてこの保険会社の対応はあまりにも残酷だ

 ホンダカーズ野崎としてはまず信号無視の車両が交差点に進入し引き起こされた事故であることに大きなポイントがあるという。

 「信号無視で被害を受けた事故なので、青信号を守ったクルマに対しては10-0で過失なしの完全な被害者という判例があるんです。まずここはキッチリ押さえておくのが大切です」と松本店長。

 よく「信号を守っていても動いていたから被害者にも過失がある」という話も聞くが、これは原則としては成立しない(黄色信号などだと過失割合が変わることもある)。今回の事故に関してはホンダカーズ野崎は完全な被害者という形だ。

 また今回は納車前日の最終チェックの試走中に事故が起きている。すでにオーナーは一定額の入金を済ませており、車検証上は名義変更も終えている状況。自動車の契約ではよくあることだが納車と同時に最終入金をする予定だったという。松本店長はこう語る。

 「弁護士に確認したのですが車検証上はオーナーさんの名義になっていたのですが、法的な契約上では未納金がある状況で所有権はたしかにホンダカーズ野崎にありました。つまりこのタイプRは弊社の"商品"であり、オーナーカーではないのです。販売価格を補償するのが当然だと思います」。

■補償はたった180万円という冷淡な評価額
フレームも曲がり事故の衝撃がよくわかる。当然修復歴はつくしこの被害で180万円で原状復帰できるわけがないのだが……

 つまりホンダカーズ野崎の言い分としては製品が販売される前に全損(=商品としての価値がなくなった)状態になったわけだから、本来であれば販売価格が全額補償されるべきというもの。これについては道理が通っている。

 「保険会社は時価額が180万円という評価をしてきました。弊社は450万円で売っている商品を納車前に全損されたのに、約270万円も自腹を切れと言っているのと同じです。過失がまったくない状況でなぜ被害者が損をしないといけないのでしょうか。当然ながら全額補償されるべきです」。

 松本店長の声には怒りがにじみ出ていた。仮に時価額が180万円だったとして、当然ながら全損したクルマにオーナーが代金を払うことはない。そして被害に遭ったタイプRを売却しても最終的に450万円になることはあり得ない。

 自動車ディーラーゆえ、キッチリと書類などで販売価格などを証明することはできるのも保険会社とて充分に理解しているはずだ。このような対応を取ってくるというのは明らかに被害者を軽視したものだろう。

 「このようなケースだと被害者が泣き寝入りすることも少なからずあります。もちろん弊社としても販売価格全額を補償してもらうまで戦いますし、今後こんな被害者が損をすることがないように、判例を作る気持ちで戦いますよ」。

 今回は納車前のクルマというケースだったが、昨今は旧車や90年代のクルマだと、たとえ購入額が高額でも時価額は数十万円と査定されたり、保険会社自身が損をしないように仕向けるケースも少なからずある。

 もちろん保険会社とて営利企業であり、なんでもかんでも支払うわけにはいかないのは分かる。ただクルマという「財産」を奪われた被害者が損をするのは明らかに間違っている。今後の展開を見守りたい。


#シビックタイプR納車前全損被害事故 #販売契約全額の請求権があるか?


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