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ワンウェイクラッチの数々について

2019-08-15 | 車両修理関連
 ワインウェイクラッチとは、動力を伝える軸上に設置され、軸の駆動側と従動側でクラッチ(軸の結合と開放)が自動的に行われる機構を指します。

 このワンウェイクラッチと類似の概念を持った身近なモノとしては、自転車の後輪ハブに内蔵されるフリーホイールハブ機構があるでしょう。ペダルすなわちクランクを廻して駆動すると動力を伝えます。そこでペダルを止めると、ホイールは従動側となり、フリーで空回りしますのでペダルすなわちクランクが廻されることはありません。(写真1)但し、ブレーキも装備されない純競技用自転車には、この機構は付いていないと聞きます。

 もう一つ身近な例で、クルマの整備にも利用されるラチェットレンチがあります。これは狭い範囲で一定角の繰り返しで、一方方向に該当ソケットを駆動できるもので、駆動方向を切り替える機能も備えています。なお、メガネレンチ形状で、レンチの裏と表で駆動方向を選択するものもあります。(写真2)

 クルマの中身に入ります。
 まず、EVやHV以外にはエンジン始動用に必ず装備されているスターターモータですが、フライホイール外周にあるリングギヤ(歯数80~100程)をスターターモーターのピニオンギヤ(歯数10枚ほど)で減速駆動します。始動クランキングでは、スターターモーターのピニオンで減速駆動して250rpm前後で廻してやり初爆始動させます。ところが、もしピニオンが直結駆動だと、始動後エンジンが1000rpmに達すると、ピニオンは始動以前のクランキングの4倍の回転で逆駆動されてしまいます。これでは、モーター内のアーマチュアなどが遠心力で膨らみフィールドコイル(もしくはマグネット)に接触するなどして損壊していまいます。その為、ピニオン根元には、オーバーランニングクラッチというワンウェイクラッチが必ず内蔵されているのです。なお、このオーバーランニングクラッチはローラーとスプリングを利用したものです。(写真3)補足ですが、現代車では、モーター内のアーマチュア回転を減速してピニオンに伝えるリダクションタイプがほとんどです。目的はアーマチュアを小径小型化するなどのためです。ですから、クラッチがないと、さらに高速回転で廻されてしまいます。

 次に、ATに使用されるトルクコンバーターはポンプ、タービン、ステーターという3要素が使用されるのですが、ステーターは必ず軸上ワンウェイクラッチの上に乗っているということです。(写真4)トルクコンバーターのコンバーターレンジ(トルク増大作用範囲)では、ステーター表面に受けたポンプ油圧をワンウェイクラッチでロックして受け止めます。しかし、カップリングレンジ(ポンプとタービンが同速度範囲)では、ステータ裏面にオイルが当たることで損失が生じてしまいます。これを避けるためにワンウェイクラッチで、ステーター裏面油圧を受けると同一方向へフリーにしているのです。なお、このワンウェイクラッチはスプラグ式という、だるま状の多数のキーが回転方向に応じて、起きるもしくは寝ることで働きを持たせています。(写真5)また、AT内部のプラネタリギヤセット内にも使用される例は多いです。

 最後に、近年の新たに装備されだしたワンウェイクラッチとして、オールタネータのプーリー部に内蔵されたものがあります。これは、スターターのオーバーランニングクラッチと同様で、駆動側でロック、非駆動側になるとフリーとなるものです。この方式はローラー式なのかスプラグ式なのか確かめていませんが、単体のオールタネータプーリーを手で勢いつけて回して見れば、その作用は直ぐ判ります。およそ現代の一般車はエンジンが右回転(昔のホンダは左回転でした)ですから、オルタネータも右回転が駆動側の回転方向となります。プーリー部を指で摘まんでグイッと勢いよく右回転させ、グッと指の動きを止めてみます。プーリーは止まりますが、内部のローターはサーとゆっくり廻って遅れて止まることが確認できるでしょう。
 このオールタネータのワンウェイクラッチ装備の理由ですが、愚人は以下の様に想像します。①近年の発電容量の増大で、オールタネータの回転慣性マスが増大したこと。②サーペンタインベルトシステム(1本ベルトかつオートアジャウター機構)採用により各プーリー間のスパン(間隔)が長くなり、駆動から従動への反転時や、その他の回転変動に伴い、ベルトの踊りが生じることにより、異音やベルトの早期摩耗を防ぎたいというもの。








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