そうすけ漫録

そうすけの一日の型録です。

蟻たちよ!

2006年08月02日 | 日記


大木に蟻が群がっている。
大木の枝先は葉で覆われていた。太陽に向っている。どこまでも伸びようとしている。
上へ登る蟻、下へ降りていく蟻。頭をぶつけ合う蟻。
大木の根は枯葉と土で覆われていた。どこまでも張っていこうとしている。

登る蟻は深い緑の空に消える。降りる蟻は地中に消えた。

あすのことを思い煩うな、
あすはあすみずから思い煩わん。
一日の苦労は一日にて足れリ。   マタイ伝

「明日は明日の風が吹く」と河川敷を飛び回っているバッタ。
「今から明日のことを心配するな、明日のことは明日にまかせておけばよいのだ。俺は今日、歌い、恋をして、楽しむんだ」と一心に鳴いているあぶら蝉。

「今日の苦労は、今日苦労すればいいではないか。明日に持ち越すな」
と猫がいう。

「おい愚者よ。とかくどうなるかわからない先々のことを、あれこれ想像して無駄な心配をするな」トンビがくるりと輪をかいた。

「取り越し苦労をして、取り返しのつかない時間を無駄にするな」ひばりが天高く昇っていった。
雲がながれていく。夏の太陽は三万年前と変わらない。蟻は沈黙をつづけ、登ったり、降りたりしていた。