夜を恐れることない。
夜こそ問う。
おまえは何者たるや。
月明かりがさす宵闇。昼と夜の交代時間。
昼のけだるさとやるせなさの体温を
巣へもちかえり、問う。
なぜ、問いつづけなければならないのか。
夜だからだ。
過去という事実は宇宙の彼方へワープする。
三次元は裏返り、全く違う位相を生み出していく。
答が見つからない。わからない。どうしよう。夜なのに。
今夜もなにひとつ答の出ないのは、どうしてか?
やがてねむくなり、夢の通い道をが開かれる。
バスにゆられている。
「つぎはネコマタギ、ネコマタギです。お降りの方はボタンを押してください」
ピンポンと音がした。
「猿も木から落ちるでお馴染みの神谷薬局はネコマタギから徒歩1分」
猫股木の停留場に近づいた。老婆がよろよろと立ち上がった。
そのとき、バスは急ブレーキを踏んだ。
老婆が転んだ。乗客は全員息を呑んだ。
老婆は大の字になって胸を指差した。
「ワタシハココニイル」
乗客は感動した。そこに老婆がいたからだ。
問いつづけなければならない夜がまたくる。