前回に引き続き三大死亡原因、最新の予防法と治療法、今回から心臓病について考えていきましょう。
日本の死因の第二位は心臓病で、アメリカでは死因のトップです。 冠動脈疾患(CAD)、つまり心筋梗塞で多くの人が亡くなっています。 沖縄県では以前、CADは北米と比べ80%低く、心筋梗塞に罹患しても北米人に比べ二倍救命率が高く、健康な動脈をもっている人が多かったのですが、欧米化した生活習慣への変化を伴う昨今、沖縄県男性の30~60歳代では、心臓病(心筋梗塞など)、脳卒中などの循環器疾患による死亡が多くなり、日本では心臓病がついに死因の第二位となってしまいました。
沖縄県に住む日本人とハワイ、サンフランシスコに住む日本人のCADの罹患率を比較した研究では、CAD罹患率は、沖縄県、ハワイ、サンフランシスコと徐々に増加しており、生活習慣・環境要因が大きな役割を果たしていることが明らかです。
現代医学の父であるウィリアム・オスラー医師はかつて「ヒトは血管とともに老いる」と述べました。 すなわち、人は年齢を重ねるごとに、全身の血管の壁がかたく内径が細くなり、弾力性を失い、老化していきます。 そして最後には壁に沈着した脂肪の層が破れて血栓を形成することにより、血管の閉塞をもたらします。 血管が閉塞するとたいへん危険です。 血管のうち「動脈」は、酸素や栄養分を含んだ血液を全身の臓器に送るための供給路としての役割があります。 その供給路が閉塞すると、酸素や栄養分の供給が遮断されるため、臓器に深刻な障害をもたらすことになります。 この一連の現象を「動脈硬化」と呼んでいます。
心臓から出発した血管は、動脈、毛細血管、そして静脈となり、人間の身体全身にネットワークを形成しています。 なかでも動脈は、酸素と栄養を運搬し、全身の細胞の生存を決定しています。 動脈が閉塞すると、そこから栄養を取り入れていた臓器は壊死に陥ります。 心臓では冠動脈が閉塞すると心筋梗塞が起こり、不整脈による突然死、ポンプ機能の低下による心不全などによる死亡をもたらすことになります。
また、脳血管が閉塞すると脳梗塞になります。 脳梗塞は片麻痺や言語障害などをもたらし、寝たきりの最大かつ最重要原因でもあります。
動脈の壁は、内膜、中膜、外膜の三層構造でできていますが、動脈硬化はまず、一番内側の内膜を構成する内皮細胞に障害が生じることからはじまります。 動脈硬化が進行すると、内膜の変化が中膜まで及び、最終的に石灰沈着も起こり、動脈はコチコチにかたくなっていきます。
このような恐ろしい動脈硬化の原因となるのが、喫煙、高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満、運動不足といったいわゆる生活習慣病です。 動脈硬化は加齢とともに進行しますが、生活習慣病が動脈硬化を加速させ、驚異的なスピードで進行していきます。
今回はこの辺で、次回も心臓病について考えていきましょう。