今回も徳田語録の続きです
リスク、危機を読みとる工夫
前回の話の続きになりますが、やはり必ず「全身状態の把握」をしていただきたいと思います。よく general appearance とか general impression といいますね。バイタルサインの前にそれをカルテに書きましょう。General impression は、研修医などのまだ経験の少ない人たちの場合には、表現できないかもしれませんが、そういうものを把握しようとするくせをつける、その見方の教育がやはり大事です。全身状態の見方、危機の予兆のためのホメオスタシスの調整系の異常、そういうものを大きな教育のなかの1つの項目に入れてもよいではないかという気がしています。
予兆を読みとる「感覚」をどう身につけるか
臨床推論で研究をされているカナダのクロスケリー先生という救急のドクターが「recalibration model」について書いてます。これは、救急や初診外来などの現場で患者さんを診察して、その担当者が自分で判断を下したアウトカムを積極的に見に行こうというものです。入院させたら入院後どうなったか。たとえば1週間に1回まとめて診察、回診に行くとか、あるいは時間がなければ電子カルテを見て、その後の状態をフォローする。あるいは外来回しにしたら、外来でどうなったかを、外来担当の医師に聞いたり、recalibration をする。 Calibration だけだと、自分の判断は全部正しかったとなって、成長しません。
米国などで特にその傾向が強くなってくると思いますが、医療機関がどんどん巨大化して、例えば、ER physician が帰した人が、翌日重症化し GIM(総合内科)に入院しても ER physician に連絡がいかない。小さい病院だったらすぐ「昨日の人、来てましたよ」とフィードバックが来るとおもうのですが、分業が進むと、経験値が増加しないまま自分の判断はいまのままでよいというイメージに陥ってしまう。
どんなに経験を積んでも100回ぐらいのうち3~5つぐらいは、改善の余地がありますから、この recalibration cycle も一緒に回さないと、成長しないと思います。当院では土曜日の午前に研修医などがまとまった時間をとって、1週間に自分が診た患者さんを全部フォローさせています。電子カルテなどをみて自分が救急室で診た患者さんが、その後どうなったかを見ています。そういうくせをつけていくと、とてもよい経験ができるのではないかと思います。
今回は以上です、しかし全豪オープンテニスの錦織選手は残念でした、相手は昨年の同大会の覇者でしたから、さすがに強かったですね、次の大会に期待しましょう、今年のグランドスラムは楽しみが増えましたね、では次回に。