TVが、デジタル化され、アナログ放送が打ち切られる時期が2011年7月と確定した。それほど不便を感じていないのに、どうして変えるのだろうか。
こういったことを、技術の進歩というのだろうか。技術が進歩して“出来るようになったから変える”のと、“どうしても必要なから”変えるのでは、大きく異なる。
一度電気屋さんに出向き、デジタルTVを購入したら、ビデオテープやDVDの再生を見ることが可能か(現在のアナログタイプの再生機がデジタルTVに接続・使用できるのか)を確認しないといけないと思い始めた。
我々の世代は変化に追随することがだんだん難しくなるのが当然である。ご近所を見回しても、あまりデジタルTVを購入したという話は無いようである。
双方向性・多チャンネル化・高画質・高音質・・・などを、売り物にしているようだが、あまりぴんとこない。こんなことが必要なのだろうか? リモコンに、やたらボタンが沢山ある、分かり難くて・使いにくそうである。
パソコンだけで、十分に困らされている、小生も含めて、沢山いる機械音痴を困らせるのだけは、何とかして欲しい。
こんな思いを抱いていたら、インターネットのあるサイトで、次のような記事を見つけた。 こちらは小生より遥かに専門的にありようを心配していたのである。一読に値すると思ったので、「参考」に引用した。
数十万円もする高価なデジタルTV時代になると、以前の「一家に一台」の時代に逆戻りしそうである。さらに、小生はビデオ再生用にアナログの機械(デッキやTV)を使える限り使おうと思っている。
読者の皆さんは、いかようにお考えになっているだろうか。
参考;第132回「テレビ地上波デジタル化の読み違い」 (2003/03/27)
(前略)デジタル化というと何か進歩的に感じられがち。しかし、テレビと密接な関係にあるパソコン、さらには携帯電話の最近の進歩、変容ぶりと併せ考えると、計画されているような強制的なデジタル化推進には、現状認識に大きな読み違いがあると思えてならない。
◆パーソナル化の流れに逆行
総務省のホームページ「地上デジタル放送」を順に繰っていくと、「高画質・高音質で楽しめ」「見たいジャンルの番組が簡単に選べる」「地域情報も見られる」「双方向だから番組に参加できる」「データ放送、暮らしに役立つ最新情報」……と並んでいる。
これを結構なことと感じられるかどうか。受信機がハイビジョン仕様を前提にしており、32型で1台30万円はすると言われたらどうだろう。量産で価格が下がるにせよ限界があろう。
現在、家庭のテレビ普及率は100%に近く、家庭に2台以上あるのが当たり前になっている。アナログ機なら29型でも数万円、14型テレビなら1万円で買える。
1万円もしないパーツを買えば、パソコンにテレビ機能・録画機能が追加できる。2台目、3台目として、こうした小型テレビやパソコンが広く行き渡り、今日では家族集まってテレビを見るより、個人で好きなものを楽しむスタイルが主流なのだ。
仮に地上波デジタル化が計画通りに進んだとしても、家庭の居間に鎮座する大型テレビがデジタル化されるだけに終わるのではないか。ある意味では本当に熱心に見られているパーソナルなテレビ視聴は、大型・高額化には耐えられない。
地上波アナログ放送が終了したら、何を見たらよいのか。ケーブルテレビに流れる方向もあるし、もちろんインターネットもある。(中略)
確かにハイビジョンでじっくり楽しみたい番組はある。しかし、そんな高画質は要らない、気軽にちょっと楽しめれば良い程度の番組が圧倒的に多いのではないか。(中略)
1年前、2002年3月の「フジテレビ定例社長会見要旨」に、総務省に強引に引っ張られている民放の本音がのぞいている。
「デジタル化の良さは、皆が理解していると思うが、日本で進みにくいのはアナログ地上波があまりにも成熟しているということがあると思う。 面白い情報もたっぷりある。なぜ、デジタル化しなければいけないのか。それを説得するのがなかなかしんどい面がある。
アナログ波が衰退期を迎えていれば、すぐにデジタル化すると思う。アナログが横綱相撲を張っているので、変えづらいということだ」
◆ソフト著作権問題もブレーキ
今なら家庭のビデオデッキで番組を録画し、後で楽しむのは誰もがしていることだ。 デジタルテレビは、その高画質・高音質のゆえに簡単にコピーを許す訳にいかない。コピーに劣化がなく、即、完全な商品になってしまう。
既にこんな例が持ち上がっている。 BSデジタルハイビジョン放送を始めた当初、WOWOWがハイビジョン録画可能なD-VHSデッキでの高画質録画を認めていなかった。
同社のお断り文書「D-VHS録画/再生について」によると「デジタル時代における視聴者の私的録画の権利保護と、著作権者の権利保護の両面から、ほとんどの放送番組に『1世代録画可』のコピー制御信号を付加して放送して」いるという。
この結果、走査線が1080本もあるハイビジョン仕様から、テレビで標準画質の480本に自動的に落として録画されてしまう。BSデジタル各社の規制は普及優先から現在では緩やかだが、地上波全部となれば当然変わってくる。(中略)
ビデオデッキやDVDレコーダーを使うにせよ、テレビ機能付きパソコンにせよ、家庭内なら自由に録画したり、加工できる現在の在りようと根本から様変わりする。こんな事情が広く知れ渡れば「こんな厄介なものは要らないよ」という声があちこちから飛び出しそうなものだ。(中略)
「月刊ニューメディア3月号」の「総務省放送政策課長に聞く『地上波デジタル化、国はどう責任を果たすのか』」はインタビュー要約になっていて、多々ある問題点が一覧できる。
その最後で「もし2011年までのデジタル移行が実現困難となったら」との質問に「現段階では想定していない。予定通りの完全移行を目指し、全力で取り組んでいく」「万一、不幸にも移行が実現困難となる事態が起これば『大胆かつ柔軟』に考える必要があるだろう」と答えている。
一般大衆がメリットを感じにくく、家計も含め出費だけかさむ「国策」。一足早く始めた米国は、もともとケーブルテレビ視聴が多数派だったこともありデジタル化は行き詰まりつつある。「万一」が「十一」「五一」になったとしても不思議ではない。