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2011年の英雄 : 吉田所長(吉田昌郎 氏 )

2011-12-01 21:38:23 | 日本の被災対応
スポーツの世界や音楽の世界などで、他の人よりも格段に多くの注目を集め、それ故に大半の国民に覚えられ “英雄” として支持された方々が輩出してきました。
古くは(戦後になりますが・・)、プロレスの力道山氏、フロ野球では長嶋氏、相撲では大鵬氏などと、それに該当する方は簡単に列挙できます。しかし、様々なメディアの発達と共に、注目されやすいスポーツや芸能のジャンルが広がり、以前の様に“英雄”は生まれなくなっていた。

しかし、私達は “英雄” を目にしています。それは、東京電力福島第一原子力発電所の所長を先日まで務めておられた吉田昌郎氏でしょう。

5/30付 産経ニュースより ・ 現場で陣頭指揮を執る 吉田 氏


【 彼の功績 】

最初に断っておくが、彼・吉田所長が人間とは思えない能力を発揮したと思っていないし、彼が些細な事を含めて全くミスを犯さなかったとも思ってもいない。
それでも、彼は人並み以上の功績を残した“英雄”であると考えている。

彼の最大の功績は、何よりもあの現場から不退転の覚悟で、8か月もの長期間指揮を執り続けた事だ。原子炉の冷却機能を失い、頑丈な建屋が水素爆発で全壊する現場に居た人は全員が思った筈だ。人為ミスによって原子炉のコントロールを失い、数多くの死者を出した“ チェルノブイリ ”の事故の事を。
ソ連政府(当時)の公式発表で死者は、現場で緊急作業に従事した運転員や消防員の33名とされているが、実際には事故処理を担当した軍人や予備役兵などを含めると、はるかに多くの方々が亡くなったとの情報がある。

同様に、通常のコントロールを失った 「福島第一原子力発電所」の現場で、死ぬかもしれないという恐怖の中で、数百名の人々を指揮して最少被害に留める努力をされた事にこそ最大の功績だし、それによって 現場の方々の命を救い、更には日本経済全体へのダメージを最少に留めたからこそ、大多数の日本人は平穏に生きてられるのだ。

わが身の危険はさて置き、日本経済と日本国民のために、日本で最も危険な現場で、あの長期間指揮をした人を、“英雄”と呼ばずして何と呼ぶのか。
諸外国では、3月の事故発生直後から現場に留まる事を選択し、我が身の危険を顧みないで被害軽減工作を続けた 50名の方の勇気を称えて、【 Fukushima 50 】(フクシマ50 )と呼び彼らを“英雄視”しているほどなのだ。

12/2付け 産経ニュースより・ 事故調報告「長靴がズルッと溶けた」
ウィキペディア・Wikipedia より・【 フクシマ 50 】


【 彼の受けた待遇は 】

例え、英雄と呼ぶのに抵抗を感じる人であっても、我が身を彼の立場に置き換えて考えてみれば、その功績の偉大さは十分に理解できるだろう。

当時の総理大臣、菅首相の指示や本社の指示を無視して、より適切な処置を現場判断で行なった事は既に法幢されているし、多くの方々が知るところだ。
しかし、政府は日本の命運を現場で担っている彼を始めとする数百名の功績に一切触れようとせず、放射性物質による危険レベルが比較にならない程に低い地域の人々の対応だけに追われているだけだった。

それなのに、彼らの功績を無視するかのようなニュースが世界を駆け巡った。
10月21日、スペインで最も権威があるとされる “ アストゥリアス皇太子賞 ”が、『 福島の英雄たち 』という称号であの現場で作業に当った日本の方5名に授けられたが、その5名の中に吉田所長など最も危険な業務に就いている方の名前は無く、東京消防庁ハイパーレスキュー隊や陸上自衛隊、警視庁など、短期間の限られた現場作業を担当した方々だけだ。

更なる深刻な被害を防ぎ、一日でも早く安定した状態を実現させるために、3月以降の 8か月以上に亘って陣頭指揮を執り続けた吉田氏。
自らの身体が病気にかかり、痩せ細り陣頭指揮を続けられず、ようやく現場を離れることになった吉田氏。
彼に、日本国民はどれ程の関心と感謝の気持ちを抱いたのであろうか。

現場を離れるニュースがTVで流れた際、あろう事か! 細野原発担当相が記者会見の場で言った言葉は、「 元気になって、改めて現場復帰して欲しい 」という趣旨の言葉だった。

有り得ない。
3月以降、公の場で吉田氏の功績を殆ど口に出さず、退く段になってから話題に挙げ、その上で復帰を望む発言など。
重大事故である事を認識しているならば、国家にとって重大事案だという担当大臣としての自覚があるならば、現場で作業する方々の交代・補充や作業工程の管理・遂行していくための万全の手配などは、とっくに行なっていて当然だからだ。

「 お疲れ様でした 」
「 どうぞ、しっかりと病気を治し、お寛ぎ下さい 」

10/22付け 産経ニュース・スペイン皇太子賞受賞式
11/28付け 産経ニュース・吉田所長のメッセージ全文


【 私達は何を為すべきか 】

では、この東京電力福島第一原子力発電所に関して、私達は何を為すべきだろうか。
それは、我が身の為ではなく、人の為・社会の為に、何ができるかを考えて実践し続ける事ではないだろうか。

この事故による影響を極力避け、まるで“他人事”の様に暮らす生き方を選ぶのではなく、“当事者”の一人として出来る事を行なうべきだと思う。
ボランティアとして被災した地域へ行かなかったとしても、募金に応じなかったとしても全く問題は無い。

事実を事実として正確に捉えて認識し、政府やマスコミなどの広報や活動に目を光らせ、誤りを誤りとして指摘する行動を、身近な範囲で行なうだけで良いと思う。
そうすれば、極低レベルの放射性物質による健康被害を恐れ、福島県以外のガレキの居住地への搬入さえ反対する様な行動は抑えられるだろう。

ここに、古いニュースですが、自らその活動を起こした方々の一例を紹介する。
[ Save Fukushima 50 ]と題うって、あの現場で働く人々の健康のために、日本国民を始めとして全世界の方々へ協力を呼びかける活動だ。
活動内容と共に、その活動趣旨文に溢れる静かな情熱の大きさは、誰にとっても一見以上の価値があるだろう。

[ Save Fukushima 50 ] の企画内容と協力要請文


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